今日NHK教育でTVシンポジウム「うつ病と躁(そう)うつ病を知る」というのがやっていた。
前半では精神科系脳科学研究で有名な加藤忠史氏の映像もあったが、パネリストは名古屋大の尾崎紀夫氏, 対人療法の水島広子氏, 漫画家の藤臣柊子氏という3人でちょっと迫力にかける感じであった。
漫画家の藤臣氏を除けば、前出の加藤氏を含む3人の精神科医はうつ病学会双極性障害委員会の主要メンバーである。そう考えるとこの番組は双極性障害の特に2型を意識したメンバー構成だと思った。
2009年のNHKスペシャル「うつ病治療~常識が変わる」は本当に一般にとってはスペシャルな爆弾番組だった(興味のあるひとはアーカイブや専門家ブログを参照してください)。
あまりにもこのスペシャルな番組の影響力が強かったためか、その後NHKは「ためしてガッテン」などでその火消に必死だった。「ためしてガッテン」に脳内物質薬推進者だった精神医学界の大物研究者が「薬は万能ではない。効くまで3ヶ月はみて」と出てきたときにはちょっと驚いた。
話を戻すがNHKスペシャルを前後して(たしかNHKだけでなくどこかの新聞社の記者が精神科クリニックの問題や薬、誤診を特集していたが)、厚生労働省やうつ病学会が脳内物質薬の副作用や多剤処方について注意喚起をしたのも同年だったと思う。
今回のシンポジウムでもうつ病や特に躁鬱病における精神療法や対人療法の有効性をとくに水島氏が指摘していた。
確かに認知行動療法あるいは医者の立場からいう精神療法はうつ病や双極性障害に有効な患者さんもいる(だたし以前ブログで触れた神田橋先生は双極性障害への精神療法、特に自省を促す精神療法には否定的である)。
けれど出演している水島氏のクリニックも含めて、対人療法や認知行動療法の健保適応の病院は非常に少ない(ちゅうかいまの厚生労働省の規定だと医師指導下しか適応でないし範囲も狭い)。
したがって自由診療になるので費用も非常にかかる(通常60分1万円~位)。
また自分にあった有能な精神科医を見つけるのが難しいのと同様に、自分にあった対人療法あるいは認知行動療法をしてくれる有能な臨床心理士やカウンセリング可能な病院を見つけるのはなかなか難しい。
シンポジウムで語られている理想が実際の巷ではなかなか見つけることはできない。それは現場の医療従事者たちはよく知っているはずだと思う。もちろんパネリストもだ(オンタイム情報ではないが加藤氏HPによれば「水島氏クリニック予約は慢性的にいっぱいだ」と書いていた)。
「絵に描いたもち」をいくら放送しても、それで「徒労」と「幻滅」を経験しても「希望」は与えられないと思う。