念坊ひとり旅

　　　一行詩
ま三尺バーベナの花長月へ
荒れ庭の飛び交う翅や星はしる

　　　川　柳
月見月水にガラスに名残惜し

念坊ひとり旅

　　　一行詩
冷房の故障に泣くや一文無し
全身を白化粧塗る天瓜粉

　　　川　柳
トリチウム煮ても焼いても食えぬらし

念坊ひとり旅

　　　一行詩
涼をとる川辺の茶屋に夏の蝶
山雀の声に誘はる山路かな

　　　川　柳
通院は常より早め涼をとり

念坊ひとり旅

　　　一行詩
指揮棒見ず阿吽の呼吸蝉しぐれ
トリチウムあるかないかは鱧に訊く

　　　川　柳
放水は日本の湖で実証して

念坊ひとり旅

　　　一行詩
対峙せしバラ一輪に時往還
糸瓜咲く正岡子規の命覚ます

　　　川　柳
がむしゃらに桃喰う口に種あたる