南房総館山・なぎさの自然詩

初夏のシロチドリ


冷たい風が吹く海岸は初夏とは思えないくらいの気温の低さと曇り空が寒々しい雰囲気です。
そんな中、海岸を歩いていると遠くでシロチドリが争っているのが見えました
それに加えてカンカンと言う金属音の様な間隔をあけた連続した音がしています。
何かと思っていたら砂浜でゴルフの打ちっ放しをしている音でした
シロチドリ達にゴルフボールが当たらないかと心配になりながら、更に歩くと、次に見えてきたのはテレビの撮影隊。
総勢15名程と犬3匹、テレビで見かけたことのある女性タレントさんがSUPに乗っています。
撮影が終わると、その犬の内大型犬1匹がリード無しで歩いていました。
シロチドリの繁殖するこの時期、その姿を見た時には出来れば距離を置いて見守る事が理想的な状況です。
特に犬はシロチドリを見つけると追いかけしまい、小さなヒナがいた場合にはその場で動かなくなる習性の為に犬に捕まれば、命落とす危険が高くなってしまうと思います。
犬の飼い主の方のモラルにも繋がる事と思いますが、そもそもこの海岸で絶滅危惧種のシロチドリが繁殖している事がほとんど知られていないのが事実なのです。
環境省と千葉県で絶滅危惧種となっているシロチドリですが、その行政対応は全くされていない様な状態です。
千葉県や南房総市でシロチドリの繁殖地である事を周知して、繁殖時期には海岸へ訪れる人達にルールを設ける事も必要ではないかと思うのです。
更に人間主体の法律ではない、野生動物の為の法律も必要ではないかとも思います。
南房総のこの海岸では、現在シロチドリの巣が2カ所あり、卵を合計6個確認しています。
その状況の観察を定期的に行っています。
この日もそれぞれの巣の状況を観察していましたが、シロチドリのメスの異常とも思える行動を見ていました。
それは鳴きながら上空を飛び回り、地上に降りると派手な動きの偽傷行為をするのです。
そのメスを観察しながら周囲を見渡していると、なんとヒナが2羽歩いているのが見えました。
今まで観察してきた巣とは別の巣があったのかもしれず、まさかの出来事に驚きました。


そしてヒナ達は側にいたオスのお腹の下に
潜り込み隠れました。
ヒナを抱えているオスは非常に興奮した
様子で、鳴いているのかノドを膨らませ、
首を伸ばして警戒していました。


その翌日は晴れて暖かく、週末を海岸で
過ごす人達で賑わっていました。
ヒナ達も姿を現し、暖かな日射しの下で
活発に動いていました。
シロチドリは人が多い中でも、
その状況に適応した行動を取っている
様子です。
そして昨日海岸へ行くとシロチドリ親子
に異変がありました。
前日は暴風雨が酷く、海岸のような何も
隠れる場所のない中でヒナ達がどのよう
に過ごしているのか心配だったのです。


海浜植物の群落の中にヒナ1羽とオス1羽
がいるのを見つけました
しかしもう1羽のヒナとメスがいません。
待っていたらオス達親子と合流するかも
しれないと思い、しばらく双眼鏡を覗き
観察していました。
いくら待ってもメスとヒナは現れず、
その2羽は居なくなったものと思われます。
恐らく他の動物に捕食されてしまった
可能性が高く、今まで観察してきた経験
から、多分カラスが原因だと想像出来ます。
ヒナを守るメスの母性本能とは、私の想像
を超えるものでした。
五日前に見たメスの異常とも思える擬傷
行為は、犬と人、他のシロチドリという
外敵が重なり、パニック状態になっていた
のではないかと思うのです。
もしかしたらシロチドリにも個体差があり、
激しい性格や臆病な性格など様々なのかも
しれません。
それに母性本能が強すぎると、捨て身の行動
に出て自ら命を落としてしまうのかもしれません。
残されたヒナをオスが無事に育てていけるのか、
この先どうなるのか見続けていこうと思います。
生息数を減らし続けているシロチドリを、
今までの様に何もせずに居ると本当に絶滅
してしまいそうです。
そんなシロチドリ達の為に出来る事は
ないかと、こうしてブログで発信したり、
現地でも少しですが活動しています。
その中で色々な変化が少しずつあり、
明るい希望が見えるようで嬉しく思います。
まだまだ前途多難かもしれませんが、
小さなシロチドリがこの海岸で子育てする
光景がいつまでも続くように願っています。
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