一人居の屋根を覆ひて柿たわわ 春生
◯(アネモネ)もうだれも捥ぐ人の無く。
◎(瞳人)だれも取る人いない、皆、年取るんだ
〇 (多実生) 剪定しないでいるとこんな光景になります。
二個ぐらゐ盗つてよささう柿たわわ 幹夫
○(泉)「二個ぐらゐ」とは、遠慮していますね。
◯(アネモネ)もう二個でも三個でも。
○(餡子)豚や合鴨や果物など大胆に盗む集団がニュースになっていますが、この柿くらいは許されるでしょう。
〇(ちせい)季語は「柿」。ユーモラスな発想で、「柿たわわ」で着地しました。
〇(楊子)俗人大好きです。自然が美しいのは人が貧しい心をもっているからかも。
〇(宙虫)たわわな柿の姿いまや山里の景にすっかりなっている。
木の下に擬態するもの熟柿かな ちせい
○(メイ)「擬態」によって異次元の世界が見えてきました。
柿の実を一つ残してカラス啼く 仙翁
○(あちゃこ)木守柿としての柿の実。カラスの意志では無いのでしょうが。裏寂しさを感じます。
◎(道人)人ではなくカラスが残した柿の実一つ、何か深い意味がありそうだ。
想像のままの晩秋先急ぐ まきえっと
平らげる秋や名代の青暖簾 あちゃこ
○(まきえっと)由緒正しい感じがしますね。
○(敏)「平らげる秋」に名代の季節料理の素晴らしさが想像されます。
柿もげば列車が走る鉄道あと 宙虫
最果ての森置き去りの熟し柿 敏
〇(ちせい)季語は「熟し柿」。最果ての森とは発想がいいと思いました。
柿たわわ同級生という老人 珠子
〇(春生)幼馴染ももう年を取ってしまいましたね。昔が偲ばれます。
〇(藤三彩)気がつけばみな、おじ・おばの顔
◎(仙翁)同級生という老人、どういう場のどういう出会い、関係なのか。
〇(楊子)オチが・・・・。おもしろい。
○(まきえっと)同級生という老人が面白いです。」
◎(メイ)見かけは老人でも自分の中には若さもあるのだから、老人に同級生と名乗られたら驚くのだ。たわわな柿で心のバランスを取り戻す。
○(卯平)同級生と話している私も貴方と同じ老人だ。柿も同感している。
◎(宙虫)お互いにそう思って会うんだろうな・・・。自分もその中のひとりと実感しなくては。
秋深き老舗の暖簾にオーラかな 泉
〇(藤三彩)老舗といわれる料亭や宿などがコロナ禍で危ない。家族経営が守られますように。
村里に国勢調査柿すだれ アゼリア
○(泉)国勢調査、お互いに大変です。
◎(幹夫)5年間の間に過疎化のまた進んだ村の軒にびっしり柿すだれは、輝く村の大きな魅力。
〇(珠子)ネットでちゃちゃっとできる時代ではありますが、柿すだれの景には国勢調査員が似合います。
◎(餡子)全国津々浦々国勢調査はゆく。過疎の村にもやってくる。
〇(楊子)自然と国勢調査という異質で平等なものに感じ入りました。
○(メイ)柿すだれの一軒ごとに、あまねく国勢調査が行われる国に住んでる私達。
〇(卯平)過疎化の中、今更国勢調査など。。。。干し柿を潜り抜けてくる調査員を迎える詠み手。
〇(宙虫)この家に住んでいる人がいる証の柿すだれ。
(選外)(道人)着眼点が佳い。国勢調査員らしき老人が何人かいましたね。村里らしいのんびりした景。
紅葉づれる庭の千草も柿の木も アネモネ
◯ (アゼリア) 紅葉づれるの措辞に惹かれました。
この店のこの饅頭が好き里は秋 餡子
〇(瞳人)慶応元年創業という水ようかんを、おいしく食べたなあ。きっと古いんだね、この饅頭
〇(楊子)話し言葉が効いています。このような暮らしはきっと幸せです。
○(まきえっと)「好き」が好感持てました。
〇(宙虫)なんでもない饅頭の人気店がある。
ふる里に知る人絶えて柿たわわ めたもん
○(泉)この様な人は、多いことでしょう。
○(あちゃこ)変わりゆくものと変わらないものを改めて思い知るこの頃です。
〇(瞳人)柿は日本人のこころに、どうしても来るね
〇(春生)故郷を訪ねても知る人がいなくなった寂しさ。浦島太郎の心持。
○(メイ)たわわな柿だけが子どもの頃を思いださせてくれます。
○(餡子)まだ絶えては居ませんが、疎遠になっています。柿たわわが寂しい。
〇 (多実生) ちょっと長く生きると句の通りです。
甘と渋たわわに偏固に狭庭柿 瞳人
廃線のうわさ十年山粧ふ メイ
○(泉)廃線になると、困る人が多いですからね。
◯(アネモネ)無くなったら淋しいでしょうね。
○(幹夫)「廃線」の暗と「山粧ふ」という明が対比して詠まれています。
〇(珠子)廃線のうわさはうわさで終わってほしいものです。道路が通るなどといううわさは十年も二十年も続きますよ。
◎(春生)過疎化が進んでいく地の自然の美しさ。何とか過疎をくい止めたいですね。
◯(道人)日本中廃線対象路線が目白押し。何とか頑張って欲しい。
○(餡子)栄枯盛衰は仕方の無いことなのであろうが、有ったモノが無くなるという寂しさは耐えがたい。山は変わらないのだが。
〇(藤三彩)利用客の減少で軒並み交通電鉄各社が赤字の報。うわさのうちならまだよかった
○(まきえっと)このままずっと走ってもらいたいです。
〇(めたもん)廃れゆく過疎地の時の流れを中七「うわさ十年」が言い当て、それを下五「山粧ふ」が受け止めています。十年を経て変わらない秋の山が美しい。
秋耕を窺う鳥の目獣の目 藤三彩
○(あちゃこ)自然は厳しくもあり、温かくもあり…野生の存在感。
〇(珠子)鳥は単純に慌てふためく蚯蚓や虫を狙うのでしょうが、獣には作物のおこぼれを狙うだけはない、他の思いもある気がします。
〇(ちせい)季語は「秋耕」。落穂拾い的な魅力が、動物たちに。
○(メイ)冬に向かう生きものの必死さが「窺う」に表現されている。
◎(敏)田畑の土中の昆虫等を窺う鳥、その鳥を狙っている野獣(その獣を人が狙っている?)、食物連鎖の一環を見ているようです。
〇(宙虫)それぞれの目はそれぞれの見え方でこの秋耕をみている。
一両の復興電車柿の秋 道人
○(幹夫)「復興のシンボル」三陸鉄道リアス線の景が素直に詠まれています。
〇(珠子)コロナ禍からも抜け出したい。電車に乗って出かけたい。
〇(春生)震災地の復興電車の走る風景。郷愁が漂っています。
◎(ちせい)季語は「柿の秋」。一両の復興電車が柿の秋を盛り立てていると思いました。
〇(藤三彩)「あまちゃん」の三陸鉄道リアス線全線運行再開、よかった
〇(仙翁)ささやかな復興、ここから始めましょう。
◯ (アゼリア) 復興電車の明るい響が希望に満ちています。
秋色を抜けるローカル線の窓 仙翁
○(幹夫)写真の景がリズム佳く詠まれており共感です。
◎(まきえっと)「秋色を抜ける」がいいですね。
強父論羨ましくも柿実る 瞳人
(選外)(道人)強い父へのノスタルジャ。
変わらずの甘酒饅頭小春かな 藤三彩
○(まきえっと)「変わらず」って大変なことですね。
〇(めたもん)小さいころから食べ慣れた甘酒饅頭は、贅沢なスイーツなどにない「小春」にふさわしい味がします。
柿熟れて謀などありませぬ 楊子
〇(瞳人)さ、日本シリーズだ、名将よ、とことん謀を巡らせてくれ、柿食いながら観戦だ
◯(道人)熟柿には謀議など絶対にないでしょう。上五は今回よく使われている「柿たわわ」の方がいいかも。
〇(仙翁)はかりごと、止めましょう。誠実に。
◎(めたもん)そう来ましたかという感じで、分からないまま何故か納得。柿が熟れていくのは極自然で謀が入り込む隙などないのです。時代劇のような言い方、様々な読みができることも楽しい。
生ひ立ちを語る仲間や熟柿吸ふ 春生
◎ (多実生) まだ、こんな友が一人居り貴重な存在です。
○(卯平)まあ、貴方の生い立ちなどそんなに嘆いてももう先はないのに。熟っしょ(熟柿=鑑賞者地方の方言)でも食べなはれ。
ふる里や授かり賜ふ秋日和 卯平
〇 (多実生) こんな日に出会えれば最高です。
〇(ちせい)季語は「秋日和」。お天道様への感謝ですね。
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