念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　
ふるさとや飾る大臼の疵あまた
両の手で温みとりつつ葛湯飲む

　　　　川　柳　　　　　
デパートのお節回れば目が堪能

念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　
木枯らしや視聴の狂言耳障り
ゆたんぽの名残留める袋らし

　　　　川　柳　　　　　
極月や「知らなかった」とは何処の人

念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　
近年は不在となりぬ冬座敷
手袋をかたみに履いて五指整ふ

　　　　川　柳　　　　　
ウイルスは品を替えまた所変え

念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　
遺りたる毛糸編み機の埃拭く
十字塔聖夜の連灯幾条にも

　　　　川　柳　　　　　
尿漏れは耐えた酬いの涙なり

念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　
上皇の春待月の誕生日
夜の咳独り家とて堪え気味

　　　　川　柳　　　　　
門松はしばし聖樹を肩代わり