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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「かみさまへのてがみ」 エリック・マーシャル:編 谷川俊太郎:訳 葉祥明:絵 サンリオ 

現代版・子どもたちによる「詩編」

ロシアによるウクライナ侵攻。もはや「生物兵器・核兵器の使用」や
「第三次世界大戦への突入」さえ、絵空事ではないー。
そんなニュースに怯えながら、この絵本に収められている手紙の一つを思い出した。

かみさま
 あなたって ほんとにいるの?
 そうは おもってないひとたちも いるわ。
 もし ほんとに いるんなら、
 すぐに どうにか したほうが いいわよ。  ―ハリエット・アン」(p70より)

今、世界中で、神を信じる人々はみな、ハリエットちゃんと同じ思いで祈っている。
 「かみさま  すぐに どうにか したほうが いいわよ」

実はこの手紙。旧約聖書・詩編の言葉にも、とてもよく似ている。
何千年もの昔、かのダビデ王が神に対して捧げた祈りの詩。

 主よ なぜ あなたは遠く離れて立ち
 苦しみのときに 身をかくされるのですか。
 悪しき者は高ぶって 苦しむ人に追い迫ります。
 …
 主よ 立ち上がって下さい。
 神よ 御手を上げてください。
 どうか 貧しい者を 忘れないでください。  詩編10篇1,2,12節(新改訳2017)

この絵本には、他にも、アメリカの子どもたちが「神様」あてに書いた手紙の数々が、手書きのまま収録されています。神様という大きな存在を前に、子どもたちの心にタブーはなく、その語りかけは何とも自由です。

「どうして、土曜日に雨を降らさずにおくことくらい出来ないの?」
「教会の音楽は、もっとマシなものに出来るはずだよ…」
まったく! うなづきながら、大笑いさせられます。

この「現代版・子どもたちによる詩編」。
こんなにも暗い時代、だからこそ。
子どもと一緒に、明るく口ずさんでみたいのです。
返事が届くのを、共に心待ちにしながら―。











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