YEAR3210

風に転がる迷走日記

戯曲 故郷を想うとき

2012-03-25 15:44:35 | 演劇シナリオ



   故郷を想う時          
      
                                作 水野和彦            


            1


 山形県、新庄市。二月の下旬を迎えているその街は、テレビや新聞で報じられている春の予感を思わせるニュースなどとはうらはらに、厳しい寒さが街を囲む山々から吹き付けている。
新庄の駅から歩いて数分のファミリーレストラン。午後六時を過ぎたその店は家族連れやカップルで賑わっている。先に一人でその店に入っている原田涼子。コーヒーを飲んでいる。左手の逆さ時計を見る涼子。そのまま窓の外を見る。窓は外との激しい温度差で曇っている。外を走っている車のヘッドライトが滲んでいる。再び時計を見る涼子。そのままの視線で店の入り口を見る。
タイミングよく店に入ってくる女性、川瀬里奈。小走りで来た様子で少し肩で息をしている。神妙な面持ちで店内を見回している。そして涼子を見つけ、胸の前で小さく手を振る。涼子、満面の笑顔になる。

里奈    「早かった?」
涼子    「ううん、ついさっき。」

あわただしく手袋とマフラーをはずす里奈。

手を息で温め、大げさに震えるしぐさをする里奈。

里奈    「やっぱ、こっち、寒いわ。」
涼子    「今年は特別よ。雪はあんまり多くないんだけどさあ。」

ウェイトレスがオーダーを取りに来る。外国産のビールを注文する里奈。

涼子    「すっごい久しぶりじゃない?どうしちゃったのよ、急に。」
里奈    「おととしの、母さんの葬式以来かな?」
涼子    「そうだっけか?」
里奈    「確かそうよ。あの時はろくに話も出来なかった。天童のおじさんの所に
       電話したら、全然、知らない親戚だっていう人が来ちゃったりしてさあ。話す暇も       なかった。」
涼子    「ずっと、泣いてたし、そんな雰囲気じゃあなかったもんね」
里奈    「まだ、これからだって思ってたでしょう。て、言うか、まさか、そんなふうになる
       なんて思ってもいなかった。あの時、このまま自分も死んで
       もいいと思ったぐらいだった。」
涼子    「………」
里奈    「でも、もう、二年近くたったから平気になったけどさあ。それはもういいんだ。大       丈夫になった。… ところでさあ、みんなどうしてる?」
涼子    「妙子も智子もみーんな元気。今日は二人とも、話が急だったから都合つかなくて来       れないけど」

愛想のないウェイトレス、ビールを運んでくる。自分でグラスにビールを注いで飲む。

里奈     「忙しいんだ。」里奈、煙草に火をつける。
涼子     「妙子は決算の時期だからどうしても残業なんだって。智子は来週から試験が始ま        るから今回はどうしても無理とかって言ってた。」
里奈     「智子、仙台だっけ?」
涼子     「うん、学生寮に入ってる。」
里奈     「昔から、頭、よかったからなあ、智子は。」
涼子     「薬剤師の資格、取るとかって、こないだ言ってたよ。」
里奈     「ふうん、そうなんだ。で、たまには帰ってくるの?」
涼子     「ほとんど毎週。」
里奈     「毎週。」
涼子     「そうなのよ、やっぱり、こっちがいいんだって。」
里奈     「親離れ、してないんだ。」
涼子     「多分、そう。絶対そう。ところで、どうして急に来るって言ったのよ」
里奈     「暇だったからなんとなく。」
涼子     「本当にそう?それだけ?なんかあった?」
里奈     「別に、何にも。」
涼子     「それならいいんだけどさ。」
里奈     「……」

里奈     「でっもさあ、早いよね、高校、出てからもう三年もたつ。」
涼子     「あっという間だよ。」
里奈     「走ってる?」
涼子     「走ってない。ハラ、出てきたかも(笑)」
里奈     「走れない(笑)」
涼子     「とにかく、あの頃、よく走らされてたもんね。それしかなかった。雪ん中とかさ
        あ。」
里奈     「陸上部の連中、みんな元気なのかな。」
涼子     「すんごい元気よ。」
里奈     「肘折の合宿、覚えてる?」
涼子     「覚えてるに決まってる。忘れるわけない。早く忘れたいんだけど。」
里奈     「部屋で煙草吸って布団焦がしちゃってさあ。」
涼子     「あたしのせいでさあ。」
里奈     「涼子がいきなり煙を深く吸いこんで、むせちゃって、火のついた煙草、布団の上        に放り投げたんだ。」
涼子     「あの時の、塚田先生の顔、マジで怖かったもんね。」
里奈     「でも、あのあと、泣きそうにもなってた。自分の首も危ないと思ったんだよ、あ        ん時。」
涼子     「夜中に山道、三週も走らされた。苦しいのと怖いのでみんな泣きながら走ってた       もんね。」
里奈     「おかげさまであれで足腰が強くなったんだ。」
涼子     「あたしはあれで、一生、煙草は吸わないと思った。」
里奈     「あたしはあれで煙草覚えた。(笑)面白かったよね、あの頃。」

涼子     「東京、どう?」
里奈     「おもしろい。」
涼子     「あたしなんか、東京の生活なんて想像もつかない。わかるのはここよりあったか        いってことぐらい。」 
里奈     「東京、雪ないからなあ、雪なんかうんざりだ。見たくもないよ。雪のか
        わりにそこらじゅうに人が積もってるけどさ。」
涼子     「積もるほど人が多い?」
里奈     「まあ、そういうこと。涼子にはわかんないだろうけど、そんだけ人が多
        い。金曜の夜の歌舞伎町なんて、まっすぐ歩けない。もっともみんな酔っ払って        るから真っ直ぐあるってないんだけどさ。」
涼子     「毎晩、お祭りみたいなもん?」
里奈     「(笑)まあ、早い話がそんなもんだよ。」
涼子     「ふうん、で、みんなどこ行くのよ?」
里奈     「遊びに行くに決まってるじゃん。」
涼子     「どこに?カラオケとかクラブとか?」
里奈     「まあ、そうだけど、ようは酒だよ酒。酔っ払って騒いで男が女追っかけ
        て、女が男をだまして、そんなのが朝まで続く。馬鹿な男があたしみたいなのに        だまされて、そんで気がついてみたら自分がだまされたりしてさ。お酒とお金と        男と女がぐるぐる回ってんだ、東京は。」
涼子     「ん、よくわかんないなあ。あたしにはよくわかんない。それより、男をだまして       んの?」
里奈     「もののたとえだよ。そんな感じってこと。だまされたことはあるかもしれないけ       ど、だましたことはありません。」
涼子     「ならいいけど。それより里奈、そのお化粧ってさあ、向こうじゃみんなそんなな       の?」
里奈    「 あ、これかあ、これは向こうでもちょっと特別かな、まあ、このぐらいなら東京
       にはいくらでもいるけど。」
涼子    「さっきからここ通る人、みんな横目で見てる。このあたりじゃあかなりなもん         よ。」
里奈    「知ってる。だから田舎っていやなんだ。なんか変わったもの見るとすぐ物珍しげに見      る。そんですぐにあれは変わってるとかさあ、どこの誰だとか言ってさ。そんであ       りもしないこと隣近所に言いふらす。だから田舎はいやなんだよな。」
涼子    「気にしなくていいんじゃない。どっちにしてもここには住んでないんだから。そん      なことよりもさ、高校出てからもう三年もたつんだよ。なんかすっごい早い。三年で      そんなに東京になじめるものなの?」
里奈    「一年もいりゃあ充分だよ。すぐなれる。でも最初の一ヶ月は電車の乗り方とか駅の       中とか覚えんの大変だった。酔っ払っても家まで帰れるようになれば立派な都会人       よ。向こうはさ、こっちと違ってなんもかもが変わるのが早い。早すぎる。こっち      は何年たっても変わらないだろう。どこぞのじいちゃんが死んだとか、台風でサクラ      ンボがやられたとか、そんなのしかない。」
涼子    「確かにそうかも。」
里奈    「東京なんかさ、半年もたてば住んでる人間も町も流行の洋服もみんな変わっちゃ
       う。彼氏も彼女もとっかえひっかえだし。でも、ほとんどの人間があたしみたいに      田舎から出てきたもんばっかりなんだ。みんなそれをはずかしいことのように思って      てさあ。ろくに挨拶もしないでアパートの隣の部屋に誰が住んでるかもわからない。      隣の部屋で誰かが死んでてもしばらく誰も気づかない。」
涼子   「なんで誰も気づかない?」
里奈   「一人暮らしだからに決まってるだろ。誰かが気がつかないとわからない。電話かけて      いつも出ないとか、親しい人が不審に思ってたずねてくるとかさ。じゃないと誰もわ      からない。」
涼子   「で、どうなっちゃうの?」
里奈   「死んで腐って臭って警察来て、あ、死んでる、なんてそんな世界。」
涼子   「どうしてそんなところ、住むの?なんかつらい、さびしくない?」
里奈   「確かにね。でも田舎にいるよりはまし。少なくともあたしにとってはね。そんだけだ      よ多分。田舎は面白くない。東京は面白い。そんだけだよ。まじめに考えればさあ東      京でその気になれば、いくらでもお金が稼げるってことかな。涼子はずっとここだか      らそんなのわかんないと思うけど。わかんないほうがいいのかもしれないけどさ。」
涼子   「確かにわかんない。でも、どうやってお金、稼いでんのよ。水商売?」
里奈   「今はキャバクラ。わかる?」
涼子   「そんぐらいはわかる。」
里奈   「これが結構稼げるんだ。頑張れば結構稼げる。でも、出てくお金も多いからほとんど      残らないんだけど。世の中、不景気って言うけど結構みんな持ってる。あたしの客な      んか、お金に糸目つけないってのもいるよ。男ってみんな馬鹿だよ。店に通いつめ       て、結局、最後はあたしの体が目的なんだろうけどね。」
涼子   「まさか、そこまでしちゃってるの?」
里奈   「さすがにそこまで、出来ない。彼氏いるし。お店の子で売っちゃってるのもいるけ      ど。」
涼子   「彼氏、いるんだあ。はあ……。でもこっちでも山形の市内でそんなことしてるのもい     るってうわさを聞くけど。彼氏って何やってる人?」
里奈   「とび、最近、スカイツリーとかやってる」
涼子   「へえーすごーい」
里奈   「そういうご時世なんだよ。こっちも開けてきたってことじゃない。」
涼子   「新幹線がここまで来るようになってからなんか変わった。変になったような気もす       る。かなり無理すれば東京に日帰りで遊びにいける。」
里奈   「近くなったってことかな。でもやっぱりここは遠いけど。」
涼子   「ねえ、さっきから気になってるんだけどさあ…」
里奈   「ああ、これね。こんなの普通よ、いまどき高校生でもやってる。」
涼子   「…刺青…。本物?」
里奈   「うん、あたしは胸だけだけど、肩とか太ももとかいろんなとこに書いてるやついっぱ      いいるよ。
涼子   「……」
里奈   「書きたいんだったらしょうかいするよ。ちょっと痛いけどいい色出すやつ知ってる。
涼子   「いい、いい、そんなのぜったいいい。」
里奈   「(笑)そりゃそうだ。涼子に、こんなの似合うわけない(笑)」
涼子   「なんか話だけ聞いてると東京で何してるんだかわけわかんない。いつも何食べてん
の?」
里奈   「大体、起きるのが夕方だろう。そんでコンビニで買ったもの食べて、店に出たら客が      頼んだもの適当につまんで、そんで、店、跳ねたら、店の子とラーメン屋かなあ、大      体そんな感じ。」
涼子   「だめだあ、そんなのじゃ絶対,体、壊す。」
里奈   「ビタミン剤、いろいろ飲んでるから大丈夫よ。」
涼子   「絶対よくないよ。ビタミン剤が体に悪いとは言わないけど、あんまりいいとも思えな      い。ちゃんとご飯食べなきゃだめよ。」
里奈   「東京のご飯、まずいんだあ。あれってきっと水が悪いからなんだろうな。生水飲む       と、やっばいなってつくづく思う。」
涼子   「こっちで育った人は絶対そう思うよね。」
里奈   「当たり前だよ。」
涼子   「いっそのこと、こっち帰ってきてこっちで仕事見つけて、こっちで暮らせばいいじゃ      ないよ。」
里奈   「帰ってこれるわけがないよ。」
涼子   「どうしてよ。」
里奈   「去年、かあちゃんが死んだでしょ。こっちに親がいるわけでもないし、親戚もいな       い。ずっと借家だったから帰る家もない。場所がない。とおちゃんはあたしがまだち      っちゃいときに女作って家、出ちゃってるしさ。酒田のほうにいるって話をずっと前      に聞いたことあるけどもう関係ない。ずうっとかあちゃんに女手ひとつで育てられて      高校まで出してもらって。だからいつか東京でマンションでも買って、呼んで暮らそ      うと思ってた矢先、かあちゃんが死んじゃって。帰ってきたくても帰る場所がないん      だよ。帰る意味がないんだよ。」
涼子   「でも、里奈の故郷はここだよ。ここしかないんだよ。ここで生まれてここで育ったん      だよ。確かにこの辺、冬は大変かもしれないけど、夏になったら肘折の山のほうなん      かすっごいきれい。いまだにここで生まれてよかったと思うぐらい。わざわざ都会で      そんなにすさんだ生活を我慢して送ることなんかないじゃないよ。」
里奈   「すさんでなんかいない、我慢もしてない!こう見えても東京の生活、楽しんでんの       よ!涼子にはわからないだけ!」
涼子   「……里奈…」

寒冷地の夜の老け込みは早く、店の客退けは早々で、まばらになっている。強力な暖房
がかけられているが寒々しい空気が流れている。


涼子   「帰ってきちゃえばいいでしょう」
里奈   「こっちに帰ってきてコンビニで働いてあんたらとファミレスでお茶飲んで暮らせっ       て?さっきも言ったけどあたしには帰る場所もないし意味もないんだよ。」
涼子   「東京にいるよりはぜんぜん幸せだと思う。」
里奈   「どこが?向こうとこっちじゃ稼げるお金のケタが違うんだよ。時給七百円で、コンビ      ニで弁当、売ってどこが幸せなのよ。」
涼子   「でも、そうやって暮らしてる友達もいる。」
里奈   「あたしにはもうそんなつつましさはないのよ。」
涼子   「そんなことない!あたしの知ってる里奈だったらそれぐらいのこと充分
出来るはずよ。」
里奈   「住むところが変わって時間が過ぎれば人は変わっちゃうものなのよ。」
涼子   「そんなことないよ。そうだ!こっちで暮らしながら、だれかいい人見つけてさあ、結      婚でもしちゃえばいいんだよ。そうだよ、家族を自分で作っちゃえばいいんだ。そう      だよ。」
里奈   「相変わらず涼子は涼子だ。」
涼子   「あたしの言ってること、なんか変?」
里奈   「ぜんぜん変じゃない。でも今ののあたしでは結婚なんて到底無理。」
涼子    「どうして?」
里奈   「それよりもさ、自分のほうはどうなのよ、彼氏とか出来たのか?」
涼子   「い、一応。」
里奈   「へえ、いるんだ。で、なにやってる人?」
涼子   「山形の中央郵便局。」
里奈   「うわ。超堅気じゃん。」
涼子   「でも、外勤だよ。」
里奈   「外勤って?」
涼子   「配達。」
里奈   「べつにそんなのどうだっていいじゃないこの不景気にそんないいとこないって。」
涼子   「いっつもやめたいとか言ってる。」
里奈   「なんで?」
涼子   「仕事、面白くないって。」
里奈   「面白い仕事なんか絶対ありえない。」
涼子   「うん、そう思う。」
里奈   「殴ってでもいいからそこにしがみついてろって言っときなよ。あたしもそう言ってた      って。関係ないけど。」
涼子   「そうだね。」
里奈   「結婚する気あるの?」
涼子   「向こうはあるみたい。でもあたしがまだ踏ん切りがつかない。結婚するって決めたと      してもわくわく出来ない。よくわかんないんだ。」
里奈   「そりゃあ、涼子がまだ遊びたりないからだ。」
涼子   「そんなことない。べつに遊びたいとも思わない。」
里奈   「男、いくつなの?」
涼子   「二十七。」
里奈   「ちょうどいい。」
涼子   「二つ三つ上がいい。」
里奈   「決めちゃいなよ。涼子が、うんって言えばいいだけのことだろう。迷うことなんかな      いよ。」
涼子   「そうなのかなあ。」
里奈   「涼子の場合、特にそう。」
涼子   「どういう意味よそれって。」
里奈   「そういう意味よ。」
涼子   「よくわかんないなあ。そんなことよりもさあ。ねえ、里奈。あたし、思ったんだけ       ど、今夜、家に泊まって。今から駅行けば切符、払い戻しが出来る。なにも明日の朝      に帰ってもいいんでしょう?ねえ、うちに泊まって。」
里奈   「そんなこと出来ないよ。」
涼子   「ねえ、どうして突然、あたしに電話なんか、かけてきて今日帰るなんていったの?し     かも日帰りのとんぼ返りで。どうして?」
里奈   「たまに涼子の顔見とかないと忘れる。あたしの顔も見せておかないと忘れられる。そ      れじゃあ困るからよ。」
涼子   「ねえ、今夜、家に泊まって。ねえ、そうしようよ。」
里奈   「涼子の顔、見ただけで充分だよ。それに…」
涼子   「それに?」
里奈   「涼子のお父さんやお母さんにこの顔、見せらんない。おめえ誰だって言われる。」
涼子   「そんなことない。」
里奈   「今は無理、泊まれない。何時か笑って泊まれる時が来るって思うけど、そう。そうで      も思ってないと東京で生きてらんない。やってらんない。」
涼子   「里奈…」

沈黙の時間、互いにテーブルだけを眺めている。

涼子   「本当に今夜、帰る?」
里奈   「うん。」
涼子   「そろそろ行かないと乗り遅れる。」
里奈   「駅までいい?」
涼子   「うん。今度、いつ来る?
里奈   「・・・・・・」
涼子  「ごめん、そうじゃない、いつ帰れるの?」
里奈   「何とか夏には帰って来たい。来てもいい?」
涼子   「当たり前でしょう。ここ、里奈の故郷なんだから。帰るところはここしかないんだか      ら。」
里奈   「・・・・・・」
涼子  「その前に東京に一回、遊びに行ってもいい?案内とか頼んでもいい?渋谷とか行ってみたい。」
里奈   「いつでもどうぞ。そのかわりおっかないかもよ。」
涼子   「おっかない?襲われる?」
里奈   「うそうそ、ぜんぜん大丈夫。もしもなんかあったら走って逃げればいい。それが一番      いい方法なんだ。」
涼子   「あたしたち、だてに陸上やってたわけじゃあない。」
里奈   「甲州街道突っ走って、奥多摩の山道走ればいい。だれもかなうやついないよきっ        と。」
涼子   「そうだよ、絶対そうだ。」

誰もいなくなったレストラン。窓の外には白い雪が降っている。故郷を昔と同じように寸文の狂いもなく、真っ白に染め上げている。
里奈の乗った東京行きの最終新幹線。まばらな乗客のの新幹線。里奈は座ろうともせずにドアの淵に立つ。ゆっくりと流れている故郷の街の灯り。もう当分、この街にくることもないんだろうと考えている。街並みが途切れ、新幹線はトンネルに入って轟音を上げる。里奈はそれを待っていたかのように声を出して泣き崩れている。

原発運転大賛成

2012-03-22 20:46:36 | ゲンシリョクハツデン
軽なのにこのサイズなのに室内はこの広さ。
軽なのに史上最高の広さ。室内空間。
驚きのスペース。缶ビールだって500ケース、
一部、まやかしがありますが、軽自動車のうたい文句にこんなのがたくさん並んでる。
限られたサイズの中で必要以上に余計なスペース。宣伝は
3.5㎥の中に4.2㎥のスペースがと言っているようだ。これはどー考えても物理的に
無理でしょう。広ければいいって問題ではない気がする。
軽自動車で広さを求めるのなら普通自動車でいいと思う。
孤独を好む人などにとっては狭さも魅力である。この車体サイズながら室内は
この狭小空間。孤独を好むあなたに最高の居場所を。そんな車があったなら
一部でかなり売れるのではあるまいか。省エネ、エコなどと騒ぐが時代は
何かたのしみを奪い去っている気がしてならない。
昭和52年、僕は埼玉県大宮市に本拠を置く暴走族の会員だった。それはそれは
道交法を遵守するときはする優秀な会員だった。その名を埼玉毘沙門天といった。
土曜日の夜8時に秋ヶ瀬公園に集まる。目指すのは晴海埠頭であった。
数百台のひねくれた車が終結する。それはそれでオレにはお祭りだった。
シャコタンはもちろん、高速ウインカー、ドアミラーは速攻検挙、今にしてみれば
信じられない時代だった。そのメンバーの中で親しくしていたタダシという男は
フェンダーミラーがだめでドアミラーが違法改造でケンキョなら、それならばということで
フェンダーミラーの足の部分を塩ビパイプでドア付近まで伸ばした。
警官とのやり取りでこれはフェンダーミラーだ、いや違う、これはドアミラーになる
といったやり取りがおかしくておかしくてオレは笑い転げていた。タダシは
当時マツダサバンナというロータリー高速車に乗っていた。
その車の燃費は800メートル/リットル。恐るべしでありますね。
たとえば銚子で満タンにする。満タンで佐原まで到達できない。小見川あたりが
限界。オレのセリカ1600GTVは3㌔/リッターだった。
しかし、しかしである。そのころ燃費という言葉は存在しなかった。
存在する言葉はハヤサ、モーテル(死語)のような室内の装飾、マフラーから発する
DOHCのエンジン音、カセットテープのオーディオ、そんなことばかりだった。
昭和50年代。そこには明日があった。若者も、年寄りも、犬もネコも、街も車も
牛乳石鹸も表参道も道玄坂も浅草ほうずき市も首都高も目黒エンペラーも成田の抗争も
錦糸町も全てががまぶしく輝いていた。
その時代を生きたことに感謝すべきだろう。そして今になりふと気が付いてこの国を見れば
すっかり荒んで荒廃している。経済問題、年齢構成比、自然災害の脅威、目をそらせながら
生きている。
確実に悪くなる一方の時代を生きていかねばならないことは決定的となった。
少し前までは20代の頃に戻りたいという気持ちがあった。20代の頃から再びい生きなおすのは
とてつもなくめんどくさい。そう思うようになった。
しかし今は違う。早く60代、定年という仕組みを過ぎ、国から月々、年金という小遣いをもらい生きたいという気持ちが強くなってきた。人間とは年齢とともに考え方は劇的に変化するものである。
それはもしかしたら本能的な死への準備ではなかろうか、そう思うのである。
そう今は思っていても明日になるとまた違うことを思っている。その繰り返しで年を重ねている。
昔、子供の頃、親の実家で飼っていた犬が重度の皮膚病に侵され、余命いくばくもなことが明確になった。当時オレの爺さんにあたる人は、このまま最後は土にかえるのだと言い。船で対岸の茨城県の松林の中にその犬を放しにいった。
あれだけ横たわり苦しんでいたその犬はその時、じっとオレの目を見つめていたのを思い出すのだが、その翌朝、干潮の朝、玄関の前でその犬は静かに笑って人間が起きてくるのを待っていたのだ。
犬は干潮を利用して限られた寿命を使い1㌔を超える海峡を泳いでわたってきたのだった。
その夜、その犬は玄関で堂々と死んだ。
死ぬことは怖くないこと、早くその心境に届きたい。そんな気分である。なんだか文章になっていない様な気がする。ま、いいかな。

予知能力

2012-03-16 21:35:47 | カモメたちの挽歌
住んでる家は海に近い。川にも近い。津波が来たらしぬしかない。
3/8の夜から時々家の上空に姿を見せるカモメが自分の家、近所の家の
棟の上にとまり夜中、鳴き出した。カモメたちは全てが海の方向に向いている。
こんなことはここに住んで初めてだった。
おれはその時、思った。これは間違いなく近いうちに地震が来るなと
確信した。その確信は当たった・・・・・
3/14、地震が過ぎるとそのカモメたちはきっぱりと一羽もいなくなった。
これすべて神に誓える本当の話です。
海底で地盤の変化が起こり海流が変化した。カモメたちはそれを察知して
少し内陸に避難したのです。間違いありません。
カモメはでたらめに小魚を食べているわけではなく、電磁波や潮の満ち引きを
全て本能的に理解していて生きていると思うのだけれど
思うに、海底の大崩落、変化が生じて海流にいつもと違う流れがあったので
安全な内陸部に一時的に避難したのでしょう。
先日の地震直後、一羽のカモメも見かけない。地震前の夜中。近所中の屋根に
数百羽のカモメがいた。この事実をどう解釈すればいいのだろうか。

最近クルマを代えたが写真は通勤時の燃費。27㌔/L。
これはすごい。もっと早くこんなことをしてくれれば
いいのに。

欲しいモノ

2012-03-09 11:19:37 | 東京駅八重洲口
突然、思いついたように何かが欲しくなる時がある。それがカメラだったり楽器だったり、食器だったりテントだったり虫かごだったり車だったり様々だ。欲しいものには運命的な出会いがあってそれはたくさん経験して時間をかけて手に入れたものもある。
今、一番欲しいモノは腕時計なんだけど運命的な出会いがなかなか無い。腕時計で欲しいと思うのはこんなの。長い針、一本だけで短い針、秒針、メモリなんか何もなくてバットで打っても壊れないような頑丈なやつ。毎日、分刻みで動いているが長い針、一本で1日を過ごせたらそれはどれほど素晴らしいことだろうか。針が真上に来るころ、さてヒルだ。ビールに焼きそばだな、針が真下に来るころ、さて風呂、刺身とビールだな、針が左斜め上に来るころ、さてバーボンだな。再び針が真上に来る頃、既に夢の中。そんな生活がしたいから針一本の腕時計が欲しくなる訳なのですね。でもそんな時計はないだろうな。あれば即座に買う。どこかに電車で出掛ける時、うっとおしいので腕時計はつけないが、やはり様々な問題は起こる。特に指定を取った新幹線なんかに乗り遅れると面倒くさいことになる。最近は見知らぬ他人に時間を訪ねる勇気がなくなった。特に都会では。時間はひとの腕時計を盗み見する。これは犯罪にならない。見る場所により犯罪になるかならないか決まる訳ですか
ね。車に乗ると今は殆どがデジタルの時計であるがこれは嫌なもので、あんたには残された時間はあまり無い、ほら見なさい、こうしてタイムは刻々と過ぎるのだ、爆発まで近い、急ぎなさい、と急かされている気がしてならない。だから針一本の腕時計が欲しくなるのです。携帯型の日時計なんかあったらすぐに買い、東京駅八重洲口の交番の隣で時間を調べてみたくなる。
「あなたはなにをしているのですか?」
「急いでいるから今の時間を調べているのです。これが道交法若しくは都民生活ガイドライン、労働衛生法、或いは薬事法に
抵触してケンキョされるようなことはないとフンダのですが。そこに立って影を作らないでくださいね。正確な時間が測れないので」」
でも意外と腹時計も正確かもしれない。

切り口の問題

2012-03-05 10:56:11 | 花王メリット
特に簡単に出来るインスタント的な食材方面にはアルミやポリ系のコブクロが付いていることが多い。インスタントラーメン、簡易食品、納豆、何とかの元、食品以外では詰め替え用のシャンプー、洗剤関係などそれらに共通するのはどれも指で切れる切り口がついている。気の利いたものはこちら側のどこからでもキレるかんねと書いてある。ところが切れない場合が多い。特にシャンプーなどは風呂の中で切ろうとすると指先が濡れていたり石鹸がついていたりすると切れない。特に納豆のからしなどの極小からしなどは至難である。仕方ないのでイトキリバで切ったりしてからしやシャンプーが口の中に入ってしまい焦ったりする。食材では切り口が見えなかったりする。結局、ハサミを使う。ハサミはえらい。ハサミさえあれば肉も野菜もナスのヘタも切れる。場合によっては箸やナイフ、フォークに代用出来る。髪も切れるし爪、魚の目、タコも切れる。ハサミに話の本筋がそれたが問題は切り口だった。切り口はまず見つけることから始まる。手が滑ると二度と切れない。切れても斜め
に切れて結局、開かなかったりする。虚しい。焼きそばの粉のコブクロなどはまずシャカシャカ振って遠心力で粉を片側に寄せる作業がある。それから切り口から切るがすっきり切れたらサイワイである。
シャンプーの場合、切り口から斜めに切れてしまうとなかなか出し切れない。絞り出しているうちに体が冷えてくる。貧乏性だからシャンプーの詰め替えは全部すっきり出さないと気が済まない。切り口、開口はもっと大きくならないのだろうか。
しかし、このような文でも一番難しいのは話の切り口である。ボブディランは批判という切り口から自己を確立させた。ビートルズは自由という切り口からその世界を確立した。
切り口から全てが始まる。
切り口が嫌なのはゴミがふたつになってしまうところにある。