小麦句会 on blog

俳句「麦の会」の句会のひとつです。 ネット句会を月二回行っています。 この句会は誰でも参加できます。

第419回小麦句会結果発表

2019年12月24日 22時51分50秒 | 15日句会

こんばんは。
お待たせいたしました。
あと2日したら、クリスマスツリーから門松になって、いよいよ年末。
1年、 ご参加いただきありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
よいお年を。

兼題:走
タスキかけ意地の走りや雪の富士  泉

山猿の走り跳ぶ影冬木立  仙翁
〇(ちせい)季語は「冬木立」。山猿の雄姿に影が。冬木立の孤高性が偲ばれます。
〇(道人)山猿はそう見れるものではなくなりました。郷愁の景か、自身を山猿に見立てた心象句か、気になります。
〇(春生)年々、猿が人里の降りてきています。よく見かける風景です。

マスクしてまなこさ走る受け子かな  幹夫

師走来て罷りし寅又罷り出づ  瞳人   

歳晩の海へと真水走り行く  敏
〇 (多実生) 水は河口から海へ、走り行くで決まりました。

何故走る風に問われて冬木立  あちゃこ
〇(餡子)子供の頃は、走るなと言われても駆け回っていました。今は、走れ!と言われても、走れません。階段を風のごとくに駆け上がる若い人、羨ましいと横目で見ております。 

晩年への助走確かや息白し  餡子
◎(藤三彩)何かしら目標をもってのホップ・ステップ・ジャンプできる準備万端の自信を感じさせる
○(アネモネ)助走確かな晩年、羨ましいなあ。
◯ (アゼリア) 羨ましいです。気がついたら晩年という感じです。

蝋燭は六分手袋履く走路  吾郎
○(幹夫)蝋燭の炎が揺れるほどの冬の疾走感が詠まれる。

暮れ六つに止まぬ槌音師走かな  アゼリア
○(幹夫)「村の鍛冶屋♪」が師走夕暮の忙しさにぴったり!

僕の破片が夜を走って北風の街  宙虫
○(アネモネ)この破調、なかなか素敵です。
◎(餡子)僕の破片・・に脱帽です。読んだとたん、雷に打たれたような感じになりました。胸キュンです。  
○(あちゃこ)動かない肉体と思いだけが駆け抜けていく夜の疾走感を感じました。とても詩的。
〇(道人)「破片」に思いがこもっています。「北風」は字余りでも「きたかぜ」と呼んだ方が雰囲気があります。

走る気が走らせなくて冬の昼  ちせい
〇(藤三彩)健康や体調の為に少しは走らねばと思う、がしかし外が小雨や北風だと炬燵に戻る

師走空二番ホームのピエロの眼  道人
〇(ちせい)季語は「師走空」。ピエロの目が睨んでいたのかもしれません。
○(仙翁)ホームにピエロ、クリスマスの風景でしょうか。
○(あちゃこ)実景なのでしょうか?私には、ミステリアスな映画の1シーンのようにも。

御馳走の蟹喰う寡黙幹事楽  藤三彩
〇(瞳人)幹事楽とはねえ…

大根が我が家の馳走過疎地なり  春生
○(泉)質素な生活は良いですね。空腹ならば、何でも美味しい。
〇(餡子)大根は、何にしてもおいしい。とれたての野菜の美味しさは、過疎地と呼ばれるあたりの方に勝てません
〇 (多実生) 昔は自足自給でした。冬場の大根には助けられた筈っです。

短日の下校は走れ田舎の子  多実生
○(泉)子供は風の子です。田舎の子供は伸び伸びと育ちます。
○(吾郎)田舎の子がベタなんですが、実感だろうなぁこれは。
〇(春生)急がないと、暮れて真っ暗になります。田中に住んでいましたので、学校が遠くでした。

またしても助走で終わる師走かな  ルカ
(選外)(道人)毎年の反省。師走感がよく出ています。

街師走芝居處にひと溢れ  アネモネ
◎(ルカ) 劇場のある町。師走の芝居を見た人々の満足感も溢れています。

凍晴や走り根が割るアスファルト  珠子
○(ルカ)季語がいいですね。
○(仙翁)このような無常の景色、何処かで見ますね。
◯ (アゼリア) 本当に植物の生命力に驚かされたり励まされたりしています。
〇 (多実生) 大木の逞しさが見えます。
〇(春生)走り根のたくましさ、冬空に立つ大木が想像されます。
○(まきえっと)歩道が凸凹です。

走っても追いつかぬ夢花八手  まきえっと
○(珠子)走り通すことは難しい。これはきっとあきらめずに追いかけてもという意味なのでしょう。夢とは追いつけないものを言うのじゃないの?と思っている私ですが、追いかけるのは嫌いではないらしい。季語が浮ついていなくていいですね。八手の花はあまり目立たないのですが、花の少ない冬に小花をびっしりと咲かせ、暖かい日にはたくさんの虫を寄せます。翅のある虫たちにとっては力強い花です。
◯ (アゼリア)それでも追いかけていきたいです。

テーマ:風
行き場ないビル街の風冬至粥  まきえっと
〇(宙虫)閉塞感のなかのわずかな安ど感。ほっとする。

飲まされたふりをしており風邪薬  ルカ

塩なぜか飲んで秘伝の風邪治し  吾郎
○(泉)塩が風邪薬ですか。見事な回文だと思います。
○(珠子)風邪の治し方は個々それぞれ。白湯に一つまみの塩というシンプルな薬。ありそうです。
〇(宙虫)秘伝の置き所が妙に面白い回文。インフルエンザ気をつけよう。
○(あちゃこ)秘伝の風邪治しとは。このような発想はとても出来ない。見事です。
○(まきえっと)うがいは大事。秘伝がいいですね。

海越えて来し木枯しの加速かな  敏
〇(ちせい)季語は「木枯らし」。加速した木枯らしは魅力的に見えたのかもしれません。
〇(餡子)木枯しの名句。「凩の果はありけり海の音」「沖へ出て木枯しかえるところなし」「木がらしや目刺にのこる海のいろ」そして、掲句。  
(選外)(道人)山口誓子の名句「海に出て木枯帰るとことなし」の逆バージョン。リアルです。

寒風を裂いて千本ノックかな  泉
〇(春生)来年のために、今の千本ノックが不可欠ですね。 

空つ風の止まず風力発電所  春生

桜見を攻める後から大くさめ  瞳人 

重ね着の蒲田で風に乗る神籤  宙虫

神木に潮風の癖年詰まる  珠子
〇(宙虫)海辺の神木。長年の風の影響で独特の曲り方しているのか?面白い。

水槽のうつぼ見てゐる懐手  アネモネ
○(幹夫)うつぼ鑑賞の様子が見えてくる。
〇(藤三彩)ウツボじゃないが時に河豚を見ている。河豚やのシーズンではある。
◎(瞳人)懐手しているのは、靭の方? と思ったら笑えてしまって
○(吾郎)近隣のドン・キホーテ店頭の水槽前での景かな(笑)、うつぼの無表情具合との組み合わせがグッジョブ。
◎(宙虫)うつぼの顔が不気味に。水槽のなかだから安心だ。懐手がある種の征服感みたいに見えるのがおかしい。
◎(まきえっと)このさり気なさが好きです。年末にこういうことをしていたら「猫の手も借りたいのよ」と言われそうです。

雪兆す漆黒の村明日の風  あちゃこ
○(仙翁)雪と漆黒、対比が面白いですね。

全学連の昔ありけり虎落笛  餡子
○(泉)そんな時代もありました。昭和は遠くなりました。
○(アネモネ)ほんとそうでした。「虎落笛」がいいです。
◎(春生)荒波を乗り越えてきた人生でした。全学連の時代も心の宝です。

年の市肩で風切る啖呵売  藤三彩
◎(幹夫)師走ならではの景、「男はつらいよ」寅さんを連想しました。まがい物には要注意!
○(珠子)寅さん!現代ではデパートなどの実演販売でしょうか。一見スマートで紳士的な言葉ですが、実はかなり計算された言葉の並び。商品を操る手先はまるでマジシャンです。
◯ (アゼリア)この威勢の良い啖呵を聞くと年の瀬を実感します。
○(あちゃこ)威勢のよさが伝わってきます。マグロ売りかしら?
○(まきえっと)威勢委がいいですね。
(選外)(道人)類想はありそうですが、中々の切れ味。

風を切り闇を劈く虎落笛  幹夫
◎ (多実生) 劈くの表現が虎落笛を言い切っています。

風花に歓喜した頃足袋に下駄  多実生

閉店の店主のその後虎落笛  アゼリア
◎(珠子)昨日、ここのお肉屋さんだったご夫婦は今はどうしているのかなと思ったばかり。虎落笛が厳しい世情を表しています。 
◎(道人)「その後」の使い方が巧い。

北風や人形と共に考える  ちせい
〇(藤三彩)何の人形かが考え落ちなのだろう。ロダンの像が寒そう

木枯らしや歩み叶わぬ獣道  仙翁

齢知らぬ風のカモシカ里に死す  道人
◎(仙翁)俗世ではない自然界の生き物たちですね。
〇(餡子)このカモシカは、どんな人生?だったのでしょうね。今や、熊までが里をうろつくようになりました。生態系がどんどん変化せざるを得なくなっている地球。山で死ねなかったこのカモシカの冥福を祈ります。  

雑詠
「芝浜」の改心腑に落つ聖夜かな  藤三彩
〇(瞳人)魚屋がクリスチャンになったか、と
〇(ちせい)季語は「聖夜」。予備知識が役に立ったのかもしれません。
選外(吾郎)あえて聖夜にしたのかなぁ…心情的にわからん。

自転車の触れて黄落いっせいに  まきえっと
○(吾郎)瞬間的に変わる景色が素敵。しかし、無事だったか?自転車(笑)

一年の思い出手繰り冬至風呂  アゼリア
○(泉)今年もいよいよ終わります。早いですね。冬至風呂が暖かい。
〇(藤三彩)もう十二月、身体の温もる風呂でつらつら思う幸せ
○(吾郎)やっぱり浴槽にゆったり浸かるのはいいやね。温泉いきたぁ~い!
○(ルカ) 手繰りがいいですね。
〇 (多実生) 冬至風呂で考える事はこの通りです。

奥津城は海の底なり開戦日  餡子
○(珠子)その遺児も後期高齢者であるわけです。
○(あちゃこ)オクツキを初めて知りました。海ゆかばの歌が浮かんできます。
〇(道人)「おくつきじょう」(しかも表記は「奥都城」ではなく「奥津城」)から「開戦日」への転換が巧い。
〇(春生)先の大戦で、まだ、海の霊魂底をさまよっている霊魂が・・・。
○(まきえっと)開戦日へのつなげ方がいいですね。

諌めない睨む焔新嘗祭  吾郎
〇(道人)回文句独特の諧謔性に加え、緊張感のある調べで、新嘗祭の特長がよく表出されている。

究極は食うことである鷹も人も  敏
○(幹夫)納得の哲学。
◎(泉)哲学的な俳句です。生きるために食う?食うために生きる?
○(珠子)食物連鎖のピラミッドの頂点には鷹、生態系ピラミッドの頂点にはライオン。人間はそれらを破壊しながら「食うこと」以上のものを限りなく得たがる残酷な生き物。
(選外)(道人)されど「パンのみに生くるにあらず」と云いたいですね。

空席は空席のままレノンの忌  珠子
◎(アネモネ)自然体がいかにもレノン。
◎(吾郎)措辞が超秀逸、誰もそこには座れない。永遠に勝つことのできないポールの想いたるや…
◎(ちせい)季語は「レノンの忌」。12月8日の空席が印象的でした。
〇(餡子)12月8日開戦日。そしてレノン忌。何時まで待っても空席なのが私にもあります。永遠にこの席は空席。  
◎ (アゼリア) レットイットビーですね。今聴いても心に響く歌詞が沢山あります。
◎(あちゃこ)私自身の誕生日に近いので、ジョンレノンの句を私も詠みますが、このような切なさの表現は出来ません。
○(まきえっと)空席は空席のままがいいですね。

行軍の踵(かかと)影踏む寒の月 幹夫
○(ルカ)今昔の戦争の影。
○(仙翁)開戦の日、十二月八日ですね。

煮凝や母には言えぬ父のこと  ルカ
〇(瞳人)いえぬこと、それは、何だ?
○(アネモネ)ありますあります。
〇(宙虫)煮凝りに父の秘密を見るという。言ってしまうとぐちゃぐちゃになるような。
◯ (アゼリア) 誰にでも言わずにおくことありますよね。
〇(春生)お父さんとの秘密? 

「有難う」言って言われて小春の日  多実生
○(幹夫)「ごめんなさい」と「ありがとう」って大切な言葉ですね。季語「小春の日」にも共感です。
○(ルカ)いかにも小春の一日。
(選外)(道人)小春日ならではのほのぼのとした景。出来れば毎日が小春であれば。

掃き寄せる猩々木の花の屑  アネモネ
〇(藤三彩)猩々木はポインセチアのこと。玄関などに鉢を置いているのだろう、暮らしが見える
○(仙翁)ポインセチアの花だが、この句には侘しさもありますね。

朝焼けの雲睨みおる野良の冬  仙翁
〇 (多実生) 野良には厳しく、鍛えられる季節です。

沈下する島とプライド細雪  あちゃこ
○(吾郎)この国はいつからプライドを失くしたんだろう

冬霧の街を会ひたき人のこゑ  瞳人 
○(アネモネ)助詞の「を」の切れがすごい!
〇(宙虫)静けさ。でき過ぎのようにも思うが、冬霧のなせる技として。

枇杷の花三側面から撮影し  ちせい

平和でも命は軽し開戦日  泉

目立つこと疾うに忘れて花八つ手  道人
〇(瞳人)そういえば、目立つこと、つい、やっていたなあ、あのころはと、苦いおもい
〇(ちせい)季語は「花八手」。自分のことかもしれないし、ペットのことかもしれないと思いました。
○(ルカ)大きいのになぜか目立たない、八手の風情がよく出ています。

夜を愛せば方舟が来る冬銀河  宙虫
〇(道人)冬銀河をずっと直視していたら徐々に光度輝度が増し、本当に心が落ち着きます。
(選外)(藤三彩)方舟と言えばノアの方舟。空飛ぶ方舟になったらしい

流星群見むとて霜夜の黙のなか  春生



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2 コメント

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ご苦労様でした ()
2019-12-25 10:48:42
まきえっとさん、句会当番のお役目ご苦労様でした。今後とも、よろしくお願いいたします。

今年一年、大変お世話になりました。世の中、いろいろありますが、句会が続くということは、ともかくも平和な世の中、ということでしょう。来年は広島カープの成績と、日本のラグビーがどうなるのか?これが気になるところです。
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Unknown (道人)
2019-12-30 15:19:16
宙虫さん 
まきえっとさん

御礼が大変遅くなりました。
一年間今年もお世話様でした。本当に継続は力なり、を実感しています。
来年もよろしくお願いします。

皆さん

色んな句評、毎回楽しみにしています。
佳い年末年始をお迎えください。

 
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