さだや日記~創業96年目メーカーズシャツ鎌倉広島店のフランチャイズとオフプライスショップネクストを営んでます。

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スーツフェアに向け連載

2024-08-14 19:03:20 | 商品企画
3回坊主になりそうですが、スーツオーダーが始まって13年経ちました。2011年からです。鎌倉シャツのスーツは素材を厳選しています。着心地、シルエット、サイズ感を優先し、価格はリーズナブルに抑えられています。
第1回目 スーツの裏地は「キュプラ」を使用します。

キュプラは「ベンベルグ」とも言われ、20世紀初頭キュプラの紡糸を工業化したドイツの「ベンベルグ社」からその名前が来ています。日本の旭化成(当時の日本窒素肥料)が1928年にキュプラ製造特許使用権を取得したところから、日本での製造が始まりました。裏地に使われるキュプラという素材はシルクに似た光沢、滑りの良さ、静電気を起こしにくい、生分解性がある、という優れた性質を持っています。19世紀終わり、銅とアンモニアの溶液(シュヴァイツァー試薬)にセルロースが溶解するということをシュヴァイツァーさんが発見したところからキュプラの歴史が始まりました。溶解した溶液を酸にさらすと固まり、セルロースを糸状に成形出来るようになりました。綿の種子に生える生毛や高純度の木材パルプを原料に良質な糸をより高速に生産可能とし、使用する銅やアンモニアの回収率を高めていった会社は日本だけでした。こうして日本の会社がほぼ全てのキュプラを生産(一部イタリア)する状況の中、2022年4月工場火災が発生し生産能力の極端な低下が起こりました。末端ユーザーである弊社にも影響が及び、グレー系の裏地が全く無い時もあり2023年はこの状況をどうすればいいか、全体を見ることができず戸惑いました。2024年には生産能力の改善があり、裏地選びに、これだけしか無いの?ということがなくなりほっとしています。今後供給が安定してそうなレーヨン系の裏地に変わるのかもしれませんが、レーヨンより美しく、耐久性のあるキュプラは裏地を大切にする日本のスーツ業界には無くてはならない物として残っていくと考えています。