3人の会話は夜更けまで続いた。
宇宙のこと、母なる星とそこを飛び出した開拓者たちのこと。
りょうけん座の1等星が東の空に輝くころ、ビビアンが言った。
「ジェームズとも、こうしてよく3人で夜更かしをしたものだったわ。ジェームズは必ず、そこのソファの上で毛布にくるまって、いちばんに鼾をかきだすの。けれど、次の日の朝には誰よりも早く起き出していたわね。……そうね、フォックス、あなたも今日はもう休んだほうがいいわ。そこのソファでね」
寝床についたあとも、フォックスは両目をあけて窓の外の星明りをただ見つめていた。
寝付けないのは、慣れないソファと、毛布にうすく香る父親の匂いのせいばかりではなかった。ペッピーが話してくれた、遊撃隊結成以前の父のこと、スターフォックスとしての知られざる活躍のこと。ビビアンが熱っぽく語った、宇宙生成のこと、アニマノイドの起源のこと。それらがないまぜになり、渦をえがく銀河となって、フォックスの脳裏に去来した。ペッピーとジェームズが出会い、そして別れるまでの十数年間が、また、宇宙が誕生し、銀河のどこかに集族した微細な塵とガスの雲が恒星ライラットをなすまでの気の遠くなるような数十億年が、フォックスの体の中を駆け抜けていった。
太陽をめぐる星の上に、なんのはずみか生まれた生命が、次の世代へと命を受け渡し、さらに次世代へと命の連鎖は続いてゆく。その鎖の一端が、やがてこの自分の体へと譲り渡されたのだ。
フォックスの心は無限に伸縮して、創世記の宇宙から、父の生きた時間までを自在に感じ取った。体はその場にありながら、意識は時空間を光の速さで闊歩した。胸のうちで脈打つ鼓動は、星の呼吸のように思われた。
――父さんは、星になったんだ。
突然に浮かんだその言葉を、フォックスは意識のなかで繰り返した。
父は星になった。それも、真空の闇のなかで青白く明滅する時の止まった星ではなく、広大無辺の宇宙を、光の尾を引きながら自由に旅する黄金色の星に。