アートセラピストのイギリス便り

アートセラピスト間美栄子のシュタイナー的イギリス生活のあれこれを綴った友人知人宛のメール通信です。

第三十八話 アイルランドびいき

2009-07-18 18:04:28 | 出会った人

* 経済、政治の悪化で、心配、という声も聞きますが、これはちょっと前にネットで見た日本のニュースです。
悪天のため千歳空港で26人が足止め。画像は男の人のインタビュー。「まあ、あしたは飛ぶというので,今夜はここに泊まろうと。」下のほうから子供の声が。「だいじょうぶ、だいじょうぶ」。カメラ、ゆっくり下りていくと、にっこり笑う小さな男の子の顔。
ポジティブな親にして、ポジティブな子あり。
以来、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」は私たちの合言葉になっています。

第三十八話 アイルランドびいき

永住権の申請にはイギリスとの強いつながりを申し立てなければならないのですが、「イギリス人のパートナーがいるので」、と一言いえたらどんなに簡単だったことか。
10年間、出会いには縁がありませんでしたが、誰のこともいいなぁーと思ったことが全然無いわけではないのです。

なずなの同級生のお父さんで、無職のシングルファーザーのJoeにひかれたこともありました。ぼさぼさのあたまで一日中バイオリンを弾いているようなひとでしたが、目が澄んでいて、なぜか味があるというような。
なずなを放課後預かってもらって迎えに行くと、Joeが子供たちのために、おいしそうなパンケーキを焼いていて、私もついご馳走になったりしているうち、だんだん親しくなっていったのです。Joeの借家は、ストラウドの商店街にも近く、玄関は使わず、いつもキッチンのドアから出入りしていて、誰でもひょいっと立ち寄れる気軽さをもっていました。

子供たちが遊んでいる間、小さなキッチンのテーブルで向かい合い、安い刻みタバコをくるくる紙で巻きながら、いろいろなお話を聞かせてくれる中でも、アイルランドに住むお父さんの、ヤギとろばと一緒に暮らす田舎の生活の話は特別で、彼のお父さんへの深い愛情が感じられました。

どこでも出かけてなんでも経験しよう、がモットーのわたしは、あるイースターの春休みになずなを連れて、Joeのお父さんの山の中の小屋を訪ねて行きました。水道はなく、洗い物は雨水を溜めたタンクからでした。飲み水は近くの泉に汲みに行きます。金色の砂がふわふわと舞う泉は、湧き出てくる水が清らかで神秘的でした。ストーブの燃料は炭化した草を裏山から掘ったもので、ぷかぷかとパイプをくゆらす優しいお父さんの名前もやっぱりJoe、でありました。

(間美栄子 2009年 4月1日)



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