こんにちは。
お待たせいたしました。
兼題:来
虚報癖透け来る紙面梨を剥く 瞳人
曼珠沙華来客のなき一軒家 ルカ
〇(春生)ちょっと寂しいけれど、毎年訪れる曼珠沙華が心を慰めてくれます。
◯(瑠璃)「曼珠沙華」の華やかさと「来客のなき」の対比が秀逸。
○(吾郎)曼珠沙華に埋もれた一軒家も詩情あり
来々軒の「来」を探して台風あと 宙虫
○(幹夫)過日西日本豪雨で隣り町の真備はハザードマップ通り未曾有の被害でした。大きな台風被害の様子が佳く詠まれています。
○(餡子)看板が吹っ飛んでしまったのでしょうか、流されてしまったのでしょうか。温かいラーメンが恋しい。
◯ (ルカ)ペーソスある、一句。
宿命と言えど襲来台風禍 多実生
〇(藤三彩)宿命にならないように防災対策をしているんですが・・
○(泉)今年は地震、台風、豪雨と災害が多い夏でした。台風はまだ発生していますね。
秋霖は出来損ないの我にも降る 仙翁
〇(宙虫)「出来損ないの」が意外に面白い。下五がちょっと残念かもしれない。
○(ちせい)季語は「秋霖」。自己卑下の中にも明るい気風が満ちよと言う意欲があるのだと思いました。
野分来てタンカー突つ込む波浮港 幹夫
◯(アゼリア) 油漏れなかったでしょうか? 汚染が心配です。
○(泉)関空は大惨事になりました。台風は怖いですね。
秋虹やかの寅さんの還り来る 敏
○(豊秋)中七の「かの」が気になるし、秋虹では少々甘いかなと思ったが、句全体が醸す景は、トラさんファンを自認する者として十分に共感できる。虹に込めるトラさんへの追悼。新しいトラさん映画を期待している。
◯(瑠璃)そうだなと頷いてしまう面白い句です。
(選外)(藤三彩)渥美清の俳句「お遍路が一列に行く虹の中」「秋虹」ってなんかちがうような
芒野や風来坊の仕込み杖 泉
◯ (アゼリア)颯爽と芒野を歩いている景が見えてきます。
○(豊秋)勝新太郎の座頭市そのものだ。あまりにもストレート過ぎるとは思ったが、やはり季語だろう。少々中七とのつき過ぎが気にはなる。
膝に来る夏痩せの猫濁暑なり 瑠璃
◎(泉)本当に今年の夏は猛暑でした。猫も人間も痩せますね。
来し方の秋の日暮となりにけり 豊秋
〇(仙翁)来し方の、分かったようで分からないようで。
雁来紅煙しづかに登り窯 アネモネ
◯(アゼリア)秋の静けさが伝わってきます。
◎(幹夫)葉鶏頭は、雁が来る頃に葉が色づくので雁来紅ともいうのですね。色鮮やかな雁来紅と静かに昇る登り窯の煙・・・よい取合せですね。
○(餡子)どこの登り窯でしょうか。何とも風情のある大好きな景です。好みかもしれませんが「雁来紅や」として「かまつかや」が好きです。
◎(藤三彩)秋気の冷え込みが窯入れの始まり。いい感じで焼けるといいな
◯(瑠璃)窯場に雁来紅が咲き、秋の訪れを感じる。山野辺の情緒ある風景が浮かびます。
◎(まきえっと)出来上がるのが楽しみにです。しっとりとした秋の気配を感じます。
来来軒穂先秋さ本家イライラ 吾郎
〇(まきえっと)ラーメン屋で並んで待っているとき、ぐずぐず食べている人を見るとイライラしてしまいます。
来ぬ人を待つ秋冷の銀の鈴 道人
○(敏)東京駅にある待ち合わせ目印の「銀の鈴」。初めて見たときはその大きさに驚いたものですが、あれくらい大きくないと目印にはならないだろうと納得。「来ぬ人を待つ」と「秋冷」がひびきます。
○(餡子)藤原定家の「来ぬ人をまつほの浦のゆうなぎに・・・」を思い出しました。この作者も「身も焦がれ」る様な思いで、東京駅のあの銀の鈴の前で待っているのでしょう。お会いできましたか?
◯(アネモネ)東京駅の銀の鈴、懐かしい。
〇(宙虫)待ち合わせ場所に来ない人。雑踏の冷やかさが伝わる。
選外(豊秋)いや、実にいじらしい。メールか電話で待ち合わせしたのは東京駅の銀の鈴。いや、本当にいじらしい。お上りさんとして、そこしか場所が思いつかなかったのだ。しかし、それでも来ない。秋冷の中それでも待っている作者のいじらしさ。男に騙されないように!!!
炉火恋し昔ながらの来々軒 藤三彩
秋簾女将の影の行き来して 春生
〇 (多実生) 暖簾に誘われたのは、いつの日か遥か彼方です。
〇(珠子)抑えた表現が魅力的。こういう所にはあまり縁のない私です。
◯(瑠璃)浮き浮きする場面です。
◯ (ルカ)いかにもありそうな景。いつも女将は忙しい。
○(ちせい)季語は「秋簾」。影に着目したのが秀逸だと思いました。
雁来紅やアイヌの名持つ川の淵 珠子
〇(仙翁)雁来紅は、北海道にもあるのでしょうか、そんなことはどうでもいいか。
〇(春生)アイヌの歴史の刻まれた土地と雁来紅、よく合っています。
○ (ルカ)アイヌの名を持つ地名、あちこちにあります。かつての地の父祖を思います。
来てしまふ秋の蝶にも葉は眩し ちせい
雁渡し時差ある地より訃報来る アゼリア
○(餡子)時差のある地ですから、日本ではないということですね。異国で亡くなられる。どんな事情のある方だったのでしょうか。雁渡しが一層侘しさを感じさせます。
◯ (ルカ)素直に詠まれているので、余計哀しみが増すようです。
(選外)(道人)訃報は今回の北海道胆振東部地震の被災地からでしょうか?だとすれば季語「雁渡し」が佳いですね。「時差ある地」は曖昧かも?
花野来て花野へ帰る考と妣 餡子
◎(敏)上句の花野に来たのは作者、彼の世の花野に帰ろうとしているのは、作者の亡くなられたご両親だろうと読みました。彼岸の花野の中で彼の世を幻視する作者の心を感じました。
◎(道人)「考と妣」は何となく想像はしていましたが「父と母」なんですね。花野のリフレインが心に響く。
◎ (多実生) 花野は夢の中で、現れるのは断然母です。
〇(藤三彩)何気なく「ちち・はは」句。親がいつも仲がいいとは限らないが
小鳥来るエンドロールに拭く涙 まきえっと
○(敏)ここには、エンドロールとなっても席を立たず、見終わった映画の余韻に浸っている作者がいます。季節を感じさせる「小鳥」の声が、エンドロールに取り込まれていたのかも知れません
◎(アネモネ)アメリカングラフティを思い出しました。
テーマ:食べ物
源流のたどり着く海秋刀魚焼く まきえっと
○(敏)ことしの秋刀魚は豊漁とか。長い旅の末に海にたどりついた源流の一滴と、水揚げされ火に炙られている一尾の秋刀魚。匂い立つような邂逅がここにはあります。
この世去る前の口には走り蕎麦 敏
〇 (多実生) 素朴な欲望ですが、走り蕎麦は良いです
デカンショを語り唄いし芋の秋 道人
○(豊秋)これは芋焼酎であろうか。デカンショを唄うのはわかる。しかしデカンショを語るにはそれなりの覚悟が必要。その覚悟、果たして作者にありやなしや。
秋雨や馬尻を充たす外来魚 豊秋
ドーナツと隣り合わせのおでん秋 瑠璃
◎ ( アゼリア)そう言えばコンビニのおでんに目がいくようになりました。秋なんですね。
みちのくの訛りにも慣れ衣被 幹夫
○(敏)東北の大地に育まれた衣被。覆った皮を剥くとまっ白な肌のあらわれる、そのなんとも色っぽい食べ方にも、方言同様慣れてきたようです。
◯(アネモネ)例えば鹿児島から弘前に嫁いだお嫁さん・・・。
〇(珠子)衣被とみちのく訛の雰囲気が合っています。が、みちのく育ちの私が衣被を知ったのは関東に来てからです。
〇(春生)土着の気持ちが芽生えてきたのが季語「衣被」と響き合っていますね。
○(豊秋)嫁いできたのであろう。季語がそれを語っている。作者の境界が滲み出ている。これが赴任しての同じ心情であれば、季語は他の季語(例えば雲の峰)との衝撃が詩情を醸すであろう。その場合の鑑賞はもっと若々しくなる。
◎(瞳人)左遷の身という言葉を思い浮かべました。そうじゃあないでしょけど
◎(ちせい)季語「衣被」。安心感が充溢し、芋を堪能している。
○(吾郎)単身赴任か、しかし美味そう
〇(まきえっと)訛りになれてのホッとした感じと衣被のツルっと感と素朴な感じが合っています。
菊膾小鉢「もってのほか」という 珠子
肩の凝る話転がる衣被 餡子
〇(仙翁)凝る、転がる、面白いですね
〇(道人)カウンターだけの居酒屋。呑んだ勢いでの堅い話は日常茶飯事。折角の「衣被」なのでたまには月にまつわる風情のある酔い語りをしましょう!
○(瞳人)ははは、そういうことって、あります
秋風にピザを頬張る被災の子 アゼリア
今日の菊わさびにしやう油にごらせて アネモネ
趣味でしょと搗栗残らぬひと口分 藤三彩
周囲にはオクラ置かれるカレーかな ちせい
秋刀魚食う暴走族は喧しき 仙翁
◯(アネモネ)取合せがなかなか。
新蕎麦や捨てし家業のあぢ啜る 瞳人
星涼し父に貰いしチョコレート ルカ
○(敏)「父に貰いしチョコレート」で、作者の幼い頃の思い出の一句ということがわかります。おそらくお父さんは亡くなられているのでしょう。爽やかな星空を眺めての述懐と思われます。
○(幹夫)幼き頃の思い出・・・おんぶされながらでしょうか。「星涼し」がいい塩梅ですね。
〇(春生)季語「星涼し」に父への思いが込められました。
○(ちせい)季語は「星涼し」。チョコレートと星の照応が美しいと思いました。
大秋刀魚拝む南無顔満載だ 吾郎
〇(道人)今年の秋刀魚は豊漁だとか。秋刀魚を食するときはなぜか心の中で拝みたくなるのは不思議ですね。わたしだけでなくて良かった!
白桃や顎に蜜を滴らせ 春生
〇 (多実生) 白桃の味と匂い、滴らせが効いています。
被災地に秋刀魚届けるボランティア 泉
◎(瑠璃)心和む風景です。暖かさが伝わります。
来々軒の餃子が浮かぶ秋夕焼け 宙虫
朗報は今年秋刀魚の当たり年 多実生
○(幹夫)昨年は不漁。冷たい水が日本沿岸に入り込んでくれることを祈りつつ今年そろそろのの豊漁を待ちたいと思います。
〇(藤三彩)北海道の大漁の報が地震で一転してもう今年はダメかと思った。「全系停電」ありえない。
雑詠
シベリウス自転車を漕ぐ秋はじめ 瑠璃
二百二十日古新聞を一括り まきえっと
◯(アネモネ)二百十日がいいですね。
〇(珠子)こういう句は好きで、素直にストンと入ってきます。
〇(藤三彩)厄日には余計な情報や要らない資料は全て廃棄する。なかなかそれができない
(選外)(道人)息災を祈って、気分一新。
ひとの感触ないてのひらの赤とんぼ 宙虫
〇(道人)言いようのない孤独感が「赤とんぼ」で救われている。
鰯雲果てる所に幸ありや 泉
○(餡子)一読、細谷源二の句が浮かんだ。「地の涯に倖せありと来しが雪」また、カール・ブッセの「山のあなたの空遠く・・・」も。幸のあった人、見つけられなかった人、時代は変われど、思うことは同じ。雄大な鰯雲を見ているとこんな気持ちになります。
○(瞳人)支那帝国というところに、鰯雲は来ないでしょうね。幸せもない…
何入れよ九月の深きスープ鍋 ルカ
○(泉)何だか、とても美味しい料理が出来そうですね。
◯(瑠璃)食欲の秋。お鍋に何を入れても美味しいですね。
〇(宙虫)深きがいい。
○(吾郎)なんか美味しそうで楽しい
角番の相撲大関その心中 藤三彩
○(泉)角番の大関は、大変ですね。その心中は・・・?
菊正のコツプ半分志ん生忌 瞳人
◎(珠子)お酒が好きだとこういう句ができるのだからうらやましいなあ!半分だなんて嘘。
◎(豊秋)菊正は「菊正宗」。辛口の酒として選者を含めて愛好者は少なくない。志ん生も部類の酒すき。一升瓶を小脇にして志ん生の落語を聞きいるとはこれほど贅沢はない。羨ましい限りである。忌日としての季語を十分に踏まえている。忌日は他の季語と抱き合わせでも句としては成り立つと言う人もいるが、やはりその人を偲び、かつ、そのバックの四季から醸される詩情を感受するためには、忌日を季語としてきちんと消化した上でないと一行詩は成り立たない。だから他の季語との衝撃は成り立たない。
○(ちせい)季語「志ん生忌」。酒に酔いながら志ん生の落語気を聞きたい、そんな願望もあるのかもしれません。
◎(吾郎)いいよいいよ、寝かしといてやんなよ──志ん生と高田渡くらいだな、そう言われたの
警邏棒ついて愁思の衛士ふたり アネモネ
秋の川釣り糸だけが捨てられて ちせい
小鳥来る海を見下ろす文学館 アゼリア
新しき自転車を買ふ夜学の子 幹夫
◯(アゼリア)私も人生最後の自転車を買おうと思っています。若さが眩しいです。
◎(餡子)涙が出ますね。バイトをしながら夜学に通っているのでしょう。少しずつためたお金で買えたのでしょうか。母校に今でも夜間中学があります。ちょっと、用事があって行ってきたのですが「勉強したい!」という気持ちに圧倒されました。
◎(春生)働いてかった自転車が快適に夜学校につきました。勉学にも励みが付きます。
○(ちせい)季語は「夜学」。新しい自転車でさらにモチベーションが高まるのかもしれません。
虫の音の子守唄なる野良寝かな 仙翁
〇(道人)無為自然の境地。かくありたいけれどコンクリートの世界に染まった身としては無理でしょうね。
田の色を選りて群れなす赤とんぼ 道人
〇(仙翁)赤トンボは、確かに田んぼを選びますが、色ではないでしょう。
◯ (アゼリア) 観察が鋭いです。
〇 (多実生) トンボの群れる条件は飛ぶ虫などでしょうが、田の色選りてに詩情を感じます。
母の目が栗を数える栗ご飯 珠子
○(幹夫)栗を数えているお母さんの表情が目に浮かんできそうです。
〇(藤三彩)数えられるように形を残すように栗を剥くのは難しいのだ
○(泉)お母さんは大変ですね。ユーモラスな俳句だと思います。
○(瞳人)子どもは、よく見ています、記憶はいつまでも
〇(まきえっと)皆に公平にでしょうか?
満月や頬骨高き鬼瓦 春生
◎(仙翁)満月と鬼瓦、何か面白い景色が見えます。
○(幹夫)屋根の上に高々と上がる満月の景が佳く詠まれています。
〇(珠子)鬼瓦は確かに頬骨も高い。目や牙などもっとインパクトがあるのに頬骨に眼をつけたところが非凡。満月に陰影が濃かったのでしょう。
○(豊秋)よく観察した上で湧き上がってきた句。季語との取り合わせで妖気と緊張と、一種の気品さえ感じる。この句、男性でなければ詠めない句。
◯ (ルカ)月光に煌煌と照らされる鬼瓦の貌が、浮かんできました。
◎(宙虫)月光が照らす鬼瓦がいい感じ。瓦の表情が見える。
〇(まきえっと)月光があたる鬼瓦。頬骨から陰もできていい感じです。
(選外)(道人)鬼瓦と満月以外なにもない世界。存在感のある句です。
名画座の跡地に鳴いて月鈴子 敏
◯(アネモネ)月鈴子がきれい。
○(吾郎)シネコンにはない味わい
(選外)(藤三彩)ありえませんこの光景は。鈴虫は飼うのも難しいのに自由に自活できるわけではない。失せしものへのアイロニー。
明後日にわかれ告げたる柘榴かな 豊秋
〇(宙虫)未来と決別する。いい方向に向かえばいいが。
門灯を消し虫たちに返す闇 餡子
〇(仙翁)今、窓を開ければ、虫の声が響きます。
〇(道人)「虫たちに返す闇」の措辞が巧い。
〇 (多実生) 虫に闇を返すがユニークです。
〇(珠子)闇の好きな虫は多いのでしょう。虫たちも宵の時間帯が賑やかです。早めのご帰宅を。
〇(春生)この優しさが好きです。俳句もすっきりしていて、良いです。
◎ (ルカ)虫たちに闇を返す、というのが新鮮。
○(吾郎)おお、これは粋な計らい
〇(まきえっと)「虫たちに返す」がよいですね。
良血の出番は秋の新馬戦 多実生
○(瞳人)下見所で目を凝らす友人をさきごろ失いました
檸檬田はニヒルある日に破談洩れ 吾郎
〇(宙虫)秘密にできないのは人間の習性。ニヒルな檸檬がいい味している。
次回をお楽しみに
広島はやっと涼しくなって来ました。冬もイヤですが、今年の夏は本当に暑かった。やっと秋が来る、と思うとホッとします。
広島カープの優勝は、目前で今夜かも知れません。それと、大相撲で稀勢の里が何とか復活してくれました。それにしても、スポーツ選手は本当に大変です。