・昭和44年6月3日(火)雨(無気力状態に陥る)
今日、仕事に出掛けるのが億劫に感じた。それに雨が降っているのに傘が無かった。面倒くさくなったのでズル休みをし、10時まで寝ていた。
5月28日のK氏(同居人)との意見相違は、良い教訓になった。最近、彼とは話をしなくなっていた。と言うより、今まで語り過ぎていた。
話は変わるが、後2週間でオーストラリアを去り、帰国の途に着くのだ。私の旅も終りになり、現実の社会、生活が待っていると言う事だ。今までは、『外国へ行く』と言う事が私の生きがいであった。そしてそれが実現し、日本を脱出してからは旅を続ける事が私の一つの目標であり、又それに向けて色々と遣って来た。しかしその帰国が近づくにつれて、その張りも失せ、全てが終った感じになって最近、無気力になっていた。
あれ程心配していた仕事も見付かり、滞在期間延長も何とか出来たし、帰国が出来る目途も付いた。その反面、旅への想いや目標が無くなり、『ポカーン』と大きな穴が空いた様で、シドニーでの生活、そして貨物駅やレストランでの仕事にその意義が失せ、惰性の感じがして来た。
英語圏の国へ行ったら、『働きながら英語の勉強をしてみたい』と心を弾ませていた頃があったが、ロンドンでもシドニーでも、来てからは仕事と生活をして行くと言うだけで手一杯であり、しかも、気力、知力、勉強の時間が無く(自分の言い訳)、現実的に難しかった。
後1ヶ月程で私は日本に到着するのだ。何処へ行っても楽な国は無いのだが又、決まりきった生活に戻るのかと思うと、何か遣る瀬ない感じがするようになった。自分はこれから何を目標に、何を糧に生きて行けば良いのか、迷い悩む今日この頃であった。
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