憧れを、呼び覚ます
原題は“Alberili”(アルベートリ)。
お母さんが、田舎の方言で「小さいアルベルト」を呼ぶと、こうなるのです。
「アルベートリ、アルベートリ、もうかえっておいで。
とうさんのてつだいをしておくれ」
つまり「アルベートリ」は作者の幼名です。
幼いアルベートリが見た山の四季、聞いた鈴の音、さわった草の手ざわり、肌にふれる牛小屋の空気…。スイス・アッペンツェル地方の、美しい風景に目を奪われます。
思い出の全てを詰め込んだ、アルバムのような絵本です。
―こんなに美しい幼年時代が、ありうるのか…?
確かに、そこにあったのだと思います、アルベートリの心の中に。
そして、歳月は流れ…
立派な菓子職人になったアルベルト・マンゼルは、それをやめて、とうとう「絵描きになって」、この絵本を作りました。「ほんとうにやりたいことを、わすれたわけではなかった」からです。もう、「アルベートリ」と呼ばれることはなくなっていたとしても。
幼くも、美しい日々。本当に、ずっとやりたかったこと…。
心の奥底に眠る、深い憧れを呼び覚ましてくれる絵本です。
1989年刊の古い絵本で、残念ながら絶版ですが、図書館で探してみてくださいね!