YOSHIの果てしない旅(人々との出会い、そして別れ)

ソ連、西欧列車の旅、英国滞在、欧州横断ヒッチ、イスラエルのキブツ生活、シルクロード、インド、豪州大陸横断ヒッチの旅の話。

私の旅はここに終る~日本の旅

2022-04-27 08:52:10 | 「YOSHIの果てしない旅」 第12章 船旅
                     △私と左は同室の橋本さん~ソ連船ハバロスク号にて

・昭和44年(1969年)7月6日(日)晴れ(私の旅はここに終る)
 朝食を済ませ、出立準備を整えてから女将に勘定をお願いした。彼等に「ここの旅館代は私も払う」と言ったが、彼等は「Yoshiにはお世話になったから。」と言って私の分を払わしてくれず、6人で割って各自出し合って払ってしまった。一昨日も昨夜も、「Yoshiにはお世話になっているから。」と言って飲み代は彼等が払っていた。
今日、彼等はこれから日光見物へ出掛けるのでした。「私も付き合う、行かせてくれ。」と言ったのに、彼等は「Yoshiは1年振りの故国、家族が待っているので早く帰って上げなさい。」と言って、私の同行を許してくれなかった。私の気持としては、彼等といつまでも旅をしたかったが、実を言うと私にはもう日光へ行く金が無い状態であった。もし旅館代を払っていたら、埼玉県の深谷駅まで帰る汽車賃が手元に残ったか、分らなかった。
 東武浅草駅はこの旅館から近いので、彼等の列車が出発するのを見送る事にした。実は昨晩、私から女将に東武日光までの乗車券と特急券をお願いしてあったのだ。そんな訳で彼等の乗車には、何ら心配がなかった。我々は浅草駅へ歩いて行った。彼等は日本語や地理が全く分らないので大丈夫なのか、私は心配であった。しかし私だって言葉が分らなくても旅をして来たのだ。彼等だって充分に日本の旅を楽しめる。寧ろ私が居ない方が色んな体験が出来て、本当の日本の旅が楽しめるのかも知れない、とそう思った。
 暫らくして、東武日光行き特急列車がホームへ入って来た。そして終に、船上の友とも別れの時が来た。
「私も皆さんと一緒に日光へ行きたいのですが、これでお別れします。どうぞ日本の旅を楽しんで下さい。グッドラック(さようなら)」と私。
「Yoshi、手紙を書きますから返事を下さい」とタン。
「Yoshi、お世話になりました。グッドラック」とメアリー。
「Yoshi、又何処かで会いましょう。さようなら」とフレッド。
「色々な所を案内してくれて有り難う、Yoshi。さようなら」とフィリップ。
エバンス夫人やベンドレィさんとも別れの握手を交わした。そして彼等は手を振りながら車内へ入って行った。私はホームに残った。窓ガラス越しに彼等は何か言っている様であったが、分らなかった。多分、『見送りはもういいから、行ってくれ。』と言っている様であった。私も窓越しに、『最後まで見送るから。』とジェスチャ交えて言った。
 発車のベルが鳴り終り、列車は静かに滑り出した。「皆、さようなら。元気で旅を続けて下さい。」と手を振りながら心で叫んだ。彼等も手を振って応えたが、直ぐに見えなくなってしまった。彼等を乗せた日光行き特急列車は、私の目の前から走り去って行った。私は列車が見えなくなるまで見送った。『私の旅』はこの瞬間で終り、そして私は『旅人』ではなくなったのであった。その寂しさ、哀しさが湧いて来て、私は胸を絞め付ける想いと、込み上げる涙を堪えた。
 私は上野駅から高崎線新前橋行きの列車に乗り込んだ。車内は混んでいなかった。私はぼんやりと車窓の懐かしい景色を眺めていた。あれ程に想い詰めていた旅は、これで終ったのだ。日本出発前までは考えられない大旅行になってしまった。
振り返れば色んな旅があったなぁー。旅の想いを膨らませてのナホトカへの船旅、シベリア鉄道乗車中にソ連の若い女性が歌ってくれたロシア民謡、鈴木とのストックホルム~オスロ間ヒッチの旅、1人ヨーロッパ列車の旅、シーラとの出会い、ウェールズの旅、ロンドンでのシーラとの日々、ロンドン~アテネ間ヒッチの旅、イスラエルの旅、ロンとのシルク・ロードとインドの旅、荻とのアジャンタ、エローラ遺跡巡りの旅、オーストラリア大陸横断ヒッチの旅、そして帰りの船旅。嬉しい事、楽しい事、辛かった事、寂しかった事、悔しかった事等、色んな旅に色々な事があった。それがみんな終わったのだと思うと、間もなく家族や友達に会える嬉しさよりも、何とも形容し難いものが又、胸にジーンと来てしまった。
 私は、車窓の移り変わる景色をぼんやりと眺めながら、過ぎ去った幾山河の光景を郷愁に近い感じで思い浮かべる様になった世界の旅路をしきりに回想していた。

【詩 題名「旅」】
旅は、人生に生き甲斐を与える。
旅は、楽しい、それは春の訪れのように。
旅は、寂しい、それは晩秋の落葉のように。
旅は、出逢いであり、又、別れである。
旅は、人生であり、人生は又、旅である。
人生は、旅で始まり、そして、旅で終る。
*1968年11月6日、ロンドンのハイド・パークを散策して浮かんだ詩です。

◎これをもって「私の果てしない旅』」を終わらせて頂きます。長い間、私の拙い「旅日記」をご愛読下さりました読者さんに感謝申し上げます。本当に有難うございました。



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1 コメント

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Unknown (nerotch9055)
2022-04-27 20:52:26
こんばんは!
旅行記、お疲れ様でした!
私は47年生まれなので、私の年齢よりも前に海外を巡ったお話は、とてもおもしろかったです。
旅は本当に、いいものだと再考させられました。
最後の詩は、あちこちを旅行されたからこその、想いが詰まっていると思います!
本当に、感動する詩です。
今後はまた、小さな旅や、季節の移ろい、旅行記での思い出など、拝見できたら嬉しいです。
m(_ _)m
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