南房総館山・なぎさの自然詩

カラスに捕食されたコチドリの卵


南房総にはコチドリとシロチドリが繁殖している海岸が数ヶ所あります。
今年はその内一つの海岸を重点的に観察しています。


その海岸で見つけたコチドリの巣(2024/06/03撮影)。
すり鉢状に穴を掘り、小さな貝殻の欠片が敷き詰められた所に卵が4個産んでありました。
その小さな貝殻をひとつひとつ集めたと想像すると、小さな体のコチドリに強い母性を感じ、とても卵を大切にしている事が伝わってきます。


更に巣の周りには流木や石ころがあり、卵を外敵から守る為に利用しているように見えました。



2024/06/13に同じ巣を見に行くと卵が無くなっていて、周りはカラスの足跡だらけでした。
同じ海岸では他にもコチドリの巣があるのですが、そこは親鳥が抱卵中なのを観察し砂浜を移動しました。


海岸の端まで歩き戻って来ると、そのコチドリの巣の近くにカラスの姿がありました。
離れていた約40分の間に、コチドリはカラスの襲撃を受けていたようです。
慌てて近づくとカラスが何かを食べているのが見えました。
その場所まで行くと、卵の殻と血痕が残されていました。
他の卵は無事なのかと思い巣へ近づくと、偽傷行為をする親鳥がいてカラスを誘導していました。
周りではもう1羽の親鳥が警戒音で鳴きながら行ったり来たりしています。
しかし別のカラスも卵を探しにやって来て、その後すぐに飛んでいきました。
慌てて卵を探してみると、全ての卵が無くなっていました。
直前に飛んでいったカラスは、少し離れた場所で恐らく卵を割って食べているようです。
隣にいるのはカラスのヒナのようで、口を開けているのが見えました。
これまでコチドリの巣の卵が無くなっていることを何度も観察していましたが、卵が捕食される場面を見たのは初めてで、とても衝撃を受けました。


この海岸は7月中旬〜8月中旬までの約1ヶ月間、海水浴場とキャンプ場が開設されます。
そのために使用する電気の為に、通年電柱を設置し電線も引かれています。
カラスはその電柱の上からコチドリを観察して、卵のある場所の目星をつけているようなのです。
恐らく何日もかけて、ずっと狙っているのだと思います。

更に砂止の為の杭が数ヶ所あります。

カラスはこの杭も利用して、コチドリの行動を見ているようです。
海岸には本来こういった高さのある物はありません。
カラスは高い場所から海岸を見下ろす為に、こういった構造物を利用しているので、コチドリより有利なのです。
コチドリは産卵後、孵化するまでの約3週間をずっと同じ場所で抱卵しています。
オスとメスで時々抱卵を交代して、餌を食べたり、水分補給して、また抱卵をする事を繰り返しています。
カラスはそれを上からずっと観察しているのだと思います。


構造物の隙間から見える海がとても小さく感じます。
こういった構造物の上面にカラス除けの為に突起物をのせる等の対策をしたら、コチドリの繁殖が成功する確率が高くなりそうです。
海水浴場となる館山市沖ノ島では電線を地中に埋めているそうなので、南房総市のこの海岸でも同じように出来るのではないかとも思っています。
現状を今すぐに変えることは難しいと思いますが、いつの日かこれらの構造物が全て撤去され、自然のままの海岸へ戻ることを願っています。


翌日の空は青く晴れていましたが、コチドリの巣が2ヵ所無くなってしまった海岸はとても静かに感じます。
親鳥は自分達の卵がひとつひとつカラスに捕られていくのを、どんな思いでいたのかと想像してしまいます。
卵を失ったコチドリは再度繁殖の準備に入るかもしれませんが、真夏の砂浜での抱卵は暑さも厳しくなるので気がかりです。
例えば5月の初め頃に産卵していたら、この青空の中をコチドリの幼鳥が翔んでいたかもしれないと考えると残念でなりません。
コチドリが一番最初の産卵で、何も心配のない子育てができるような未来がいつかきっとやって来ると信じています。





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