金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

プロポーズ小作戦2

2009-03-21 05:39:35 | コードギアス
プロポーズ小作戦2

(自信過剰ですわよ、星刻)
天子が自分のことで動揺すると、あの男は思っている。
それは事実ではあるが。
あの男は天子と会わないことで、より強固に天子の心を縛る。現に天子はこのところおやつの味さえろくにわからなくなっている。
(こういうのも放置プレイとか言うのかしら)
神楽耶は物語で読んだ単語を今の状況に当てはめる。それは本来の使い方ではないが、神楽耶にはわからない。

天子は神楽耶のことを何でも知っているお姉さんと思っているが、実際には神楽耶もそう自由に育ったわけではない。皇の巫女になる者として、未来の天皇を産む女として、皇グループの次期総帥として、厳しく監視されて育った。そんな神楽耶に普通の恋愛経験があるはずがない。物語や心理学の講義で学んだだけである。
そんな神楽耶が天子の恋心に気が付いて、その心に運命の人という呼び名を与えてやれたのは、ただひとえにこのカップル未満があまりにも解りやすかったからだ。
もっとも星刻当人はあれでも隠しているつもりらしい。

さて、作戦その1.「やきもち」開始。
物語では男がプロポーズする大きな原因にライバルの出現と嫉妬がある。
神楽耶はノートパソコンにライバル、嫉妬と入力した。
あとはそれにふさわしい役者を当てはめる。
役者名はジノ・ヴァインベルグ

上海事変18

2009-03-21 03:38:36 | コードギアス
上海事変18

香凜は天子の寝室を覗いた。天子は少しくたびれたパンダのぬいぐるみを抱きしめ明日の勅令の文を読んでいる。
「香凜聞いていてね」
香凜が顔を出すと天子は喜んで一緒に寝台に座って聞くように言う。本来、臣下の身でそんな無礼なことはできないが、香凜はにこりと笑うと天子の横に座る。(私は星刻様の代わりだから)天子が望む事、星刻がしていたことは全てする。
暗記は完璧だ。発音もきれいだし文句のつけようがない。
「とてもお上手ですよ。天子様」
「ねぇ香凜、星刻もほめてくれるかしら」
「はい、星刻様ならそれはお喜びになってたくさんお褒めになるでしょう」
「私が上手にできたら星刻は喜ぶの?」
「星刻様は天子様をご敬愛でございます。天子様がりっぱな天子におなりになれば誰よりも喜ばれます」
そう、あの男にとってはこの幼い天子が全てなのだから。
ふと、天子の雰囲気が変わった。ぬいぐるみをぎゅつとだきしめる。
「明日はしんくーも一緒にいっていいでしょう。だってわたししんくーが大好きだもの」

上海事変17

2009-03-20 20:52:28 | コードギアス
上海事変17

中華サイドのターンです。

蒼天講の中核メンバーと洪古の父、天子、何故だか女官長までが小部屋に集まってひそひそと話している。
「軍法予備会議を止める手は無い」
洪古の父、老洪がはっきり言う。すでに引退した身の老洪にできることは限られている。
一方で蒼天講の若い世代では対抗するだけの力が無い。

星刻もきれいな事だけしてきた男ではない。その点は天子以外の全メンバーが確信している。そのどれが今回の予備会議で叩かれるのか見当も付かない。そもそも副官を務めていた周香凜でさえ全てを知ってはいない。おそらく証拠も捏造も向こうは用意しているだろう。

最初に部屋に入ったとき天子は人形のようにただ座っているだけだった。それが次第に変化する。
星刻が殺されかけている。対抗手段は無い。老洪が、洪古が、周香凜が、そして蒼天講の古株のメンバーがどうすることもできないと絶望の言葉を吐くたび、天子は最初小さく震えた。天子の震えが急に激しくなる。周香凜はなだめるように天子を抱きしめる。
連れてこない方が良かったが、今の天子は一人にはできない。
「シンク―シンク-死んじゃうの、殺されちゃうの」
不安定な天子にはいささかきつすぎる話である。
「いいえ、決してそんなことはさせません」
香凜は力強く答える。だが、彼女に打つ手があるわけではない。
天子の目には、つい数日前の記憶が焼きついている。
ぐったりと横たわる星刻、赤く染まった花びら。残月の姿。
「いや、いや」
天子は激しく首を振る。痛ましげに見つめるいくつもの視線。
その視線にひとつだけ違った色を感じて香凜は視線の主を見つめる。
女官長が、皺だらけの顔で見返す。
「臣下が天子様の処罰を覆す事はできません」
すぐに理解し返答できたのは老洪。
「さきに天子様が処罰してしまえば予備会議は不敬罪に当たり成立しないか、しかし」
それは天子の公式な勅命でなければならない。
だが、天子は過去に勅命を出した事がない。そもそも正式の勅命の出し方を知りもしない。
老洪さえも正式な勅命を受けた事がない。今の天子の3代前の天子から大宦官の傀儡と化していたためだ。
「わたくしは知っています。女官に成りたてのころ、天子様が最後に勅命を出された日のことを」

そこからは早かった。全女官に命令し、勅命に必要な広間を掃除する。後宮の老女達さえも協力した。50年も使われなかったそこは10センチも埃が摘んでいた。怒涛のごとき数日が過ぎた。青竜の間、白虎の間は見事に磨き上げられた。それから儀式の飾りつけをする。この準備にために女官50人が過労で寝込んだ。
さて、文武百官に呼び出し状を出して明日は勅命を出す日、ようやく香凜は大変な事に気が付いた。天子は3000人もの大人数に演説した事などない。それどころかそんなにたくさんの人を見たことすらない。幼い天子にいきなり勅命の発布などできるはずがない。

上海事変16

2009-03-19 15:25:10 | コードギアス
上海事変16
(しばらくはごまかせるだろう。もともとゼロはずっと行動をともにしているわけではない)
こうなってみるとゼロの秘密主義がありがたくもある。
問題はその先だ。もしブリタニアが攻撃してきたら、一度や二度は撃退する自信が藤堂にはある。だが、撃退したから良いというものではない。その間に政治的根回しが必要だ。いかんせん黒の騎士団でそういう事ができるのは、ゼロだけなのだ。ディートハルトが多少できるようだが、彼は情報屋であり、政治家や指導者ではない。第一、ディートハルトは敵国人ではないか。能力以前に仲間が認めないだろう。
どうするべきか、どうするのが一番いいか。藤堂はとりあえずゼロの部屋に行ってみた。何か今後の方針や参考になる資料があればと思ったのだ。自分ひとりでゼロの不在あるいは消滅を抱えるべきか。あるいは誰かに伝えるべきか。普通に考えれば副官の扇には言うべきだが、はたして扇と自分でこの事態を乗り越えられるか。
ゼロが生存死亡、生きていたとしてもすぐに戻れるか否か、もしゼロを捜索するとしてもどの程度までゼロの行方不明を伝えるべきか。
千葉や朝比奈は信頼できる。しかし、それは部下として仲間としてであり、指揮官としては経験に欠ける。
 こんなときに限ってあの緑の髪の女もいない。彼女はゼロとかなり深い関係らしいが、ゼロの失踪と関係しているのか。
深い思案を重ねて、それでもまっすぐに背を伸ばし歩く藤堂の耳にふと懐かしい音が飛び込んだ。
こんこんちきちんこんちきちん

それは祭囃子。土すらない人工島で、それでもここは日本だと高らかに謡う、喜びの音。
「祭りだ祭りだ、踊れ、踊って見送れ!」
底が抜けているほど、能天気に聞こえる玉城の声。
やれやれ、と藤堂は思う。だが、蓬莱島の移民達にはひとつの区切りとして必要かもしれない。藤堂は一緒に踊る気は無いが、とがめる気も無かった。
「すいません、藤堂将軍。玉城のやつ送り火をすると言っていたんですが」
副長の扇が向こうの角から顔を出した。
送り火と言うより盆踊りになっている。空き箱を重ねた舞台でドラム缶の太鼓を叩く。子供達がアニメ音楽に歓声を上げる。
「うまいな」
「え、あ、玉城はドラムをやっていてたから、みんなでいた頃に」
扇の目が過去を見る。ナオトがリーダーだった頃、カモフラージュをかねてよく演奏した。ブリタニア兵士の多い酒場で情報収集のためにやつらの曲を弾いた。
「扇、副長としての君に話がある」
何かあってからゼロがまたいなくなったことに放心されるよりも、むしろ話すことでゼロの失踪状態に慣らしたほうがいい。この扇は少なくともレジスタンスグループのナンバー2で、ブラックベリオンの後、捕虜としていつ殺されるかわからない1年を耐えた男だ。それだけの強さはあると藤堂は見た。

藤堂の部屋は私物らしいものが無い。軍人としていつ散っても後に憂いを残さないためかもしれない。
「座ってくれ」と言われて扇はどうしようかと思ったが、床に胡坐をかいた。たたみは無いがここは日本の部屋だ。
藤堂が正面に座った。無意識に扇はこの奇跡の武人に敬語を使うが、本来両者は同格である。
そして藤堂は語った。ゼロが消えたと。生死不明。消息不明。藤堂は持っている情報を全て扇にも伝えた。それは、自分が死んだときの保険の意味もあった。
「おそらく、今回の失踪はゼロにとっても予測外だろう」
「あのー、それあのときに似てませんか。あの島のときの」
扇が言いたいのはゼロ・スザク・ユーフェミア・カレンが何故だが訳のわからない力で飛ばされたことだろう。
あの時はCCがいて、ゼロの生存だけは保障した。と言ってもあの時点それを多少とも信じたのは扇ぐらいだったが。
「確かに、しかしあの島にまたいるという保障もない。」
「まずはニュースを気にしてみます。建物ごと消えたのなら建物ごと飛んでいるかもしれない。うまくいけばニュースに出ます」
「頼む」
意外なほど扇は落ちついている。あるいはまだ、今後の事を考えるところまでたどり着いていないだけかもしれない。
そのとき、部屋の外から大きな声が聞こえた。
子供の声、女の声、年寄りの声。それらが皆ひとつの言葉を熱狂的に叫ぶ。
「ゼロ、ゼロ、ゼロ!」
藤堂が窓から外の様子をうかがった。そこには祭りの余興のつもりか50人ほどがゼロの服で踊っている。
さすがに仮面はつけていない。もともと使い捨ての仮面は通気性が悪く、あまり被りたいものではない。
「あれは」
祭りの一角に一人のゼロがいる。このゼロだけは仮面をつけている。
一瞬藤堂はゼロが帰ってきたのだと思った。それほどにそのゼロのまとう空気は本物のゼロに似ていた。
だが、よく見ればすぐ別人とわかる。そのゼロは本物のゼロより10センチ以上身長が高かった。そして海風になびく長い黒髪。
「黎星刻、彼か」
藤堂のつぶやき、その時点でゼロからワンへの移行は決まった。

上海事変15

2009-03-18 04:05:28 | コードギアス
上海事変15
ゼロはブリタニアの研究施設に地下通路から入りました。研究者達はいきなり現れたゼロに騒がず、むしろ忠誠を誓っているように見えました。それはギアスの力でゼロに忠誠を誓えと命令された結果だが,そのあたりは藤堂にも部下の彼女にもわからない。
そして今日とても重大な実験を行なうと言いました。ゼロは「私も立ち会う」と言い、私は警備が厳重になったためいったん研究所の外に出ました。そして数分後、研究所からまっすぐな光が立ち上り、研究所の2回から上が全て消えました。後に残ったのはまるでナイフで切ったゼリーのような切り口の1階部分のみ。そう言うと藤堂の前に携帯の映像を見せた。部下の言ったとおり特撮映画さながらのシーンが展開されそして建物の2階から上が消えた。
その後建物は軍の手で封鎖された。もともと軍の機密研究所だったので警戒は厳重を極め彼女はそれ以上近づけず、藤堂のもとに戻ってきた。
部下の報告とゼロが彼であった事、その両方から藤堂は今回の失踪が事故であると判断した。
だが、それは同時にゼロの安否を探る手立てが無い事を意味する。
(私は本来なら佐官止まりが似合う男だ。将軍には向かない)
それは卑下でなく、冷静な分析である。そして佐官としてなら、たいていの者より優秀である自信が藤堂にはある。
今、黒の騎士団からゼロを失うわけにはいかない。ゼロと言う求心力を得て大きく成長した黒の騎士団。直接守るべき100万の民。彼らのためにも王の存在が必要なのだ。


上海事変14

2009-03-17 16:00:43 | コードギアス
上海事変14
星刻が精神的な意味で副官を失った頃、藤堂はゼロが消えた状況を詳しく報告させていた。
さすがに、前回のトーキョー決戦のときに懲りたので、腹心をゼロに内密で張り付かせていた。旧日本軍時代からの部下、四聖剣とは違う意味でずっと藤堂についている。
その彼女が持ってきた報告は彼女の言葉でなければ信じられないような陳腐で荒唐無稽なものだった。
ゼロはナイトメアのエネルギーシステムを無効化する研究を進めていた。その研究施設がブリタニア軍の極秘施設と聞いたときには藤堂すらゼロを疑った。それでもその先に聞いた驚きよりはまだ度合いが低かった。ゼロの写真それも素顔の写真を彼女は示した。日本人でない事は承知していたが、「これは」藤堂の言葉が止まる。
ブリタニア皇帝家の紫だった。そしてつややかな黒髪。その条件に当てはまる皇族はただ一人。
(君だったのか)
亡き桐原の言葉、そして異常なほどナナリー皇女にこだわるゼロ、その理由は完全にわかった。ゼロがほしいのは日本ではない。妹ナナリーが優しい微笑を浮かべて暮らせる世界。それだけなのだ。


プロポーズ小作戦

2009-03-17 14:59:18 | コードギアス
「よろしいですわ。日本に帰る前に天子様の恋を推し進めて必ずやプロポーズまでこぎつかせましょう」
「え、えぇ」
涙に濡れた大きな瞳をパチパチさせて天子はこの頼りになる姉を見上げる。
「天子様の恋は泣き夫の悲願。蓬莱島で眠る夫によき知らせをもたらすのは妻の勤めです。さぁ、天子様。神楽耶にお任せあれ」
大きく両手を広げ神楽耶は悠然と微笑む。

小説4巻を読んでからストレスを書き連ねる プロポーズ小作戦

2009-03-17 14:46:29 | コードギアス
神楽耶のいる離宮でお茶を飲みながら、天子は幼い恋の悩みを打ち明ける。
「星刻が会ってくれないの。私に会いたくないって、私、何かしたのかしら」
もう先月の事になる。身内だけの会合が終わった後、立ち上がろうとした星刻はそのまま崩れ落ちた。
1ヶ月たった今でさえも病名すらはっきりせず、床に伏したままだ。神楽耶か゛それを知っているのは会合に出ていたためだ。
今のところ天子は星刻が病床にあることを知らない。教えれば天子様は動揺する。ようやく慣れてきたばかりの公務に差し支えてはならない。それが会合に出ていた全員の意見。
そのときは神楽耶も内密にした方がいいと思った。だが、1ヶ月も顔さえも見せないとは。このところ天子は毎日のように神楽耶のところで泣く。聞けば電話すら音声だけでそれもすぐ切られてしまうという。
ひっくひっくと泣く天子をあやしながら、神楽耶はどうしたらいいかと思案に暮れる。天子が悪いわけではない。全てはあの男が無駄な意地を張っているせいだ。
「会いに行ってもよろしいのでは」
「だって、星刻私に会いたくないって」
また大粒の涙が落ちる。
実のところ、神楽耶はそろそろ日本に戻ろうかと思っている。
皇コンッエルの経営も気になる。そろそろマスコミも自分を天皇に据えるのをあきらめただろう。

日本の天皇家の血筋はすでに絶えた。20年ほど前の事だ。当時最後の天皇は京都六家に後をゆだねると遺言した。迷惑したのは六家である。確かに天皇家の血筋ではあるが、とっくに関係は絶えている。何だかんだと話し合いの後、当時まだ赤ん坊だった神楽耶と幼いスザクを結婚させ、その生まれた子供を天皇にすると決まった。しかし、ご存知のようにスザクは死亡。神楽耶の意思を確かめた扇は「天皇家の断絶」を宣言。しかし、納得しない者たちがいて、何かとぶっそうな情勢が続いた。星刻が天子様の話し相手としてしばらく中華に来てはと言ってくれてのは「渡りに舟」だった。とうぜん、政治的な思惑や取引も絡んだが、神楽耶はその程度の事は承知の上である。

小説4巻目を読みました

2009-03-17 14:04:10 | コードギアス
小説4巻目を読みました。文句は無いけど、不満はある。星刻の消息あいまいなままですよ!
ついでに言うと結局出なかった。厳島の戦い。それと藤堂星刻の地方征伐。絶対一度くらいは話題としてでも触れてくれると思ったのに。自分と同じ「英雄」や「奇跡」の名をこれから一生背負う立場の星刻に藤堂さんが手を差し伸べる。戦闘で受けた傷を自軍にも隠す星刻。藤堂にはその姿が厳島の直後の自分の姿と重なる。「君にとって自軍は休める場所ではないだろう」とか言って、一晩同じ寝台で・・・。ちょつと誤解しないでください。うちの星刻は天子様だけですよ。安心してゆっくり休ませられる場所がそこしかなかっただけです。
でも、たまたま出先から帰ってきて、いつもどおり藤堂の部屋に飛び込んだ朝比奈が見つけたりすると楽しいです。
あぁ、誰か書いてくださらないかしら。他力本願です。

で、妄想タイム。
星刻なら残った時間をどうするか。
ゼロ・レクイエムの後、一応世界は話し合いを先にしてみようかと動いただろう。しかーし、現実を見れば解るように、平和的話し合いとはイコールすでに力を持っているものが一方的に正義を押し付けるものだと。その意味で言えばシャルル侵略皇帝の正義と変わりない。いったんは悪逆皇帝に全責任を押し付けてまとまった世界は、またすぐばらばらになる。下手すると一応まとまっていたEUさえも、北や南など分裂して、てんでんバラバラになりかねない。その中でスザク・ゼロに何ができるのか。
シュナイゼルに『ゼロが命じる』と命令して、一つ一つの紛争を止めさせるか。あるいはもはやそれでは間に合わなくて全世界を平和にする方法を考えろと命じるか。
そしてシュナイゼルが答える。最も効率的で犠牲の少ない平和的な方法として、ダモクレスを再開発していると。それを否定できないスザク・ゼロ。
いちおう、超合衆国はまだ現存している。しかし、すでに話し合いで解決法を探るという当初の理念は失われ、強国が利権を公認させるための機関に変質した。今はある小国の党首が代表を勤めている。
 合衆国連合からいち早く抜けた国はなんと中心たる中華。インドとチベットの内乱に対する連合国からの内政干渉に抗議してのものだが、すでに変質しかけていた連合に見切りをつけたというのが真相。中華が抜けた責任をとる形で神楽耶が代表辞任。天子様の大事なお友達にひどい仕打ちのようだが、実質的には神楽耶の名誉や命を守ることになった。後に3代目の代表は数カ国のテロリストに襲われ惨殺されている。

大司馬の公館の病床で中華の工業化を急がせていた星刻は、侵略帝シャルル以前に戻ったかのような世界を静かに見ている。
星刻の腹案ではインドは独立させる。中華がインドを支配する事はもともと無理があったのだ。それができていたのはインドの藩王達の都合。支配するには採算が合わない地域を中華の植民地として押し付けたから。
「インドがひとつの国として独立してくれれば、我が中華にとってよき隣人となる」
星刻は公式の言葉として、インド独立を支持している。
もう一方の隣人である日本に対しては、公式のコメントは無い。
だが「天子様のご友人の安全を守るために」と称して、神楽耶を中華にとどめている。扇からは私的に帰国の要請があるが、星刻は神楽耶に取り次いですらいない。
もともと地政学的に中華にとっての日本は、のどに刺さった骨。うっとうしいがのどに手を突っ込んで抜くのは痛いし・・・。
一番いいのは日本を中華が支配する事。ただ、そうなるとブリタニアと太平洋を挟んで直接にらみ合いになる。だから、日本は調整役として形式的には中立を保ってもらう。必要なときだけ中華のよき隣人であればよい。


母に訊く

2009-03-14 17:31:15 | コードギアス
ラクシャータはインドのある藩王国から黒の騎士団に派遣されていた。目的は研究である。ゼロ・レクイエム後、国際機体として唯一稼動している神虎の整備のため、洛陽と宝来島を拠点としている。といっても今はバイオ関係の研究がメインになっている。ラクシャータにとっては不愉快だが、同僚としてロイドがいる。
そんなラクシャータのもとへ人目を避けるように、星刻が現れた。
「胸が苦しい?」
「あぁ、急に息苦しくなった」
「ふーん、神虎から送られているデータでは大きな変化はないけどねぇ」
「ひどい動機があって多少発熱もあった。痛みは無かったが」
ゼロ・レクイエムの直後、極秘で肝臓を中心とした臓器の移植を受けた。提供者が誰であったかは星刻自身にさえ知らされていない。移植は成功した。驚くほど適合率が高かったおかげで、免疫抑制剤の量も比較的少なく抑えられている。
だが完治には程遠く、しばしばラクシャータの治療と調整を受けている。

星刻が自分からやってくるのは初めてのことだ。よほど不安だったのだろう。
ラクシャータはデータをセシルに任せて星刻を診た。特に緊急性のある異常は無い。多少貧血が出ているが予測の範囲である。
「何か、変わったことはなかったのぉ?」
いつものキセルをもてあそびながら、火はついていないが、ラクシャータは何気なく問う。星刻の行動はほぼ把握している。多少無理をしているようだが、急にどうこうということは無いはずだ。

「いや、日本を経由して帰った後、いつも通り、天子様にご入浴していただいて」
「ご入浴・・・入浴って裸で」
「服を着て風呂に入るのか?」
「あんたさー、天子ちゃんと一緒に入ってるのぉ」
「馬鹿なことを言うな。そのような不敬なまねができるか!」
(ふーん、つまり本当はやりたいんだ)
からかってやろうと思ったが、丁度セシルがさっき頼んだデータを持って入ってきた。
にっこり笑うセシルに星刻はいくらかひきっった笑みを返す。先日検査用の食事をセシルに作ってもらったのだが・・・。以来星刻はさりげなく彼女を避けている。
「女官を下がらせた後だったから、ご入浴をお手伝い申しあげただけだ。動悸があったのはそのときだ」
この時点でラクシャータは話の流れが読めた気がした。
つまりこの男は好きな女を裸にして風呂に入れて、全身くまなく磨きたてた、もちろんさわりたい放題で。それを素でいつもの通りと言っているわけだ。
「湯あたりしたのが悪かったのか少し気分が悪くなった」
内心の苛立ちが感じられる声で星刻は言う。
まぁそうだろう。たった一人の守りたい彼女の前で弱さを見せてしまったのだから。要するに星刻は、好きな女の子の前ではいい格好がしたい男の子なのだ。
(20を越してもかわいい男はたまにいるけど、まさかこいつがねぇ)
「天子様があのいたいけなお手でのどをさすってくださった」
これが他の男相手なら「ごちそうさま」と言いたくなるような言葉が続く。
もちろん星刻本人にはのろけている自覚は無い。
ふーんつまりとラクシャータは思う。
好きな女の子が裸で目の前に来て、あのちょっと丸っこい発音で「しんくー、だいじょうぶ」とか言ってくれたわけだ。
(それじゃあ、脈も上がるし体温も上がるわよぉ)
もともと貧血がある状態でそうなれば息苦しくもなるだろう。
ここでラクシャータは重要な質問をした。
「あんたそのとき立った?」
「いや、めまいがあったから膝をついていたが」
ラクシャータはふきだした。
なんて、面白い男の子だろう。
「違うわよう。ものが立ったか、つまり感じたかってこと」
「たった、感じた?何のことだ。な、何を言うか。私はそのような不埒な考えなど天子様に対して持ったことは一度も無い」
星刻の手が反射的に腰の剣を探す。しかし、そこに剣は無い。
「いっやー、スザク君にランスロットだけど、彼もそうだねぇ。取り上げててよかったぁ」
たぶんきちがいに刃物と言いたいらしい。
くねくねした言葉。同様にくねくねとつかみ所のない男ロイドが、いつの間にか部屋に入って面白そうに聞いていた。
ぎんと硬質な音が聞こえるほど強い視線で星刻がロイドを射抜く。
「ありゃまぁ、怖い怖い退散だー」
くねくねしたままロイドは逃げていく。
(ほんとに飽きない男、かわいかったり、強かったり)
中華を一人で支える忠臣やら、世界一有能な男やら、この青年に与えられた形容詞は多い。でも彼女の事に関してだけは優秀さもどこへやら、単なる純情ぼうやになる。
(あきないわねぇ。こいつも)
ゼロがいなくなって、ラクシャータの目に世界はずいぶん色あせて見えた。だが、まだまだ、楽しいおもちゃがここにいる。
それに解らない事があるとき一番に自分に聞きに来るのがかわいい。
「ラクシャータどうなのだ。私はまだ天子様のために動けるのか?」
額の皺を深くして、星刻は訊く。もし手遅れなら1日でも早く後継者を育てなければならない。
「ふふん」
ラクシャータはキセルで星刻の頭をコンコンと叩く。
「甘えるんじゃないわよぉ。私の可愛い神虎のたった一人の男をそう簡単に楽にさせるもんか」
つまりは絶対に助けてやるという事だ。
「だからぁ、答えなさいよぉ。彼女の写真で何回ぬいたぁ」
絶句して真っ赤になる星刻。どうやら移植手術後も生殖機能は正常に働いているらしい。

古い技術

2009-03-14 11:50:20 | コードギアス
ナイトメアは最新の技術を駆使して造られている。だが、以外に古い技術も多用されている。その1つが溶接である。あのロイドが村の鍛冶屋に弟子入りして小型溶接を学んだなどちょっと信じられないエピソードが残っている。
実際数十種類の添加剤を加えて造られる金属繊維は今日でさえも手打ち打法で作られている。職人はハンマーで叩いた金属の音でミクロン以下の気泡の存在を捕らえる。
ガニメデ以降のナイトメアはすべてこの金属繊維を伝達方式にしている。皮肉な事だがこの技術は日本人それも京都の貴金属職人の手で生み出されている。
ブリタニアに協力した職人の名はゼロ・レクイエム後50年の今日でさえ明らかにされていない。

仲良く風邪をひく理由2

2009-03-14 05:22:42 | コードギアス
『永続調和の契りをかわす』
今より少し高い星刻の声を思い出し、天子の心はキュンと音を立てる。

天子はあの約束の日に思い出させる星空に、心を和ませた。一方の星刻は蓮花湯の名の由来を思い出していた。
楊貴妃が玄宗皇帝に与えられたのが蓮花湯だった。さほど意識せずに星刻はその1節を謡う。
「回眸一笑百媚生 六宮粉黛無顏色
春寒賜浴華清池 温泉水滑洗凝脂」
瞳をめぐらせて微笑めば百の媚態が生まれる。これには後宮の美女の化粧顔も色あせて見える。
春まだ寒いころ、華清池の温泉を賜った。温泉の水は滑らかに白い肌を洗う。

それほど大きな声でないが星刻の声はよく通る。それには天子がいつも意識して彼の声を聞いていることも大いに関係している。
「雲鬢花顏金歩搖 芙蓉帳暖度春宵」
やわらかな髪、花のような顔、歩みにつれて金のかんざしが揺れる。芙蓉模様のとばりは暖かく、春の宵を過ごす。
あれ、と天子は思う。1行抜けてる。たしか、
(侍兒扶起嬌無力 始是新承恩澤時
侍女が助け起こすとなよやかで力ない。こうして晴れて皇帝の寵愛を受けたのであった。
こういう文があったのに。星刻わすれちゃったのかな?)
十分温まったところで星刻は天子を湯から抱き上げる。
ほぐした柔らかな海綿で玉体を洗う。
天子は自分で身体を洗った事が無い。いつも女官か宦官がきれいにしくれる。
それに疑問を持ったことすらない。
本来なら、女官でも宦官でもない星刻が玉体に触れるなどありえない事だが、小さい頃の続きで誰も気にしない。
ふとすべるように動いていた海綿の動きが止まった。
天子のまだ小さな胸のふくらみ。
そこで止まった。
海綿が床に落ちた。星刻の手は無意識にのどに触れている。
ダモクレス戦で『生きろ』ギアス全開のスザクとやりあったときの傷。星刻本人の自覚よりも傷は深く、治療が遅れたこともあり後遺症が残った。疲れると声が出にくくなる。そして精神面にも傷が残った。体調が悪くなると無意識にのどに触れる。
「しんくー痛いの」
天子の小さい手が星刻ののどに触れる。
当然天子は星刻の目の前にいる。全裸で。
思わず星刻は目を閉じた。白い肌と小さな胸のふくらみがもろに見えてしまった。
しかも目を閉じても焼きついたかのように消えない。
「て、天子様、どうか女官を呼んで御召し変えを」
かすれかける声でようやく星刻はそう言った。
「だってしんくー、シンクーは」
女官では軍人である星刻の身体を支える事はできない。
世間知らずな天子ではあるが、いくつもの戦場を目の当たりに見て、その程度は判断できる。
誰に助けてもらえばいいか、信頼できる人は誰か?天子の中ですぐ答えが出る。
香凛。
さいわい、携帯電話の使い方は覚えている。香凛の番号は星刻の携帯に入っていた。
香凛が飛んでくるまで15分。天子はずっと星刻ののどをさすっていた。
結果、せっかく温まった天子の身体はまた冷え切った。
翌日、2人仲良く風邪を引き込んでいた。

仲良く風邪をひく理由1

2009-03-13 22:12:12 | コードギアス
仲良く風邪をひく理由

千葉の指摘は正解であった。
昨夜、いや、時刻は夜明け前、男女は仲良く風呂場にいた。以下はその前後の事情である。

小さい頃の天子はよくむずかって女官達を困らせた。するとそのたびに女官達はある下人を呼んだ。
彼の名は黎星刻。その後彼は大出世して現在は中華帝国の大司馬である。地位が変わっても少しも変わりなく天子だけに敬愛と忠義を捧げている。
その日天子はまるで小さい頃のようにむずかってしまった。たいした理由はない。あえて言えば環境の大変化に心が風邪をひきかけただけである。思春期の女の子にはよくあることだった。
「御召し変えを」「ご入浴を」とうるさく言ってくる女官達にとうとう天子は「私は一人でいたいの。みんな部屋から出て」と命じた。大宦官達が権力を持っていたころはその程度の言葉さえも聞き入れてはもらえなかった。だが、今は天子が中華の支配者だ。女官達は潮が引くように引き下がった。
パンダのぬいぐるみを抱えて天子はベッドに座った。自分がとても横暴で、悪いことをしたような気がする。でもいやだった。一人になりたかった。
「しんくー、わたしね」
少しくたびれたパンダのぬいぐるみを話し相手に天子は自分の感情を整理する。
このパンダは士官学校に入る前に星刻がくれたものだ。いらい天子のベッドの住人になって彼女の秘密も悩みも全て聞いてきた。ちなみに名前をしんくーという。
「ねぇ、しんくー、明日は星刻も一緒にショッピングできたらいいのに」
明日は日本に行く事になっている。公式行事が終われば少しでも街を歩ける。
でも星刻は忙しいから、きっと無理だろう。昨日の昼過ぎに神虎で出かけたきりまだ帰ってこない。
このごろは一緒に食事もしてくれない。
「しんくーは私とずっと一緒にいてくれるのね」
天子はぬいぐるみを抱きしめてほおずりした。

夜、当番の衛士が扉を守り天子は寝室にこもっている。
でも天子は眠っていない。心が落ち着かなくて眠れない。
もう夜中を過ぎた。それでも眠れない。
寝台に座ってぬいぐるみと話している。
さすがに見かねた衛士が上級女官に天子が眠っていない事を告げる。
折り良く、星刻が日本から戻ってきた。上級女官は迷うことなく星刻を呼び出した。
地位や階級からすると大司馬を女官ごときが呼び出せるはずはないが、この女官は下人の頃からなにかと星刻の面倒を見てくれていた。もともと義理堅い星刻はすぐ飛んできた。そもそも天子様のこととなればこの男に否やがあろう筈はない。

「ねぇ、しんくー」
天子がぬいぐるみに小さくつぶやく。
「はい天子様、お呼びでございますか」
「しんっくー」
びっくりしたせいか発音が丸くなってしまう。
「おかえりなさい」
天子はぬいぐるみごと星刻に抱きついた。
「天子様、もうお休みにならないと明日の調印式がおつらくなります」
「ねむれないの」
星刻は手馴れた様子で天子の室内履きを脱がせた。
絹の靴下をそっとおろす。白い素足が弱めた明かりにすらまぶしい。
星刻の手が無意識にのどに触れる。
天子の足は小さい。20センチも無い。両方の絹の靴下をぬがせるとさくらがいをはめたような小さな爪が見える。
中華の女は,普通めったに足を異性に見せない。纏足の習慣からも解るように,中華において女の足は特別な感覚器である。
すあしになった天子の両足を星刻は片手の上に乗せた。
「爪はまだお切りしなくてもよいようですね」
星刻の指がガラス細工にでも触れるかのように天子の爪に触れる。
天子の全身がわずかに震えた。ぬいぐるみが彼女の手から離れる。
「おみ足が冷たくなっていますね。これでは眠りにくいでしょう。お湯に浸かられてはいかがですか。暖かくなればゆっくりおやすみになれますから」
「行くわ」
わずかに震える声で天子は答えた。ここにいるのは星刻なのに自分は何故こわいのだろう。

蓮花湯、朱禁城内殿の一角にある天子専用の温泉である。
星空が見えるので露天風呂のようだが、実は防弾偏光ガラスの温室構造で外から見る事はできない。
常に女官が数名待機しているが、星刻はその者たちを控えの間に下がらせた。
天子の髪飾りを外し、薄いショールを肩から下ろす。1枚また1枚ころもが無くなり、天子の身体は軽くなる。
衣とともに怖さが薄れる。ここには星刻がいる。何も怖くない。
見上げる空はまるで約束の日のように、降り注ぐような星空。
『永続調和の契りをかわす』
今より少し高い星刻の声を思い出し、天子の心はキュンと音を立てる。

空港警備

2009-03-12 06:33:33 | コードギアス

藤堂は空港警備のため軍の1個中隊を指揮していた。何しろついこの間まで世界中あちこちが敵味方入り乱れて戦っていたのだ。どの国の人間がどの国の人間にうらみを持っているか見当も付かない。
愛らしい天子は世界的なアイドルである。今や、彼女の姿が写るニュース放送はそれだけで視聴率30パーセント以上を確保できると言われている。すっかり人気者になった天子だけにまた別の危険もある。
愚かにも朱禁城にもぐりこもうとしたパパラッチはすでに3桁を超えている。
「彼も苦労が絶えないな」
内心だけで藤堂はつぶやく。
「藤堂軍事総官、3分後に専用機が到着いたします」
「よし、作戦通りに実行せよ」
天子の安全を守るため、パパラッチ達を先に捕らえておく。重要な作戦だが、それでも命のやり取りをしていた藤堂や千葉には余裕がある。

中華連邦専用機が純白の機体を煌めかせる。
藤堂は額に皺を寄せる。併走しているはずの神虎の姿がない。
国際機体と呼ばれる蜃気楼、紅蓮、残月、神虎、トリスタンの5機は今や世界中どこでもフリーパスである。
といってもご存知のように現存している機体は神虎とトリスタンのみ。そのうちトリスタンは半壊状態のままであるから実質特権を使うのは星刻一人である。星刻に言わせれば「あれは特権と言う名の押し付けだ。私は中華の軍人であってゼロの代行者ではない」。つまりEUにせよアフリカにせよ、なにか厄介な問題が起きかければやたらに連絡してくる。
中華に波及する問題になる前に解決できるほうが合理的なので、星刻もせっせと動いているが、どうも本物のゼロより使われている気がする。今のゼロは、身体を介しての勘が鋭く理屈よりも先に真実にたどり着く。ただ、その勘があまりに優れているためか、相手を納得させる理屈が付いていかない。その隙間を星刻が埋めている。
ゼロが選んだ唯一の同盟者、平和の聖騎士、そんな呼び名がマスコミから与えられている。同盟者は事実だが、他は認めた覚えも受け入れた覚えもない。それでも動いているのはインドとチベットの動きが微妙だからだ。生きのこった分離派と結託されないように、他国の支持を天子に集めておきたい。そのために利用できるものは利用する。自分の身でも、縁談でも。天子様のためならば。


純白の専用機から降りてきたのは洪古将軍一人。さすがのパパラッチもひげ面のこわもてには食指が動かないらしくホテルに入った頃には、警戒態勢は段階を落としていた。
藤堂はホテルに洪将軍を訪ねた。
「星刻なら風邪だ」
特に隠す必要もないと洪はあっさり答える。
昨夜、というより今朝の夜明け前に戻った後、せきと微熱でそのまま休んでいるという。
聞けば天子も軽い風邪でお留守番という。
「天子様はこっちに来てもいい程度だが、」
天子がいれば星刻がおとなしく休むので留守番を選んだらしい。
なるほどどんな厳重な警戒よりもあの小さな主君の「おやすみしてね」の一言は効果的だろう。
藤堂は特にどうとも思わなかったが帰宅して千葉にそれを言うと、女の勘というものか
「同時に風邪をひくとは、風邪をひくようなことでも2人でしたのでは」とさりげなくも鋭い指摘があった。

デートアフターフォローマニュアル実践

2009-03-09 16:10:56 | 鋼の錬金術師
翌日デートアフターフォローマニュアルを叩き込まれて、ラッセルはまたバラを抱えてアームストロング家を訪れた。


昨日と違って使用人達の視線が冷たい。
使用人に言わせれば当然である。ご主人様の手中の宝玉たるキャスリン様を泣かせた悪い男なのだから。
「お嬢様はお会いしたくないとおっしゃられております」
執事が伝える。
「そうですか、では伝言だけでもお願いしたい。昨日練習したので今日は自信を持ってあなたを誘いに来ましたが、ご不快でしたらまた改めましょう」
「は、」
執事の言葉が止まる。
それではもともと本命はお嬢様だという事なのか。ただ、少し言葉に行き違いがあっただけで。
執事はすぐさっきの伝言を持ってお嬢様の部屋にメイドを走らせる。
実のところお嬢様にはラッセルが来た事を伝えていない。当然会いたくないというのは作り事である。
15分後、桜色に染まったキャスリンが階段を下りてきた。