つづき
たむろしたカフェは穴蔵冬の猫 宙虫
○(泉)今は遠い青春の思い出。猫がいたのかな?
◎(アダー女)学生時代、仲間と文学論はたまた恋愛話。さしずめ吉祥寺北口の「穴蔵喫茶店」みたいな感じかなあ。だが、なぜか私はこの句を読んでぱっと思い浮かべたのは小樽の「海猫」というカフェ。というより軽食屋。残念ながら今はもうない。ツタのからまる煉瓦建ての。昨今はセルフカフェが主流で昔懐かしいカフェも少なくなって淋しいです。
○(卯平)わかりすぎる句で詩情はどうであろうか。
(選外)上12の措辞は中々。「冬の」が残念。
春隣珈琲店に脱稿す 春生
〇(楊子)「に」の詩性をいただきました。短詩文芸の魅力です。
〇(珠子)「喫茶店での脱稿」カッコいい!人生の中で一回ぐらい言ってみたかった。
○(餡子)コロナ禍になってからは、こういうこともなかなか出来なくなりました。早くこういう状態が戻りますように。
モカの香や豆打ち足らぬ疫の年 瞳人
春遠し昭和も遠し茶を喫す 敏
〇(藤三彩)「着たきり雀だね」と言ったら昭和20-30年の言葉とwebにあったとか。昭和はそんな昔じゃないのにね。
〇(瞳人)平成が終わってみると、その感まことに深し
アリバイの黒き珈琲雪女郎 幹夫
〇(楊子)ミステリーいっぱいの雰囲気がいいです。
○(泉)ミステリー小説のような俳句ですね。黒と白の対比ですか?
◎(道人)珈琲の色からミステリーの謎に迫る感性と下五のどんでん返しに脱帽。
○(あちゃこ)犯罪はほどほどに?ミステリアスですね。
◎(仙翁)怪しく、妖しく、面白いですね。
○(卯平)ブラック珈琲がアリバイとはどんな状況であろうか。色々と想像してみたが読み手の理解を超えた景。だからこそ誹諧味を感じる。但しこの季語では(白と黒と言う)理が先行してしまったのでは。
◎(めたもん)雪女郎が珈琲を飲むかはさて置き、飲むならブラックでしょう。「雪女郎」と「珈琲」を「アリバイ」がつなぎ、ミステリアスで妖しい雰囲気です。
〇(宙虫)黒がこの句の怪しい雰囲気を作り出す。
バリスタの注ぐ一滴冬深し メイ
○(幹夫)コーヒーサーバー「バリスタ」から中7に共感です。
〇(珠子)明けない冬はない。春はそこまで。
◎(ルカ)光景が目に浮かびます。熟練の技師。
◯(道人)「一滴」にこもる珈琲への愛が深い。
○(仙翁)コーヒーの雫、じっと見ますね。
〇(まきえっと)淡々と注ぐ姿がいいですね。春が待ち遠しいです。
梅が香や恋し心をモカ籠もり 瞳人
星凍てり死角のようなカフェの隅 アダー女
カフェ探す液晶地図に雪ひらり めたもん
○(アダー女)寒い!待ち合わせのカフェの場所をスマホで検索。あ、スマホの画面に雪がひとひら!寒いわけだ!それとも寒くて仕方ないので熱いコーヒーを求めて詮索している一人者かな?
○(餡子)液晶地図が良いですね。どっさりとマークが出てきそうです。早く見つけておいしい珈琲を。
○(あちゃこ)雪ひらりがいいですね。今時な一句。
◎(メイ)いまここの、普通の生活の美しさを感じます。
〇(宙虫)カフェ、液晶、現代そのもの。雪がいい雰囲気で降る。
毛衣を纏い死角の街にいる 楊子
◯(道人)ミステリーの一場面のようだ。
(選外)(アダー女)毛衣ってセーターのことですよね。この場合毛皮のほうがピタリとくる気がしますが。その方が死角の街に立っている謎めいた女の雰囲気がして良いような。「纏い」とも合うし・・・あ、そうすると字数が合わないから「毛皮纏い死角の街に立つ女」とか。勝手なこと言ってごめんなさい。
待春の待ち合わせまで二十分 まきえっと
〇(瞳人)人と春と、両方待つ間の一杯、それがうらやましい。
◯(ルカ)さて、その20分でミステリーでも。
◎(餡子)今の子達は、昔のような待ち合わせの仕方をしないようですね。すべてスマホが解決してくれる。便利なようなロマンが無いような。この方は、どなたとの待ち合わせでしようか?何となく昔っぽい。
樽の豆モーニングケーキと冬の鳥 ちせい
この先のまだまだ読めぬ睦月果つ 敏
〇(藤三彩)日々の感染者数を追っていますが、一般外来が止むことになると心理的に困る。
雪が降るブルマン見つめ別れの黙 アダー女
○(泉)映画のラストシーンの様です。
○(卯平)別れる場面だから「ブルマン」だったのか。そうすと少々あざとい状況。別れる時喋りまくる場面は先ずないだろう。だから下五は報告でしかないのでは。
春めくや斜め読みするミステリー 餡子
◯(アネモネ)途中から早く結論を知りたくて。
〇(楊子)外が気になる春到来です。
○(幹夫)ミステリー小説の写真の景がリズムよく詠まれていて共感です。
○(あちゃこ)実は私も同じ。話の展開が気になり、つい斜め読みしてしまいます。
〇 (多実生) 私も、会話だけ読んだりします。
〇(ちせい)ミステリーの定義とは何だろうかと思いました。そんな疑問が斜め読みをさせたのかもしれません。
起死回生図る飲食鬼は外 藤三彩
〇(メイ)閉店のニュースばかりのこの頃、起死回生を!
チビチビと冷めたコーヒー日向ぼこ 多実生
○(仙翁)寂しさか、ゆったりしているのか。
ケーキはたっぷり珈琲は濃く春動く アゼリア
〇(藤三彩)ケーキはモンブラン、コーヒーはマンデリンがいいな。
◎(泉)春動く。躍動感に溢れた俳句だと思います。
〇 (多実生) 濃いコーヒーは苦手ですが、ケーキが有ればこの通り。
◎(春生)春の訪れを確実に詠んでいます。
ブラインドの隙を寒月モカ香る 珠子
〇(楊子)密室に居てもモカの香りでばれそう。寒月は心の寒さかな。
○(アダー女)カフェの片隅で好きなモカコーヒーのチョコレートのような甘く力強い香りに酔いながらふと窓に目をやるとブラインドの隙間から冷え冷えと冴え渡った寒月が。至福の一人の時間。ちなみに私はキリマンが好き!
〇(めたもん)上五・中七の「ブラインド」「寒月」という硬質なものと対比的に、下五で「モカ」の香りが温かく柔らく漂います。
〇(メイ)ブラインドと寒月とモカの空間が心地よい。
ふつふつとコーヒーケトル春を待つ メイ
◎(珠子)しみじみと静かに春を待つ心。春は必ず来ます。一年間会えなかった友たちにももうすぐ会える予感。
◯(道人)「ふつふつ」の擬音と「待春」の気持ちが呼応し合っている。
◯(ルカ)ケトルも人も、春を待ってます、
○(敏)「ふつふつ」に実際の音を感じました。
四畳半ごと霜夜のタンゴ豆を挽く 宙虫
珈琲を熱うせよ窓に初桜 春生
○(卯平)マスターに熱めの珈琲を注文し茶店の窓辺で独りを楽しんでいる詠み手の姿。季語で詠み手の心情が読める。
〇(メイ)何というか、気迫が桜に伝わりそう。
立春やドロップコーヒーおもむろに 卯平
〇(瞳人)コーヒーの愛好家というのが分からない、きっと愛酒家のことは分からないのだろうと言っておこう、温るめで立春を祝うその気持ちと一緒だな
◯(道人)いかにも「立春」
珈琲館の前に初荷の豆の樽 アネモネ
バリスタがブレンド当てる試験かな 泉
コーヒーの香や待春のエアポート 道人
◯(アネモネ)リズムの良さに魅かれました。
○(幹夫)句材に季語「待春」が適っています。
○(仙翁)コーヒーの香と待春、何処か似合いますね。
〇(めたもん)「エアポート」の開放的な景に珈琲の香が心地よく広がります。句のリズムにより、浮き浮きした感じが伝わってきます。
○(敏)緊急事態宣言解除を心待ちする空港を想像したのでしょうね。
〇(メイ)写真から適度に離れていて、すっきりした香りがします。
〇(宙虫)コロナ禍ですっかり見なくなった景色。
三分間北の点滅の冬の星 幹夫
水仙の木陰古びた喫茶店 仙翁
常連の席ひとつ空け春隣 ルカ
◎(藤三彩)昼休憩に喫茶店に来る女性がいる。知った者同士暗黙の裡に彼の席は空ける。
◎(楊子)この遠慮や心配りが憎いですね。これが通の常連でしょう。いい雰囲気が季語を生かしています。
○(幹夫)春隣の景、作者の優しさに共感です。
〇(珠子)その常連さんもあなたの席を空けて坐るのでしょう。
◯(道人)季節も席も隣。写真詠として春隣の使い方が巧い。
○(餡子)常連と分かっていらっしゃるのですから、作者も常連ですね。
○(仙翁)いつもの喫茶店、いつも出会う人の席でしょうか。
◎(敏)このお店でもソーシャル・ディスタンスと時短営業を実践しているようです。「春」そのものを「常連」客ととると、時局から離れて頬笑ましい印象となります。
◎(ちせい)カフェの雰囲気が間接的に伝わって来るのがいいと思いました。
〇(春生)良い予感がします。
〇(宙虫)喫茶店の句はなんとなくレトロな気分にさせられる。この句は喫茶店とは限らないが、いろいろな読みができる。
やっと春になって、新型コロナの感染が収まって来ました。しかし、ゼロにはならないから、辛いところです。感染する危険性は常にありますから・・・。喫茶店でミステリーを読んで、ノンビリ休みたい。