俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その71

2013年01月18日 01時42分11秒 | 小説『ファルコとの出会い』

“・・・・・ご苦労なことだ”
 闇の中から、なにかが老人に“話しかけた”。
 「…………」
 老人は答えなかった。先刻の演説の動悸の余韻を残したまま、疲労した身体を無言で椅子にうずめていた。

「ファルコとの出会い」その70

2013年01月18日 01時23分47秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 すでに電波ジャックは終了していた。
 だが爆弾投下にもひとしいあの“建国宣言”のあとで、なにごともなく通常放送に戻れるわけもない。各局は緊急報道態勢へと移行し、アナウンサーたちは昔話にある魔界のような扱いで≪ベノム帝国≫の名を口にした。アナウンサーたちの姿と交互に、録画された映像が再生され、アンドルフが叫ぶ。――建国を宣言する!

 フォックスの心臓ははげしく脈打っていた。
 ロキオンとハール。コーネリアを二分する大種族の対立で、宇宙には衝突と混乱が巻き起こるだろう。ふたつの波濤がはげしくぶつかる黒い海を、自分は桿を握り必死に飛ぶ。嵐に揉まれる一枚の木の葉のように、運命を翻弄されながら――。

 ――――。
 惑星ベノムの地表。外部からの観測では全く見分けはつかないが、厚い雲に含まれた酸が中和され、コーネリアと変わらぬ環境に保たれた一地帯がある。
 さらにその地下、岩盤をくり抜き作られた大空洞に、皇帝アンドルフの居城はあった。
 薄暗い部屋で、老人は深い吐息をついた。
 聞く者の魂を揺さぶり、火をつけるだけの力ある言葉を発するには、いささか自分は歳をとりすぎている。それは理解しているが、しかしやらねばならない。

 “・・・・・・”
 部屋の奥には、老人が腰掛けている場所よりもさらに暗く、向こう側の壁も見通せない程の闇に沈んでいる。
 その闇の中に、なにものかがいた。
 血肉をもつなにかではなかった。冷たく硬質の、無機質ななにかが、それでも生きて、息を潜めていた。