

大館の市内を貫く除雪された幹線道路を五分ほど走って目指すキリタンポ鍋の
専門店に到着。タクシーの中でドライバーが独り言のように今年の雪は多いと
語った。雪が多いことはニュース、新聞などで知っていたし感覚的にも多い感
じがある。空き地でざっと一メートルぐらいだろうか。それはそれでよしとし
たいが、少し話は飛ぶが帰りのタクシーのドライバーにわざとらしくも雪が多
くて大変ですね、と話しかけたらそのドライバー曰わく、今年、雪は少ないで
すよと言った。旅人の我らは???でしかなかった。大館の人はおおらかで結局、
雪は雪でしかないのですな。
さてキリタンポ鍋だ。その店はウリがキリタンポ鍋であるが鍋の仕込み、出来
具合、酒飲みのタイミングを見計らって絶妙のタイミングで器に取ってくれる。
鍋が煮えるまで比内地鶏の唐揚げやハタハタを食って、本日何回目かわからない
黄金飲料にココロをフルわせたのだった。
さてキリタンポ鍋であるが具材は巨大キリタンポ、比内地鶏、極太の甘いネギ、
キノコ、それだけである。普段食べる鍋はここぞとばかりにたくさんの野菜、鶏肉、
豚肉などを入れる。結局、いろんな出汁が混ざってしまいややもするとスープだけ
が野菜、豆腐に吸われ、蒸発して最後は煮物のようになってしまい、追加でスープを
入れたりしてしまい結局、最後は鍋底でハクサイだけがのびている状況になるんだ
けど、あ、それって寄せ鍋というのでしたね。鍋の具材は少ない方がよいと気がつ
いたわけでした。
で、味はと聞かれると家の近所のスーパーで売っているキリタンポ鍋セットと相違
はなくまあそれなりでしたが、グルメ気取りの輩はさすが本場だとか出汁が上品で
素晴らしいなどとほざいてしまうんです。いやですね、知ったかぶりする奴、自分
を大きく見せたがるやつ。一番いやらしいのは自称プロと称する幼稚な驕りがある
人種。身の回りに必ずいますね。
このような人種は嘘で自分を固めているうちにさらに嘘を上塗りして何が真実で何
が虚勢で自分でさえもわからなくなってしまうのですね。歪んだプライドが真実か
ら目をそらしてしまうんです。これは病気。話が脈絡なくよたっているが、よくあ
るパターンで店の中に来店した有名人、野球選手の色紙、写真が飾ってあった。
そういう文化はある種の誇り。店側は来ていただいた、ゲーノー人種側はきて
やった、この色紙は家宝にすべし、そんな構図が出来ている。政治家なんてその
骨頂みたいなものでしょう。結局その店では普段あまり飲まない日本酒を二人で
桐のとっくりで一生、飲んでしまった。ウメーウメーだった。
タクシーを呼んでもらい宿へ戻る。宿ではもっと強い酒でまた飲む。ドライバー
にコンビニに立ち寄ってくださいと告げコンビニでツマミを買う。タクシーを
待たせて買い物などこそ非日常的なる行動である。待たせている間もメーターは
当然上がる。これは贅沢というものではなく単なるお金の浪費に過ぎない。
気になってしょうがないオレはさっさとカワキモノ関係のつまみを買い会計を
済ませたが子分1号のナガシマ君は惣菜コーナーでまだ迷っている。
早くしろこのタコ!オレは怒鳴った。
その間にもタクシーは収入を得ているのだ。
ナガシマ君の手には信じがたいきゅーりのキューちゃんと福神漬けがあった。
そんなものを買うのはいいけれと結局、箸をもらうのを忘れ、真夜中、雪の中
宿の駐車場の植栽の小枝を浴衣のまま4本、オリに行く羽目になったのだ。
小枝の箸から、柊の匂いがしていた。
これからは旅先では旅先で生えている木の枝を箸にしようと思った。
紅葉の葉っぱの一枚付いた小枝箸で京都あたりの神社の軒下でワンカップと
カニ缶で一杯やれたらそれは幸せなことだと思った。
また一つ夢が増えたのだ。
結局、体内のアルコール含有度は高値安定波動曲線を描き続けていた。
こうなるとどの状態がシラフで、或いは酩酊か自分でもわからなくなってくる。
この状態の説明はユージンのユージンに聞けばきっと丁寧に教えてくれるだろう。
酩酊状態と認識がないまま宿の布団にもぐると故郷が恋しくなってきた。12時間
目にしてホームシックになるのだ。
仕方がないので寝ることにした。長い一日の終わりである。