金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

デートアフターフォローマニュアル

2009-03-09 15:55:25 | 鋼の錬金術師
デートアフターフォローマニュアル

翌日、ラッセルは大きなバラの花束を抱えてアームストロング家を訪れた。
開口一言、「キャスリン姫にデートを申し込みに来ました」
これはデートのマニュアルから行けば逸脱している。まず、女性にデートを申し込み、許可を得てから家を訪ねるのが正統である。それなのに、いきなりやってくるとは。
普通ならあきれられるところだが、この申し出は諸手をあげて歓迎された。ことにキャスリンの兄は自分が申し込まれたかのように感涙の涙を滝のように流した。
さらには寝室をしばしばともにしている男女が、まだデートをしたことがない事にむしろ家人達は驚いた。
デートの場所は遊園地。スタンダードであるが王道である。心配のあまりこっそり付いていかせた幾人もの使用人によると、周りの視線が釘付けの最高のカップルであったらしい。兄たるアレックスは電話で報告を受け、妹の始めてのデートが楽しいものであったことに安堵した。
しかし、幸福そうに帰ってくるはずの妹は何故か不機嫌を隠せない様子で帰ってきた。
兄たるアレックスはラッセルが何かしたのかと心配し、むしろ何かしたほうがいいのかと、これまた父親のようなことを考えた。
一方ラッセルの弟であるフレッチャーも大きな疑問を抱えた。兄がキャスリンをデートに誘った事も、結構うまくいったこともアームストロング家の執事さんからの連絡で知っている。
それなのになぜか兄はほほに平手の跡をつけて帰ってきた。
つまりキャスリンにひっぱたかれたらしい、
妹の兄と、兄の弟はひそかに連絡を取り合った。
「いつもお世話になっているのに、今回は兄がなにかとんでもないことをしたようで申し訳ございません」
「いや、うーむ、それがな報告では最高に良いデートであったそうだが」
それなのになぜ妹がラッセルをひっぱたいたのか、見当が付かないらしい。
「僕も兄さんに聞いてみます」
兄には素で人の神経を逆なでするところがある。セントラルに来てからはすっかりおりこうさんになっているが、ふと女性を傷つけるような事を言ったのかも知れない。
弟は兄に根掘り葉掘りデートの様子を聞いた。しかし、多少王道過ぎるようだがデートは完璧だ。
そこにひょこりとハボックが咥えタバコで、火はついていないが、入ってきた。
「よお、ラッセルデートしたんだと」
「どうも、うまくいかなかったようです」
ラッセルは打たれたほほをさする。まだ痛むらしい。
まぁ、それでも加減はしたんだなとハボックは思う。ピアノを持ち上げるお姫様にひっぱたかれて赤くなる程度で済んでいるのだから。
「デートは難しいですね。ハボックさんの言うとおり最初は気を使わなくていい相手を選んだんですが」
その言葉にフレッチャーは引っかかる。
「兄さん、キャスリンさんのこと好きだからデートしたんじゃないの」
「好きだよ」
兄はあっさり答える。
「彼女はルイの妹だから」
なにそれ、フレッチャーは頭がごちゃ付いてきた。兄は今なんて言ったんだ。
「おい、ラッセル、お前気を使わなくていい相手とか言ってないだろうな」
ハボックはタバコを噛み潰した。
こいつは頭がいい。そのはずだ。違っていてくれよと祈るようにラッセルを見た。
「あぁ、言ってますよ。彼女が『どうして兄さまではなくて、私を誘ったの』と聞いてきたから」
「にいさん」「ラッセル」
「「もう2,3回引っぱたかれて来い」」
弟と兄のように思っているハボックに同時に言われて、ラッセルは自分が悪かったことを認識した。
しかし、何故悪かったのか解らない。
その夜、マスタングを中心に事態の解決のための会合が開かれた。
出席者はマスタングとフレッチャー、ハボック。
翌日デートアフターフォローマニュアルを叩き込まれて、ラッセルはまたバラを抱えてアームストロング家を訪れた。

デートマニュアル

2009-03-09 14:09:05 | 鋼の錬金術師
フレッチャーが帰宅したとき、兄はハボックとお茶にしていた。
「だから、最初のデートは気心の知れた相手、幼馴染が気を使わなくて一番いい。そうすりゃどじっても平気だろ」
「幼馴染か、俺にはそういうのはいないから」
「何言ってやがる。お前なら選び放題だろ」
ハボックは軍の秘書課の女性達や、ラッセルのことをかわいがっているご婦人方を考えていた。
フレッチャーは自分のカップにお茶を注ぎながらハボックに聞いてみる。
「ハボックさんは初めてのデート、誰としたの?幼馴染?」
右のほほにえくぼをうかべてフレッチャーは話を振る。
後で思えばそんなどーでもよいことなんか訊かずに、何か考えているらしい兄に訊くべきだった?誰を考えているの?エドワードさん?それとも?
「へへ、俺はな村1番のでか胸のマリーと」
「デートして30分でひっぱたかれて振られたと。フレッチャー、ハボックの話を聞いても女は口説けないぞ。聞くのなら私に聞きなさい。手取り足取り実践で教えてやろう」
「えーっと、僕はそういうのあまり興味がないから」
「女の子をダース単位で数えるようなお付き合いは、本当の好きじゃないと思う」
「おぁ、少年いい事言うな」
ハボックがフレッチャーの背中をたたく。この頃まだ小柄だったフレッチャーは、ソファーから落っこちそうなほど飛び上がる。
「ハボックは東方時代ふられのジャンと言われていてな、付き合う女どれも1月もたなかった」
「俺のデートの相手にちょっかいかけてじゃましたのは、大佐あんたでしょうが」
「ふふん、私の魅力は太陽のようにに全ての女性に平等に与えられるのだ」
「あ、だから雨の日は」
邪気の無い顔で毒を吐くフレッチャーの口に、ロイが大型のカップケーキを押し込む。
「どうせ、俺はがさつで女心を解しませんよ」
「お前は女の選び方が悪いんだ。Dカップ以上しか見ていないだろう」
「大佐、男と生まれたからにはあの柔らかな谷間で窒息したいと」
「思わないな。成長過程の愛らしい乙女を好みの女に育てる醍醐味を知らないとは。そもそも女性の魅力とは」
ロイが言いかけたときエドワードが入ってきた。
とたんに女談義は消滅した。かわいいお子様のエドの前でアダルトな話題はふさわしくない。
この館の住人にとってエドワードは穢れなき黄金の光の天使だ。
そして誰も気にしていないが、ラッセルはエドワードより1歳下、フレッチャーに至っては3歳も下なのだが。

八項注意

2009-03-09 09:16:30 | コードギアス
八項注意 baxiang zhuyi ぱーしゃん ちーいー 中華人民解放軍の規律。

言葉は穏やかに
公正な値で買う
借りたものは返す
壊したものは弁償する
人を打たない
農作物を荒らさない
婦女子をからかわない
捕虜を虐待しない

ごく当たり前のことばかりである。ところで『通り抜け無用』と書いてあるのはそこを通り抜ける人がいることを表す。つまり、中華軍の内実は・・・。これ以上書くとやばそうなので以下省略。

うまくいかなかったのかねぇ

2009-03-08 15:55:00 | コードギアス
藤堂は手早くグラスをかたづけた。明日、いやもう今日は早朝から東京に戻る予定だ。朝早くから千葉に洗わせるのは気の毒だ。長い事逃亡生活をしていたし、若いころは自炊していたから洗い物ぐらいは苦にならない。
きれいに洗ったグラスを布巾で拭く。わずかに布巾がひっかかる。見るとグラスの1つにわずかなひびが入っている。
「あぁ、あのときか」藤堂はつぶやく。
さっき辞去の挨拶をして立ち上がった星刻が一度足元を滑らせた。
丁度月が陰ったときだ。
そのときグラスがぶつかり合って、こつんとちいさな音を立てた。
無理にでも泊まらせるべきだったか?
藤堂は思う。だが、「洛陽に帰って、明日公式訪問で来ます」と言い切る青年将校に無理強いはできない。彼は実質的な中華の支配者だ。
「それに」藤堂はひび割れたグラスを紙に包みながらつぶやく。
星刻はスザクに似ている。身体能力もだが、不器用で意地を張るところが。
もしスザクがあの兄弟と出会わなければ、自分の弟子のままであれば、あの中華の青年のように育ったのではないか。


翌朝、わずかな手荷物を持った千葉は藤堂のお気に入りの切子のグラスが1個しかないのに気が付いた。
あの後、神虎の起動音が遠ざかった後、藤堂は客間で1人で眠った。
千葉には解っている。それは藤堂の優しさだと。明日からまた政府の仕事が始まる。
ゆっくり眠らせようとしてくれたのだと。
(でも、違う。それは)
以前ならその優しさは嬉しい。
だが、自分達はもう以前とは違う。自分は妻だ。式を挙げていなくても、妻だ。
妻だから自分だけが藤堂中佐の傍にいられる。
千葉自身はそう考えている。だが、藤堂はどうだろう。自信がない。
一緒にいる。それは四聖剣の頃も同じ。もちろん自分は今も四聖剣だ。中佐を守るのが自分の命の理由だ。だが、何よりも今の自分は藤堂の妻のはずだ。
(妻と思っているのは私だけですか。中佐)


藤堂は大きな荷物を運び終えると、まだ外に出てこない千葉を呼んだ。
「はい、すぐ参ります。総監」
迎えの車の運転手はひそかに扇から言い含められていて、この二人が新婚であることを知っていた。
しかし、その割には出てきた妻の表情がさえない。
(?)
内心(こりゃうまくいかなかったのかねぇ)と邪推したが、それを表面に見せることはなかった。


書けない

2009-03-08 15:04:03 | コードギアス
以前、「藤堂に恋愛相談する星刻」と妄言を吐いた事がありました。
なんとか、それを文にしたいと書き始めましたが、・・・なぜかなー。天子の婿を探してる話に転んでしまった。
国籍こそ違えど、大真面目で一途で深い想いをもつ藤堂と星刻。そんな二人が軍服のまま、
「千葉と結婚してみたが、どうしてやるのがいいか、わからない」と愚痴ったり、
「天子様の愛らしいいたいけで純粋なあのお心に傷を付けたくない。どうすれば傷つけることなく・・・」とか相談したり。
藤堂も星刻もまじめで額に似たような縦皺寄せて、「どう愛したら良いのかわからない」
こういう話にしたかったんですが、どうにもこうにもいくらがんばっても星刻が天子様に触れることができない。
お召し変えや、ご入浴で玉体を清浄に清めるのは顔色も変えずにやれそうなのに。



天子の婿を内内に探す。

2009-03-08 14:49:21 | コードギアス
日本の皇室で天子様と年齢的につりあう方はいらっしゃるか?





「皇の血筋のお方で12歳から20歳ぐらいまでの男子はいらっしゃらないか」
グラスの冷茶に数秒月光をすわせて、月の力を借りようとするように一息に飲んでから、星刻は問うた。
「今の皇は神楽耶様おひとりだ」
「それは公式の方だな。公式には認められていない方も含めてではどうだ?」
「私の知る限りもう誰もいないが」
庶子を含めてという意味なら、5代前の当主の子孫が以前はいた。それさえもフレイアで死んでいる。
「そうか、日本の皇の血筋のものならば天子様も打ち解けやすいと思ったのが、いらっしゃらないのでは仕方ない」
はぁと星刻は息を吐く。
ため息のように長く。
「疲れているな」
精神もだろうが身体も疲れている。藤堂の見るところ今の星刻は、普通のナイトメアに乗れる状態ではない。
そんな星刻が神虎に乗れるのは、神虎がパイロットにとても優しい機体だからだ。神虎のコクピットに居る間、星刻は1秒間に30回も血液の酸素濃度・血圧・体内圧など50項目を精査される。それに応じて神虎はコクピット内の温度・湿度・酸素濃度などを変化させる。だから最近の星刻は少しでも調子が悪いときは神虎にこもる。
「コクピットはパイロットのゆりかご」。ラクシャータは主張する。それぐらい安全に造ろうと。
「そのまんま、棺おけにもなるしねぇー」
横から茶々を入れたのは誰か、名を書くまでもないだろう。

メモ

2009-03-07 20:39:17 | コードギアス
莫大な金を使い、エコロジーに反する乗り物
そのひとつは戦車。
陸上自衛隊の現主力は「90式」
1両なんと約10億円。

ナイトメアも同じぐらい使っているとして、標準型で10億円。
ランスロットなら・・・ネットワーク型戦車が開発費500億円の記録があるが、あのロイドの事だから・・・。
シュナイゼル様はどんな批判を受けようとスポンサーとしては太っ腹でいらしたようである。

真夜中の来客

2009-03-06 23:08:17 | コードギアス
真夜中の来客

「千葉、先に寝ていなさい」
明日は東京に戻るという日の夜中に突然飛んできた神虎。
当然、乗っているのは黒髪ロン毛の総司令。
神虎から降りた彼はわずかに足を引きずりながら、あのダモクレス戦で神経を痛めた、藤堂の傍に走ってきた。
(今夜は最後の晩なのに)
布団の中で愚痴る千葉。
女心を知らない男2人は冷茶を点てながら、軍略を語っている。
「上海勢力は8割以上消滅した。今ならこちらに取り込むことも可能だ」
「ダモクレスの置き土産だな」
ルルーシュはフレイアで中華のあちこちを殲滅した。
それが、星刻にとって天敵とも言える上海勢力の拠点ばかりだった事を知ったのは、ルルーシュが死んでからだ。
薩摩切子のグラスに冷茶が注がれる。
月の光の下で、その色は淡い。


「天子様はどうされている」
冷茶を一口飲んで藤堂は問うた。
自己抑制が強すぎるこの青年には道をつけてやる必要がある。なにも軍事関係の話をしに休暇中の自分を訪ねたわけではないだろう。
「帝王学を学んでいらっしやる」
「もう、14歳だったな」
「まだ、14歳だ」
星刻の表情は硬い。
あの愛らしい天子に対してこの青年がどういう感情を抱いているか藤堂は知っている。
星刻も本当はわかっているのだろう。だが、それを無意識に忠義に置き換えている。
といっても藤堂もラクシャータに親切丁寧に教えられて、ようやく理解納得したのだが。
「愛とはむずかしいものだな」
額に立て皺を1本深く刻みつけて、深く頷く藤堂にラクシャータはひそかに疑った。
(まさかこの男この年で奥手とか純情とかどーてーとかいわないでしょうねぇ)と疑ったことは千葉だけには言ってない。

両王手16

2009-03-05 09:44:26 | コードギアス
両王手16
実のところもう書くことはあまり無い。

正式の調印式の間には各国代表とそして英雄ゼロがいる。侵略皇帝シャルルを打ち倒し世界を平和にした英雄。
その英雄はこの部屋に入ってから一言も話さない。まったく動かない。
まるで人形のようだった。ドイツ領の代表は個人の手記にそう書いている。

かろうじて音声だけがつながった通信に天子が叫ぶ。
「しんくー帰ってきて!」
神虎と同じ高度まで登れる機体は存在しない。
途中まででも自力で降りてもらうしかない。途中もはや完全にエナジーが尽きたのか、神虎の動きが降下から落下に変わる。すかさずせいいっぱいの高度まで登っていた藤堂機と千葉機が支える。
予測どおり、星刻は半ば凍死しかけていた。すぐさまブリタニアが誇る医療チームが総動員された。治療の過程で星刻の命を食いつぶしていた病巣が発見された。
新生ブリタニア王国は国の威信をかけて、全力で治療にあたった。それでもブリタニアの医療だけでは足りない部分があり、王命のもとEUや独立日本の技術者も呼び出された。
期せずして、星刻の治療は世界が戦い以外にできることがある、協力したら不可能も可能になると伝えた。

1年後、中華に戻った星刻は望まない間に世界の協力と融和の象徴になっていた。
「私は軍人なのだが」
平和の象徴などと呼ばれて、とまどう星刻に洪古が豪快に答える。
「お前の軍籍は1年前に天子様の勅令で消されているぞ」
星刻がいない一年の間に、すっかり君主らしく立派に同時にきれいになった天子が星刻を迎える。
「無理は駄目よ。ゆっくり休んでね」
微笑みとともに渡された天子の言葉に、(もう私は必要ない)と星刻が鬱になったり、あいまいだった国境線の線引きで小規模な戦いがあったりもしたが、ともかくも世界は明日に向けてよたつきながらも歩き始めた。

藤堂鏡志朗、愛を語る。

2009-03-04 17:22:21 | コードギアス

悪逆皇帝天誅の日から半年が過ぎた頃、藤堂は千葉と入籍した。式も無く華やかな宴も無い。それでも千葉は満足していた。ただ傍にいる。今の関係が自分達にはふさわしい。

「藤堂中佐」
「千葉」
結婚してからも二人はそう呼び合っている。だから彼らを知る者も、結婚したことに気が付かない者の方が多かった。
今日2人はかっての藤堂の道場の跡地にいた。道場そのものは跡形もなく消し飛んでいたが、小さな離れが無事残っていた。たった数日の休暇。
それでも入籍を知った扇がせいいっぱい手を回してようやく実現した。
「この大変なときに休暇など」
渋る藤堂に「少しでも2人だけの時間が女性には大事だから」と
半分命令のように休暇を押し付けた。
四聖剣1の剛の者などと言われた千葉だが、こうして2人きりになってふとした拍子に「きょうしろうさん」
少したどたどしく呼ぶ声に、(私の妻なのだ)とようやく実感する藤堂である。

さくら

2009-03-04 17:03:06 | コードギアス
桜を見ることができなかったな。
藤堂は言った。日本ではもう葉桜になっている
花どころではなかったですから。
神楽耶が言葉をつなぐ。経済会議がようやく終了して帰国便の時間まで後2時間である。
あの、もしよろしければ、ナナリーが日本語で言う。
離宮の庭に桜があります。ご一緒に見に行っていただけませんか。私も見るのは初めてなのです。
ナナリーは日本にエリア11に生きていたが、その間彼女の目は閉じられていた。
ご覧になりませんかではなく、見に行っていただけませんかというのは、皇帝としてではないナナリーの言葉。
みんなで見ればお花はもっときれいになるよ。
天子が少し丸い発音の日本語で一緒に行きましょうと言う。

離宮の庭に桜を30本植えさせたのは亡き姉ユーフェミア。ヴィ兄妹が死んだと聞いたとき、皇帝は国葬すらしなかった。せめて彼らにつながるものをと桜を植えさせたと。
あの国では桜は死者の魂を安らげると聞きました。
せめて魂だけでも安らかに。
祈りをこめて、ユーフェミアの手で植えられた若木は今はりっぱな成木になった。

わぁきれい。桃華園みたい。
本当に見事ですね。ブリタニアにこんなお庭があるとは存じませんでした。
ユフィ姉さまが私たちを偲んで、植えてくださった、そう言いかけてナナリーの言葉は止まる。
たとえ真実の事情を解ってくださっていても、やはり異母姉のユフィの名は日本人には不愉快なはずである。
花は植えた方の思いを抱きしめて育ちます。この花たちがこんなに美しいのは植えた方がとても優しい方だったからですね。
ナナリーの言葉が聞こえたかのように、でも聞こえなかったかのように神楽耶は答えた。

30本の中に1本だけ山桜があった。
省吾、お前の好きな
そういって藤堂は振り向く。いつも省吾のいた左側を。
そこに朝比奈は
いない。ただ、散り染めの花びらが1枚遊ぶだけ。
いつも藤堂を守るため利き腕とは逆の左側に立っていた。
しょうご
あの戦いから1年近く経った。ゼロに関わった者たちはそれぞれの立場で世界を安定させるために走り回った。神楽耶は日本の女天皇として。藤堂はその側近と軍事総官を兼職している。
過去を振り向く暇はなかった。
省吾、私はお前を思い出してもやれなかった。
藤堂の変化に最初に気が付いたのは神楽耶。次はナナリー。だが、二人は動かなかった。
いつも凛と背を伸ばしているあの男が泣いているから。
「お車の用意ができました」
侍従官が知らせを持ってくる。
すぐに行きますと神楽耶は答えた。しかし、藤堂を呼べない。
数分後侍従官はまたやって来た。
今度はナナリーが答えた。
待たしておきなさい。
しかし、長く待たしてはまたメディアが大国の不仲を騒ぎ立てるだろう。
天子は右を見て左を見た。
神楽耶もナナリーも動かない。山桜の方を見ると、藤堂が泣いている。
天子は胸ポケットのレースのハンカチを引っ張り出した。
てってっと走り出す。
そして藤堂の手にハンカチを握らせる。
桜を見上げていた藤堂の視線がふと下がる。
天子はその視線をしっかり見上げた。
あのね、泣きたいときは小さいものがあるといいの。私が一番小さいから一緒に行きましょう。
ようやく、藤堂は自分がまだ公的な場にいたことを思い出す。
レースのハンカチが数的の雨を吸った。

数日後、中華連邦にきれいに洗われたレースのハンカチとともに、桜の苗木が届いた。
事情を知らない星刻は天子個人に宛てられた、藤堂からの個人的贈り物となぜか藤堂の手に渡っていたレースのハンカチにさまざまなケースを想定してしまい、自分が男である事に深い自己嫌悪を感じた。


ほわりん

2009-03-03 13:45:56 | コードギアス
英雄ゼロが悪逆皇帝を倒した。
流れ落ちる血、熱狂する群集。すぐさまコーネリアが取り押さえようとしたが、生憎ブリタニア軍は逃亡してしまった。いかにコーネリアが優れた指揮官でも指揮する軍隊がいなければどうにもならない。
もっともブリタニア軍がいたら、それはそれで問題だっただろうが。暴徒化する日本人を取り押さえるブリタニア軍。それはそのままさらなる暴動を引き起こしかねない。
しかも、放送を見てブリタニア皇帝が英雄ゼロに殺された事を知った日本人が、いや日本人だけではない、ブリタニア人も無秩序に通りに集まってくる。
「姫様、ここはいったんお引きください。ナナリー様もご一緒に」
忠実な騎士であるギルフォードが進言する。
「やむを得ないな。ナナリー」
異母妹はもう泣いてはいない。あまりに強すぎる悲しみや喪失は、涙さえも奪った。
コーネリアは異母妹を抱き上げようとした。
しかし、コーネリアが抱き上げる前にナナリーは英雄の腕に抱き上げられた。
(スザク、いやゼロ)
ゼロに抱かれるナナリー。
これからのブリタニアと超合衆国の関係を象徴する姿である。
実際この映像は歴史的なワンカットとして後々まで伝えられている。
だが、今は別のことが必要だ。
「ゼロ、妹は私が連れて行く。ゼロにはこの民衆を取り押さえてもらいたい」
このまま人数が増え続ければ小競り合いも起きる。ほんの小さな原因で大暴動が起きる。コーネリアはそれをよく知っていた。

「ナナリー姫には中華の天子、日本の皇とともにパレードに出ていただきます」
「な、この今か!!」
たくさんの言葉をコーネリアは声にしないままスザク、ゼロに詰め寄る。
たった今兄を殺された、悪逆皇帝としてお前に殺された、その妹にパレードに出ろというのか。貴様はそれでもユフィの騎士だったのか。
「今、です。今なら世界が戦い以外を求めている」
皇神楽耶、中華の天子、そしてナナリー。ともに戦いの真っ只中にいたが、それでも直接戦場に出ていない。
ともかく、同じ皇族でも軍人のコーネリアより可愛いナナリーのほうがパレードの華としてふさわしい。
特に中華の天子はあのほわりんとした印象が、愛と平和の象徴にふさわしい。
これからの世界にはあぁいう守りたくなる存在が重要だ。ルルーシュがそう言った.



星刻にもギアスを

2009-03-01 12:14:21 | コードギアス
パーフェクト・ターン・ファンブックの95ページ目によると、『ギアスの素質とは強い願望を持っていること』
それなら、星刻にもギアスの素質は十分にある。
天子様を守りたい。自分の余命が限られているならなお彼女が泣く事の無い世界を造っておきたい。しかし、世界はいつまでも不安定だ。
それならば、自分亡き後をた託せる人物がいれば。しかし、天子様を愛し守り、間違いなく幸福にできる、そんな人物がいるだろうか?
たぶんいっときはゼロにその可能性を求めていたのでは。しかし、結果的にゼロは自分より先に逝ってしまった。スザクゼロはナナリーのものだ。
藤堂は年齢的に無理。
そんなふうに考えたら、星刻が満足する後事を託せる人物はいない。普通の方法では。

では、普通でない方法。ギアスがあれば。
もし、星刻がギアスを持っていたら『託す』が一番ありえると考えます。
マリアンヌと同様に、死んで初めて発動する。
星刻本人も自分がギアスもちだった事を知らないなら可能性としてはありえます。


中華にはあのギアス嚮団がありました。嚮団もccも知らないコード持ちがいても不思議はないのでは。
なにしろ中華ですから、なにがあっても納得できる。
滝の老師と呼ばれ、何千年も生きている仙人みたいな爺さんがいるとか(笑)。イメージモデルはあの方です。
「大滝の水を逆流させた者に秘儀を授ける」とか言いながら、何千年も過ごしている。
軍の仕事の都合で、仙人を説得してそこから追い出せと命令された若星刻がやってくる。
星刻に懐かしい弟子の面影を見た仙人は、彼の中の死の影を見つける。
「人の命を左右する事はできぬが、思い残すことなく生き抜け」
で、ギアスを与える。