つづき
倍率を上げて見る秋雲流れ まきえっと
〇(あき子)流れる雲が、大胆に美しく迫って来る。
〇(瞳人)色のない風で見るとは聞いていますが、望遠鏡で秋を見るか
◯(道人)上五中七の措辞が個性的。下五の「雲流れ」はやや安易かも。
◯ (アゼリア) 私も望遠鏡が欲しくなりました。
飛蝗てふ己は吾にしがみつき 卯平
◎(仙翁)草と飛蝗の共生ですね。
○(あちゃこ)視点が個性的です。やや抽象的ですが、最後の砦は自分自身?
田力を得て夕空へ跳ぶバッタ 道人
〇(瞳人)なるほど米の力はすごい、瑞穂の国のバッタだ
○(泉)力強い俳句だと思います。
バッタ跳ぶ始業チャイムの消える野へ めたもん
○(卯平)幻想的な句。眼目は「チャイムの消える」。この野原、幻の中であろうか。「飛蝗飛ぶ始業チャイムの消ゆる野へ」であれば特選を考えた。
◎(道人)限界集落を詠っているのに何となく明るい。バッタの飛ぶ音、始業チャイムの余韻、静かな心落ち着く時空だ。
〇(まきえっと)チャイムってプレッシャーですね。
○(宙虫)音が消えて行く空間がいい。飛蝗の固い雰囲気も。
跳び疲れ飛蝗入り日に合掌す アゼリア
〇(仙翁)合掌しているようにも見えますね。
◯(道人)飛蝗にも一日の感慨あり。人間よりも真っ当かもしれない。
〇(めたもん)じっとしている飛蝗の形を、合掌の姿に見立てている所がいいと思います。
〇(あき子)跳び疲れた夕方の、しみじみした時間の味わいがあります。
近付けど逃げぬ飛蝗に屈む我 ちせい
◎(アダー女)そ〜っと近づき、静かに屈んで飛蝗との距離を縮める。さあ、そのあと飛蝗の様子を間近で観察するだけか、そ〜っと作者の手が伸びていくか?はてまた賢い飛蝗に逃げられるか?
稲の香の届くファミマに入店音 めたもん
〇(楊子)一面の稲穂、そしてその匂い、そしてどこにでもあるコンビニ。香と音のとりあわせがいいです。
〇(カンナ)情景が浮かびます。音を取り入れたのがよいと思います。
○(あちゃこ)五感を生かしてリアル。
沈黙を続ける水面秋暑し まきえっと
コンビニにもブランドありて栗おこわ アダー女
〇(あき子)コンビニも日々進化しますね。
○(泉)ユーモラスな俳句だと思います。
四つ足も雑魚も飛蝗も棲む田舎 幹夫
機は熟したり重力を蹴る飛蝗 珠子
〇(まきえっと)自由自在に遠くまで飛んでください。
◎(瞳人)飛ぶ前に、確かに蹴るね、うむ観察が鋭い、それも重力を、とはなあ
○(アダー女)飛び立つ機を待つ飛蝗の様子、息遣い(それさえ聞こえそう)「今だ!」と全力で自分の重さと共に飛び立つ飛蝗の姿が心の内まで見えてきてお見事です!
◎(ちせい)戦の前のような。蝗の大決断。
水澄むや石燈籠に火を入れて 春生
○(幹夫)1枚目の沼に浮かぶ石燈籠の写真が率直に詠まれている。
ペイ決済半信半疑の蝉の音 藤三彩
○(泉)習慣性の問題だと思います。
○(アダー女)わたしも息子に勧められペイペイなる支払いを何度かやってみましたが、その度に「これでいいのかなあ?ちゃんと間違いない値段が決済されたのかなあ?」という不安があり、最近はとんと使っていません。蝉の声が「ダイジョウブいやダイジョウブジャナイ」と聞こえてくるようで身につまされました。
飛蝗跳ぶさざ波ひとつ立たぬ池 宙虫
〇(瞳人)とはいえその力は微々たるもの、たしかに
〇(春生)飛蝗がこの世界の中心のように、飛蝗を凝視している作者。
コンビニは町の灯台月の船 あき子
〇(藤三彩)季語を「月の船」としたところが考え落ちでした。
○(餡子)村を支えるコンビニの句がありましたが、これも、町を照らす灯台と捉えて面白い。
〇(楊子)灯台と月の舟が重なる気もしますが。月の舟はもっといい季語があるかも。
◎(泉)詩情あふれる俳句だと思います。
○(卯平)上五中七の叙は納得。但しより共感を強くするなら若干作意的ではあるが「コンビニは村の灯台」だろうか。それは「月の船」と言う下五を棄てきれないからだ。
○(アダー女)全く日本全国コンビニのない町なんてあるのかしらと思うほどですね。この句の街ではない町は人口も少なく過疎化しつつある町なのか?町にたった一つのコンビニは夕方になると明かりがつき、月からの船もこの灯りを頼りに船がやってくる。船が町の人々を表現して居るようでもあり、幻想的な雰囲気で一気に静寂の中の光を感じました。
〇(珠子)小さな町のコンビニ。ぽつんと点る灯台。蟋蟀が鳴いてスイッチョンが飛び込んできて。舟形の月も美しい。平和。
〇(めたもん)空から見た町のコンビニは灯台のように見えるのかもしれません。
◯ (アゼリア) 地方の暮らしにもコンビニは欠かせなくなりました。比喩が上手だと思いました。
○(アネモネ)「町の灯台」がいかにもです。
◎(宙虫)何もない田舎の夜。コンビニの明るさだけが浮かび上がっている。やさしくもあり、ちょっと寂しくもあり・・・。
コンビニで済ます納税バッタ跳ぶ 餡子
〇(楊子)私の句も同想句でした。「済ます」がさらりとしていて好きでした。コンビニ納税は納得いかないのに便利さに負けてしまいます。
◎(あちゃこ)現代の暮らしをリアルに描写した一句。便利さというよりも、何とも言えない哀愁を感じます。
◯ (アゼリア)忙しい暮らしには助かります。バッタ跳ぶに手早く済ませられることが暗示されていると思います。
◎(アネモネ)手数料が安いし便利になりました。
常夜燈の水に澄みたる百日紅 仙翁
○(ちせい)何とも不思議なテイストの句。確かに水澄む秋になっても咲いて居る百日紅は有りますし、水澄む秋になってから咲き出す百日紅もあります。
戦いは意地の張り合いすいっちょん カンナ
〇(瞳人)そういうことか、ワンコ(負け犬?)の遠吠えには、なりたくないですね
◎(珠子)どれだけの命が奪われても・生活が壊滅してもやめられない意地の張り合い。いつどういう形で力尽きるのでしょう。スイッチョン!はオシマイ!に聞こえます。「すいっちょん」との取り合わせで頂きました。
◯(道人)争い事の絶えない人間社会を風刺するかのような季語「すいっちょん」の斡旋が巧い。
○(あちゃこ)確かに。リズムがいい。
○(アネモネ)笑いました。ほんとそうですね。
天高しコンビニに税払い込む 楊子
〇(藤三彩)納税は銀行か郵便局というのが普通のようだが家に近いコンビニで用を足すという処がそうなんだろうと思う。払えるお金があるのね。
○(餡子)私も、コンビニで納税の句を作りましたので、共感です。
鳥除けを池に渡して秋高し アネモネ
〇(春生)これで池の魚を鳥に狙われることもなくなった安堵。季語が心境を表わしています。
〇(カンナ)着想がよいと思います。
○(ちせい)貴重な魚を守る為か、糞害を防ぐためか。秋の空が高々と見降ろしています。
軽トラに飛蝗を乗せてポストまで 道人
○(幹夫)リズムが佳い。
〇(まきえっと)楽ちん、楽ちん。
○(餡子)長閑な田園風景。良いなあと思うけど、軽トラ乗れないし、虫は嫌いだし・・・。でもいいなあ。
〇(春生)飛蝗の多い村ですね。どこへ行くにも飛蝗と一緒。
〇(仙翁)軽トラには、いろいろなものが飛び込んできます。
〇(カンナ)面白い句。
○(宙虫)彼らの移動手段のひとつかもしれない!
駐禁のマークの薄き街残暑 卯平
〇(楊子)うすれた駐禁マークはいかにもあとをひく暑さです。意外なところに気づかれました。
〇(めたもん)あまりの暑さで駐禁のマークも薄くなってしまったようです。
コンビニに客なき村の残暑かな 泉
〇(藤三彩)暑いから日中は外へ出ない。今年の夏は台風が来て「残暑」がどこかへ行ってしまった感じがする
○(餡子)村に一つのコンビニでも、過疎化が進むと撤退となりますね。コンビニまで来られなくなる村人の老齢化。トラックで回る店に、助けられているところもあるとのこと。行く末が悩ましい。
〇(春生)暑さが厳しいので、買い物にも出てきませんね。
○(卯平) 類似感はあるが納得する句。残暑も悪くない。ただ全体として弛緩を感じる。例えば「客のなき村のコンビニ秋暑し」など省略を工夫出来ないだろうか。揚句では報告的では。
〇(カンナ)過疎の村でしょうか? 想像が膨らみます。
〇(めたもん)残暑と客のない村のコンビニとがいい感じに響き合っています。
○(宙虫)今年は残暑どころではないけど。動くものもいないのか。
お地蔵さまおつむの飛蝗にも慈眼 瞳人
◎(あき子)言葉の選択に、作者の慈しみの眼差しがいきわたっている。
〇(藤三彩)慈眼を「じがん」と読むのか「じげん」というのか、慈眼院の住職は「じげん」と読んでくださいという。
○(アダー女)お地蔵様は飛蝗を手で祓うことも出来ない不動なものですものね。「おつむ」の仮名表記にもお地蔵様の優しさが出ていて良いですね。
○(あちゃこ)説明調ですが、発想が面白いですね。
○(アネモネ)お地蔵さまの笑顔が見えてきます。
○(宙虫)ふっと微笑ましさに・・・・。
縋りつく蝗の目玉草の風 あちゃこ
〇(仙翁)飛蝗の目は、ちょっと力がありますね。
次回告知までお待ちください。
広島は未だに暑くて、九月末までは我慢でしょう。それにしても、「コンビニは社会インフラ」という記事がありましたが、現在の少子高齢化社会では、最も頼りになる存在だと思います。