小麦句会 on blog

俳句「麦の会」の句会のひとつです。 ネット句会を月二回行っています。 この句会は誰でも参加できます。

第467回小麦句会結果発表

2021年12月23日 20時06分06秒 | 15日句会

今年も小麦句会にご参加いただきありがとうございました。
自粛が続きどこかに行くこともなく終わろうとしています。
なんだか薄っぺらな1年になってしまった感じもしますが
来年は厚みのある1年になりますように。
来年も宜しくお願い致します。
よいお年をお迎えください。

兼題:走
走攻守そろった選手にボーナス出  泉

又急いて彦や粂追う師走空  瞳人
      
うら若い祢宜の小走り年迫る  楊子
◯(アネモネ)「年迫る」がいかにもです。
○(卯平)この禰宜(ねぎ)、その神社の二代目だろう。初めての年末年始で色々な「仕来り」は初めての事だらけ。だから小走りにならざるを得ない。句材が新鮮。  
〇 (多実生) 祢宜の小走りに年末が良く表現されています。
○(吾郎)この祢宜どこかで見たことがありだけど──。
○(仙翁)うら若い祢宜、小走り、様子が浮かびます。
○(あちゃこ)慌てない慌てない。
〇(まきえっと)目に浮かびますね。
 
御馳走はみんなの笑顔去年今年  藤三彩
○(泉)一年間みんな元気だった。来年も元気な一年を過ごしたいものです。
〇(春生)コロナ禍でこんな風景がなくなりました。

独走す金かと寒気吸う速度  吾郎

年の尾の走りつシャドウボクシング  アネモネ
◎(楊子)シャドウボクシングが何をかいわんや。自分に向かっている気がして思わず笑いました。女はしませんが。

色つきのうわさ走らせ滝涸れる  宙虫
◎(アネモネ)「色つきのうわさ」いいですねえ。
〇(ちせい)恋愛沙汰に聴衆も色めきだったのかもしれません。
(選外)(卯平)色事の噂だけでなく、針小棒大に膨らんだ噂はあっという間に拡がる。面白い。「走る」から「涸る」に至るのが若干の違和感。 

裏道へ逃げ込む子猫町師走  敏
○(仙翁)よくある光景ですが、師走に相応しいかな。
◯(ルカ)走り去る子猫。景が浮かびます。
〇(めたもん)子猫も逃げたくなるような師走の町の慌ただしさですね。  
(選外)(卯平) よく詠まれる景であるがこのような句は何処かホッとする。 

コロナ禍に奔走の医師オリオン座  アゼリア
〇(藤三彩)医療関係者の奔走も限界だろうか。見上げると三ツ星ベルトのオリオン座。

南国へゴリラの遠目師走空  道人
◎(あき子)ゴリラの遠目のまなざしには、沢山の思いがありそう。師走の空の下で、作者とゴリラの出会い。季語が染みてくる。

小走りに輪に入りゆく年忘  ルカ
(選外)(道人)輪となる忘年会から町内会や子供会などの忘年会だろうか。忙しい年末の鬱屈感も多少見え隠れする。

ひび走る茶碗で呑めば隙間風  仙翁
〇(春生)ちょっと侘びしすぎですが、現実です。 

初富士やしんがり占むる伴走車  卯平
○(餡子)富士の見える景色ですから、正月恒例の箱根駅伝でしょうね。昔の方が、ドラマがあったように思います。

山眠る昼休憩の走り込み  あき子
〇 (多実生) 入社間もない頃、部課対抗の駅伝の練習は昼休みでした。
〇(ちせい)競技に対する努力と眠る山。夕暮れも走って居るのかもしれません。

歳暮れを縫うて爆走バイク便  あちゃこ
◯ (アゼリア) 年暮れの忙しなさが出ていて、焦ってきました。

駅伝の走者が刻むドラマ見る  多実生

まあそれはまあそれとして街師走  めたもん
○(敏)12月は一年で最も気ぜわしい月。そんな頃にも関わらず、いつでもいいような問題をさしむけられた際の主人公の、とげとげしくないあしらい様がうかがえます。
◯(ルカ) それどころではない忙しさ!

静脈の走る仁王の脚に冬  餡子
◎(藤三彩)運慶でも快慶でも無名でもいいのだ。邪気眼でみなを守る迫力があれば・・
○(泉)着眼点に感服しました。
〇(珠子)静脈まで突っ込んだ視点に惹かれました。仁王の太い脚も空っ風には寒そうに見えます。
◎(吾郎)なかなかのところへの着目。
〇(めたもん)血管の浮き出た脚。ぎょろりと鋭い目つき。仁王の姿が寒さの中で際立ちます。  
〇(まきえっと)目のつけどころがいいですね。 
◯(アゼリア) 走の兼題に静脈の走るとは、よく思いつかれたと感心しました。
(選外)(あき子)寒さをこらえて仁王を見上げると、静脈が見えて来るよう。

三越の袋行き交う街師走  珠子
○(敏)年賀用の品でしょうか、有名百貨店でそれらを仕入れた人々の行き交いが見えてきますね。
○(餡子)確かに、電車では三越の袋をよく見かけます。私の方は、高島屋が多いですよ。 

何も買ふ予定もなしや街師走  春生
〇(瞳人)ほんとに、欲しいものはなし、ゆっくり目刺でぬる燗、それで極楽という人です、わたくしは

女囚本主体の果てに師走かな  ちせい
(選外)(卯平)漫画「ザ・女因」だろうか。「主体の果て」はこの漫画愛読者ではわかることだろうか。この漫画読んだことはない。

表情の緩む師走の商店街  まきえっと

テーマ:短い
ひとことで終わる経歴冬の鳶  宙虫
◯(アネモネ)わたしもそう。
◎(卯平)普通であれば「一行で終わる経歴」。これでは当たり前の句。「ひとことで終わる」で臨場感が伝わる。漢字である「一言」であれば何処か自己紹介は機械的。ひらがなの「ひとこと」で作者がぼそりぼそりと独白している様子が見える。しかし、本当は「今に見ていろ!」と言う心に秘めた決意。それが「冬の鳶」。 
○(泉)何事も単純明快が良いです。
○(餡子)この「ひとこと」を色々と考えてみました。むずかしい・・・。作者は何というのでしょうか?  
○(あちゃこ)私めも同じ。アッケラカンと鳶が舞っています。
〇(春生)同感です。振り返ってみると全て一言で。    

わが残年は五指ほどか年詰まる  敏
〇(瞳人)いまや100指にあまる時代にて、という気持ちですが
〇(めたもん)上五、中七のため息のようなつぶやき。「年詰まる」で現実に引き戻されるところもほろ苦い。

短日のさらり崩れる砂の山  あちゃこ
◎(道人)冬の浜の波打ち際で遊ぶ何気ない景を詠んで詩情豊か。中七が上五と下五の両方に掛かっているのが巧い。
◎(仙翁)どこの、どんな砂山か、象徴的で面白いですね。
○(あき子)砂の山のさらりが、はかなくて美しい。
〇(まきえっと)さらり崩れるが何とも切ない。
(選外)(卯平)綺麗な句。但し「短日」と「崩れる」には近似感。

短めの校長講話冬休み  ルカ
○(餡子)いよいよ明日から冬休みと言う終業式の「校長先生のお話」は、短いほど歓迎されます。     
○(泉)何事も講話は短い方が良いです。
◯ (アゼリア) 校長講話は短いほど有難かったです。
〇(春生)たくさん語りたいのが校長、でも喜ばれません。
(選外)(卯平)類似類句は結構ある。その逆になる場合が多いが。

一行の別れのメール冬苺  卯平
〇(藤三彩)苺の賞味期限は短い。気のない人に言い寄ってもそっけない一行。
〇(瞳人)簡単に済む時代になりました。
〇(楊子)冬苺の斡旋をいただきました。人生軽く行きましょう。
〇 (多実生) メールは短いが別れに使うとは? でも冬苺は適切。
◎(泉)「一行」という言葉に、いろいろと想像が膨らみます。
◎(ちせい)苺の酸っぱさを甘受したのかもしれません。甘さを忘れて居る様な。
○(敏)そんなに深くなかったお付き合いの相手への訣別の辞、といったところでしょう。出し終わった後に口にした苺の甘さに思わず頬が緩みます。
○(あちゃこ)恋人からだと切ないですね。返信は明るく。ちょっと酸っぱい冬苺。

古紙括る紐の短さ年暮る  まきえっと
◯(アネモネ)得心です。
○(あき子)年末の風景が、温かな視点で描かれています。充実した生活感も伝わってくる。
○(宙虫)長さを調節して切ったはずなのに。いらいらする。

短日や使い走りに素っぴんで  アゼリア

ゴンドラの唄を返して年忘れ  道人
◎(瞳人)おお、という言葉にならぬ感懐を抱きしままに、森繁の歌を聞きつつ、この月、この一句をおいて、ほかに◎はなし! と即断いたし候
〇(珠子)志村喬の切ないゴンドラの唄ではない、お酒の入った陽気なゴンドラの唄。 

短日や声の方より黄いの傘  めたもん

にぎやかに消して聖菓の絵らふそく  アネモネ
〇(珠子)そして枕元に大きな靴下を置いて寝ます。サンタは必ず来てくれます。
○(敏)クリスマスケーキに添えられた絵蝋燭を家族全員で吹き消す様子でしょうか。
○(宙虫)にぎやかな景が浮かぶ。
〇(まきえっと)ホッとします。楽しそうですね。  
◎ (アゼリア) にぎやかに消してがいいですね。
(選外)(道人)クリスマスパーティーの賑わいが過不足なく伝わってくる。

三文字の返信熱燗もう一献  餡子
○(卯平)この三文字。多分「キライ」と言う訣別の返信。やけ酒を呑むしかない。
○(吾郎)返信を想像するだに楽しい。熱燗がすすむ。
◎(あちゃこ)後半への展開がいいですね。返信が返って来たと読みました。あれこれ想像が膨らむ一句。
(選外)(あき子)三文字を考えさせる、大人の余裕が素敵。

十二月用事残して日暮れ来る  多実生

短日の山家の灯りとびとびに  春生
〇(楊子)ぽつぽつと灯りの点在するとより寂しさが際立ちます。
○(仙翁)山間の村、景色が浮かびますね。
○(宙虫)山間の静かな冬のさびしさとやさしさと・・・・。

船笛の長く短く去年今年  あき子
◯(アネモネ)除夜の横浜が浮かんで来ます。
〇(珠子)横浜とか?新年を祝う船笛なのでしょうか。  
◯ (アゼリア) 短音長音の組み合わせで意味があるとか、初めて知りました。

銭湯の柚子湯にゆっくり浸かりけり  泉
〇 (多実生) 記憶には有りませんが、何故かほのぼの。

短いと予想をしたり冬の星  ちせい

三ケ日の蜜柑のなかを一両電車  瞳人
◎(宙虫)三ケ日町は静岡県だと知った。蜜柑山の向こうを行く一両電車だろう。光を感じるくとなっている。もし、こたつの上の蜜柑だと考えたら不思議な感覚。蜜柑の明るさと正月三が日の空気が伝わる。
◯(ルカ)静岡に住んでいた者としては、三ヶ日蜜柑はテッパンです。字余りでも許してしまう。
〇(めたもん)まさしく三ケ日方面に旅した時の景です。いい所でした。 

短日や空き地の影は濃く深く  仙翁

朝昼晩荷物の届く年の暮  楊子
〇(ちせい)まさに師走の様だと思いました。

凍てし池身体短詩系師弟  吾郎
○(あちゃこ)短詩系師弟がうまい。

白色のマスクの短命変えて黒  藤三彩

病院の白いカーテン日短か  珠子
○(吾郎)今年はよく見る光景だった
◯(道人)入院中または見舞いの夕暮れ。「白いカーテン」が佳い。

雑詠
外つ国の話湯豆腐崩れだす  まきえっと
○(あき子)どこかの国の戦争の話が出たのだろうか。真っ白な湯豆腐が崩れだす。
(選外)(道人)パンデミックとはいえ外国の話は興味津々、食べるのも忘れて折角の湯豆腐の形が崩れかけてやっと一息。

と金恥じ呑んでおでんの自販機と  吾郎
〇(藤三彩)近所のお店では納豆を自販機で売っている。人生俺はと金でぐいぐい活きたと恥じることはない回文。
◯(道人)飲み友達との早指し将棋。歩を成らなかったら勝っていたのかも。「おでんの自販機」に俳味あり。
○(宙虫)そういえばおでんの自販機、今年は見ていないな・・・
〇(まきえっと)焼き肉の自販機はあるんですよね。 

ゆらゆらと来る冬午後がざらついて  餡子
◯(道人)具体的なことは何も云っていないが、初冬の半日の感覚が「ゆらゆら」「ざらついて」で巧く表現されている。
◎(ルカ)オノマトペと午後のざらつきが絶妙。

引き潮は音から冬のトランペット  宙虫
○(仙翁)引き潮の音が、トランペットに聞こえますね。
◯(ルカ)冬のトランペットに惹かれました。
◯ (アゼリア) ニニロッソの音色が蘇ってきました。

懐かしき本読みふける煤払  泉

寒卵沈みて引き上げられるまで  ちせい
◎(春生)ほんの一瞬をとらえて見事。

吉良の忌の笛の音にみな立ち上がる  アネモネ

極月や厩舎に並ぶレース鞍  卯平
〇(珠子)レース用ですから軽く乗りやすい特別の鞍なのでしょう。張り詰めた気持ちと冷気を感じます。 
○(餡子)極月には結構大きなレースがありますね。その時の、厩舎の様子でしょうか?鞍を外された馬たちの安堵感が感じられます。

繰り言をいったん納め根深汁  敏
〇(楊子)中七でいただきました。真っ白い深葱の香りが心を鎮めます。
○(吾郎)まぁまぁまずはあったかいのを一口、で、一献。
〇(ちせい)根深汁を堪能する知恵だと思いました。

厚皮に香り集めて柚子実る  多実生
〇(藤三彩)庭に成った柚子を採るのに棘があって大変だった。と言いつつ分けてくれる人が職場に居たっけ。
○(あき子)柚子の実りに手を合わせたくなる、丁寧な写生。
〇(めたもん)把握が独特ではっとさせられました。柚子の香りとごつごつした感触がよみがえります。 

山際の七色変化暮早し  仙翁

師走めく大河ドラマは最終回  あき子

煮凝や母には言えぬ姉のこと  ルカ
〇(楊子)いかようにも想像できるのがいいです。どこの家にもありそうなちょっとしたこと。
◯(道人)「煮凝」と「母」では一見月並みな組合せだが、「姉」を加えることによって一編の物語となった。
◎(餡子)何故か、煮凝りと聞くと、母を思い出します。母と、姉と、作者との間に何があったのか。短編小説のような句です。 
○(宙虫)微妙な姉妹の関係、煮凝りのようにからまってくずれて・・・・。
(選外)(あき子)ドラマですね。母、姉、私の構図は身に沁みます。  

推敲はしない余生や去年今年  楊子
◯(アネモネ)「去年今年」で景が小さくなったのが惜しい。季語次第で特選でした。
〇(瞳人)わたくしのだ句と同断、と申しては失礼と思いつつ、潔さの爽やかに
〇 (多実生) 暇の多忙。でも良く解ります。
◯(道人)この感慨に共鳴。俳句の場合、推敲を重ねると余生はあっと言う間に過ぎ去る。余生を意識しないままに。 
◎(敏)これまでの人生にあっては色々とやり直しや反省などがあったのでしょう。それが余生が見えてきたこれからは、ありのままに運命を受け入れようと思い立ったのではないでしょうか。
○(あき子)断定の潔さが気持ちよい。余生の推敲ができるなら、どうなんだろうとも思ったり。
○(あちゃこ)あるがままに生きましょう。
◯(ルカ)ざっくり生きる余生。お見事。
◎(めたもん)上五、中七に思わず自分の姿を重ねます。淡々とした余生の境地に共感します。
◎(まきえっと)自分の余生を「推敲」は思いつきませんでした。  

冬日濃き野原に遊ぶ狐かな  春生
○(仙翁)キツネですか、面白い景色ですね。

同齢の医師は江戸っ子冬日和  アゼリア
○(吾郎)おう、こちとら風邪なんかでくたばるもんかい、ゴホゴホ。
〇(ちせい)正しい事実の着地点を探っていたような印象を持ちました。

配食の老運転手冬うらら  道人
〇(楊子)一人住まいの老人宅に配食してきた運転手さんは私より年上かも。そんな時代ですかねえ。

煤逃げて昼酒一人カウンター  瞳人
○(泉)サラリーマンのんびりしたい年の暮。
〇(春生)これはこれで優雅ですね。

鼻歌の南こうせつ雪ばんば  珠子

貌もたぬ影傾れゆく街聖夜  あちゃこ
◎(珠子)「貌もたぬ影」は当たり前ですが、だからこそうまいなあと思いました。夜の繁華街の影は曖昧でしょうから心象でもあるのでしょう。

妣という女の一生冬の虹  藤三彩
◎ (多実生) 私の妣は子沢山で農作業と主婦、人の二倍は働いた母でした。
○(敏)冬の虹を仰ぎながら、同様に短かかった母親の生涯を思い返しているのでしょう。

鰤起し茶色料理の茶色味  めたもん
〇(藤三彩)鰤起こしという季語は北陸から更に北の日本海の寒ブリに似合う。山陰では雪起こしという。茶色の料理はわからない。ほうじ茶のことか?

☆次回をお楽しみに。



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3 コメント

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Unknown (瞳人)
2021-12-23 20:25:39
そうか、をみなならぬ、をのこの作であったか。
だから俳句はおもしろいのです。
いろいろ聞き比べると小林旭と藤圭子がいいですね。
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ご苦労様でした ()
2021-12-24 11:10:41
まきえっとさん、句会当番のお役目ご苦労様でした。今後とも、よろしくお願いいたします。

今年も、もう終わります。一年が経つのは早いですね。それにしても、この一年間新型コロナの感染に振り回されてきました。日本でもそろそろ次の波が来る予感がします。緊張が続きますが、保健所や医療関係の人々に感謝です。
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一年のお礼 (道人)
2021-12-25 10:24:56
宙虫さん まきえっとさん

今年も色々ありましたが、あっという間に暮れようとしています。本当にお世話になりました。来年もよろしくお願いします。

皆さんへ 

本格的な冬将軍到来です。お気を付けて佳い年をお迎えください。
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