アートセラピストのイギリス便り

アートセラピスト間美栄子のシュタイナー的イギリス生活のあれこれを綴った友人知人宛のメール通信です。

第六十話 ひとはここに学びに来た

2010-03-01 07:24:36 | 人生観

(Sheepーもう子羊の誕生の季節です)

*こちらはいまはレントと呼ばれる季節です。芽が黒い、キリストのシンボルであるとされる(黒は死を象徴するところから、キリストの復活のイメージ)ASH (トネリコ) の枝をアートセラピールームにいけておいて、患者さんたちと変化を観察しています。真っ黒な硬い芽が緑色がかり、中から赤紫色のつぼみがあらわれました。そして黄緑の花を開き、黄色い花粉を撒き散らしています。

第六十話 ひとはここに学びに来た

エリザベス=キューボラ=ロスは、死の床につく人々と「死にゆくことは怖いことではない」と語り合うことができたアメリカのお医者さんです。人間は学ぶために何度も生を繰り返す。これまで学んだことをさらに深めるためにまた生まれ変わるのだから、と。

ここから、病気も何かを学ぶきっかけであるという理解が出てきます。キューボラ=ロスのお母さんは、人の世話になるのが大嫌いでしたが、脳溢血で不自由になり、人生の最期にはどうやって人に世話をしてもらうのか学んでいったのだそうです。

キューボラ=ロスは、ガンなどの病気の告知をされたときの人の心の動きを「否定」、「怒り」、「取引」、「落ち込み」、「受け入れ」と理解しました。まず、そんなはずは無いと認めない。次に、なぜ私が?と神や人生をのろい、怒りを爆発させる。それから、これからはよいことをしますので助けてと祈る。それもかなわず、うつに。これらの過程を繰り返しながら、やがて受け入れることができると。

今日、私のある患者さんが初めて、文字盤を使い始めました。
彼の腕を支えながら一緒に絵を描いていても、思考がはっきりしていることは感じられ、描きたい色も選べるのに、それでも文字盤を使ってコミュニケーションしたくないのは、交通事故にあう前は大学教授だった彼の、深い怒り、悲しみ、諦めなのだろうなあと思っていたのです。

自分の息子の名前と年齢をゆっくり静かに人差し指で指し示していく彼の姿をみていて、「受け入れ」の段階にきているのだなあと心からうれしさがあふれ出てきました。

(間美栄子 2010年 3月1日 http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef)

PS. キューボラ=ロスの生い立ち(三つ子)も含め語られている講演集「死ぬ瞬間と死後の生」がユーモアもあり、わかりやすく、おすすめです。



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