こんばんは。
お待たせいたしました。
この1年、ご参加いただきありがとうございました。
良いお年をお迎えください。
兼題:銀
柔道や胸に冷たき銀メダル 泉
(選外)(幹夫)4年にたった1度のオリンピックや世界大会においては、銀メダルや銅メダルだって凄いことに違いないのに、こと柔道競技においては、体操男子やレスリング女子などと同様、金メダル至上主義が拭えませんね。近々では、女子短距離スケートのみならず、フィギュアスケート羽生結弦&紀平梨花、卓球界では15歳張本&ひなみまペアの快挙、バドミントン世界ランク1位の桃田&女子ペア陣の層の厚さetc.そういった競技がどんどん増えてきたことは、日本人として心強く嬉しい限りです。
色放つ銀のさざなみ冬の湖 仙翁
銀鮭にまぶす粗塩暮早し アネモネ
○(吾郎)これは洋風の調理法とみた、旨そう。年末感あり。
〇(藤三彩)荒鮭があれば酒粕に大根・人参・牛蒡・里芋などの根菜入れた粕汁にそそられますが
◯(アゼリア)ムニエルでしょうか?今鮭美味しいですよね。暮早しの季語もぴったり。明日は冬至ですね。
◯(ルカ)粗塩がよく効いてます。
擦切れの銀色セエタ青春史 瞳人
◯(アゼリア)昔は品の良い物を選び、大事に着古すまで着ましたよね。
銀巴里にシャンソンありし碑聖樹立つ 藤三彩
〇(瞳人)ああ、そうでしたか、遠い昔のこと…
○(餡子)私も、若い頃?いきましたよ。丸山明宏が出ていました。そして「碑」も見ました。時代の流れを感じます。
人生は片道切符冬銀河 多実生
◎(泉)言われてみれば、その通りです。しかし、片道切符で良かった?
○(幹夫)そう。アラブの諺に「4つのものは帰ってこない。口から出た言葉、放たれた矢、過去の生活、そして失った機会。」とあるように、決して後戻り出来ぬ人生ですよね。余談ですが、大相撲先日弟子への暴力沙汰で引退を余儀なくされた貴ノ岩関の「もし相撲の神様がいて時間を戻してくれるなら、いつに戻りたいですか?」という記者からの質問に、貴ノ岩は「また…新弟子になりたいです。」と答えましたが、私は、彼自身の忸怩たる思いを感じざるを得ませんでした。冬の夜空にかかる天の川・・・身にしみる光を放つ冬銀河の季語にも共感です。
〇(珠子)出発したのだから終点まで生きるしかない。できるだけ健康で。
○(ちせい)季語は「冬銀河」。過酷な現実を鑑みれば空には冬銀河。
(選外)(道人)冬銀河をじっと眺めていると、そんな気になる。
銀幕に完の字浮けり年つまる 敏
○(餡子)何の映画だったのかしら。カラーより白黒映画の「完」とか「終」はムードがあっていいですね。
◯(アネモネ)「完」いいですね。しばらく席を立たずに感動に浸っていたい。
○(吾郎)これは昭和の名作か、筆文字でどーんと。これも年末感ありあり。
○(まきえっと)暗闇から浮かび上がってくる感じです。急いで涙を拭かなくちゃ。
銀のボブ揺らすチェリスト年つまる 珠子
◎(アゼリア)忙中閑で静かにバッハの無伴奏でも聞きたくなりました。
冬の虹消えて夕雲銀色に 道人
冬銀河滅びの声が聞こえ来ぬ 幹夫
〇(仙翁)冬の夜空は美しいが、何処か冷たく突き刺さるようにも思います。
〇(道人)無限と有限の取り合わせ。極小の人間の呟き。
一つ得てひとつ失う冬銀河 ルカ
◎(幹夫)ビッグバン→無限に広がりゆく大宇宙>冬銀河には名もなき数多の星が・・・。老衰?消滅の星もあれば何億年もかけてまた新たな星が誕生する繰り返し。同じ様に私達人間にも、そして他の生き物にも誕生の瞬間というものがあり、そしていつかは死ぬ運命にあります。人間の命なんて本当にちっぽけな存在なんだ。ナンバーワンになれなくてもよいから、日一日大切に生きていかなければならない。
〇(仙翁)欲を出し過ぎるといけません、ほどほどに。
◎(ちせい)季語は「冬銀河」。自然の摂理かもしれませんが、空の下で冬銀河を見上げる。
銀の泣く盤面いつの間に雪に 餡子
◎ (多実生) 銀が鳴いているの名セリフ。駒と駒の連結、隙のない高段者の駒組は芸術品です。
〇(藤三彩)坂田三吉の「銀が泣いている」”取れ!殺せ!”と放した銀将を宿敵の関根金次郎は取らないのでありました。
寒灯田舎銀座の歓楽街 アゼリア
〇 (多実生) 全国には〇〇銀座が三百四十五もあるそうです。それぞれ年末は特に盛り上がります。
◯(アネモネ)私の田舎の歓楽街もこんな感じ。
○(敏)いまやどこにでもある銀座。賑わいのある地域の代名詞のようです。「寒灯」がいかにも「田舎」を象徴しています。
銀色に嫉妬は出来ぬ寒き風 ちせい
銀だこと闇汁滋味や床談議 吾郎
○(敏)「銀だこ」は銀色の蛸でしょうか。その滋味に満ちた闇汁を味わいながらの「床談義」とは何とも色っぽい回文句。
○(仙翁)ありそうな面白い光景かと。回文いつもうまい。
◯(道人)闇汁にまさか銀だこは入っていないでしょうね。「床談議」が効いています。
銀の匙浮かぶ湖山は雪 まきえっと
○(幹夫)上句「銀の匙」が洒落ていて、青森の十和田湖&八甲田山や北海道は洞爺湖&有珠山を想起します。晴れた日、湖には煌めきながら静かに小舟が浮かんでいる。句全体のリズムも歯切れ良く、大きく美しい景が詠まれており共感です。
テーマ:干支
煤払い土鈴の干支の並ぶ棚 まきえっと
○(吾郎)これはあるある、あれってなかなか捨てるのが難しい。
〇(藤三彩)神棚がある煤けた家、今もありそうな
その中にいない猫なり漱石忌 敏
○(泉)言われてみれば、干支の中に猫はいません。何だか不思議です。
◎(餡子)鼠に騙されたという説が有力とか・・・。
〇(藤三彩)干支にない猫と漱石の取り合わせにニヤリと
〇(珠子)具体的な状況がつかめませんが視点が面白いと思いました。
○(ちせい)季語は「漱石忌」。吾輩は猫であるを思い出しました。
〇(まきえっと)なるほど。
(選外)(幹夫)十二支に猫がいない理由としては、お釈迦様に行く日を1日遅れで鼠に教わり騙されたという説が最も有力かと。因みに牛の背中から飛び降り一番乗りの鼠はまったくチャッカリ者ですね。3年前今月私も小麦句会のテーマ「遅れる」で「十二支に猫は遅参の漱石忌」と詠んだことがあり、共感です。
また数へ直す霜夜の羊どち アネモネ
〇(珠子)数えなおすより、毛布を一枚増やしてしっかり温めた方が寝つきがよくなると思いますよ。本当に寒くなりました。
亥さ年始過信ね指し師の胃 吾郎
一族に十二支揃う御慶かな 餡子
○(泉)どの様な一族なのか?何はともあれ、目出度いことです。
◯(アネモネ)これは目出度い。まさに御慶です。
○(吾郎)これは実にめでたい。正月感あり。
○(敏)少子化の昨今、十二支が揃うという一族。文字通りお目出度いですね。
◎(珠子)考えてみたこともありませんでしたがおめでたく目の付け所が面白い。無人になっている実家にご馳走を持ち寄って、親戚20人集まるのが正月恒例という友人、それでも十二支を揃えるのは無理でしょう。一族50人ぐらい集めたら何とか揃うかな。
◯(道人)「揃う」が佳いですね。
◯(アゼリア)一足早くおめでたい気分になりました。
◯ (ルカ)なんともめでたい一句。
猪や看板にある住所かな ちせい
牡丹鍋囲み婚活山の村 泉
〇 (多実生) 牡丹鍋と婚活今の山村の姿が垣間見えます。
◎(アネモネ)いやあなかなかの婚活状況。牡丹鍋が泣かせます。
○(吾郎)精のつくものを食べての婚活。リアリティ満載(笑)。
◯(アゼリア)カップルが誕生すると良いですね。
〇(まきえっと)なんかほのぼのしています。きっといい人ばかりの気がします。
賀状書く一筆書きの干支添えて ルカ
(選外)(幹夫)手っ取り早いインターネットの流行りにより段々無沙汰の年賀状ですが、来年は猪突猛進の亥、添え書きにしろイラストにしろ、一筆ある年賀状には心あたたまるものです。句のリズム良し。
産み月は亥年如月毛糸編む 珠子
◯(アネモネ)おめでとうございます。
◎(道人)単に予定日は二月と云っているだけなのに、心に響く。
子を追ひて生き続けるや野良寒し 仙翁
十二支の神を巡りて年新た 道人
猪が噛む犬の尻尾や去年今年 幹夫
〇(瞳人)そういうわんこも、いるかなあ
年齢も干支も明かさぬ雪女郎 アゼリア
○(泉)雪女郎・・・何となく不気味で、ユーモラスです。
○(幹夫)そう言えば、小泉八雲の怪談「雪女」には、お雪のことを「彼女は背の高い、ほっそりした少女で、大層綺麗」と書かれてあるから、それが雪女の原型か。年齢不詳も、私の中では大体15・6歳~アラフォーぐらい?干支なんてわかる筈もない!中川岱子が詠んだ「聖五月永久に三十路の原節子」の原節子は雪女だったのかも知れない。何れにせよ、年を取らず別嬪なのが雪女、老婆になったら「雪婆(ゆきばんば)」と呼び一本足だ。想像の世界・・・得体しれない妖怪雪女郎の句に納得。
○(餡子)明かさない方が、いいでしょう。山姥はいますが、おばあさんの雪女郎では、ちょっとね。
〇(藤三彩)女性の年齢を訊くのはちょいとおよしなさいと。野暮なあなた。
◎(仙翁)年齢不詳の雪女、何時生まれたのか、さて本当は何歳なのか。
○(ちせい)季語は「雪女郎」」。虚構めく雪女。当人の遺志によりさらにミステリアスに。
〇(まきえっと)女装をする男性も多くなりました。
(選外)(道人)どうしても知りたくなりますね。
木を添えた年の一文字亥が核 藤三彩
〇 (多実生) 来る年は亥年。木偏で核成程、成程。考えると色々有りそう。
選外(吾郎)木を抜いた方が好きかも
来る年は猪突猛進老いの意気 多実生
〇(瞳人)その元気、失せし、がさみし
○(敏)その意気や良し。私も亥年ですが、猛進どころか、よたよた歩きの一年となりそうです。あやかりたい意気、うらやましい一句。
◯(アゼリア)この意気見習いたいです。
乱心の老犬瞼戌送る 瞳人
雑詠
シリウスや翳せば蒼き獣の眼 幹夫
威を張り合うことなき冬の流星群 藤三彩
幻灯の廻る現し世咳一つ 仙翁
◯(道人)「幻灯」とはどこか懐かしい響き。時空を超えた寂莫感のような感覚。
山茶花散る小さきことは捨てておく 敏
○(泉)何となく納得、という感じですね。
〇(瞳人)それが長生きの、こつですね
○(ルカ)気がつくとまた散っている山茶花。季語がいいです。
(選外)(道人)よく分かります。でも些事雑事から中々逃れられません。
絶滅の鳥の剥製冬の星 ルカ
○(ちせい)季語は「冬の星」。ドードー鳥だとか想像されますが、剥製と星の取り合わせ。何かイメージが膨らみました。
(選外)(藤三彩)つばさの無いニワトリ(「無翼鶏」、「ウィングレス」)東京農大「食と農」の博物館 に骨格標本がマダガスカルのエビオルニス、NZのモアは絶滅。絶滅危惧種に語る「活動弁士」も・・・
落葉道いつも追われる音のして 多実生
○(幹夫)サっと吹いて来てサアーっと去ってゆく街路樹・山道への風は転校して行った宮沢賢治の又三郎?風に急かされる落葉・・・冬ならではの心情だ。
◯(アネモネ)その感じわかります。
◎(敏)年の瀬の時分になると、どうしても何かに追われている気分になりがちです。自分で踏んでいる落葉なのに、だれかに急かされている感じが実感します。
〇(仙翁)ガサゴソガサゴソ、足音が響きますね。
◎(ルカ)憔悴感が感じられ、いつもの落ち葉道が違う風景に思えます。
(選外)(道人)師走は本当に気持ちは忙しいですね。
待合室のスターは白寿室の花 アゼリア
〇 (多実生) 白寿のスターどんなお方でしょう?室の花がよく効いています。
◯(道人)ほのぼのとした空気がよく伝わってきます。
◯ (ルカ)スターという言葉自体が、白寿。
空っ風地球の軸に自分置く まきえっと
〇(珠子)つまり、しっかり立っている時は地球の軸の上にいるのだということですね。気概が大事。
窒素カリリン酸冬の蝶一途 珠子
(選外)(幹夫)NKP肥料三要素への発想が面白い。負けること勿れ山野の冬の蝶!
(選外)(藤三彩)化学肥料は使わないほうがいいよね、池の金魚も死んじゃうし
仲間キス軒揺れ雪の隙間かな 吾郎
○(餡子)なんか覗き見?みたいですが、回文の面白さ。
(選外)(幹夫)雪の隙間のロマンチックな景に共感です。
冬泉や詩人の妻の小さき碑 道人
○(泉)詩人を支えたであろう妻。大きな碑の方が、ふさわしいかも。
○(ちせい)季語は「冬泉」。小さき碑、これが詩人の妻を象徴している様で印象的でした。
(選外)(藤三彩)詩人と伴侶が誰かわからないところがミステリー。
湯に遊ぶ柚子を胸乳に囲い込む 餡子
〇 (多実生) ちょっとおちゃめでユーモラスです。
◎(瞳人)うーん、これだなあ
◎(藤三彩)豊満なエロティシズムがむんむん。変哲こと小沢昭一的こころだのようですね
○(敏)冬至湯の柚子をかくも色っぽく詠んだところに感心頻りです。湯に浸かる主人公の肢態を彷彿とします。
風呂吹や白つぱくれも慣れし身に 瞳人
落葉吹き飛ばし庭師の送風機 アネモネ
○(幹夫)ブィーンて音立てて石ころの上の落葉を吹き飛ばす送風機という文明の利器には感心させられます。景がよくわかります。
○(餡子)両国国技館まえの銀杏?並木でそういう光景を見ました。
○(ルカ)確かにそうです。写生の妙。
〇(まきえっと)年末の慌ただしさも感じます。
凩や着る物少し変えて行く ちせい
鮟鱇の口から逃げる命かな 泉
◎(吾郎)あの吊られた姿を見るとこれは実感。ありがたくお命頂戴いたします。
〇(珠子)あのでっかい口・体中が口のような鮟鱇ゆえ、「口から逃げる命」が納得できます。
〇(仙翁)これは、鮟鱇の口に入っていた小魚が逃げていくということですか。
◎(まきえっと)「口から逃げる命」がいいですね。
年末だと言うのに、余り実感が湧きません。最近は広島は変に暖かくて、今年は暖冬かな?と勝手に思っています。「鮟鱇の口から逃げる命かな」・・・命は永遠である。これは、私の恩師の御言葉です。
もう大晦日です。小麦句会の1月1日締切で気付きました。
色々ありましたが、今年一年何もかもお世話になりました。感謝あるのみです。
来年もよろしくお願いします。
皆さんへ
佳いお年をお迎えください!
苦吟健吟しましょう。