このあいだ、久しぶりに本屋へ行った。
このブログを見ている人たちもそうだと思うが、ネット通販に慣れてしまうと現実の本屋へいく機会が減ってしまう。本は仕事上でも趣味でもかなり読む。若いときに最初にアルバイトしたのは本屋だったが、検索の便利さやあと捜している本が専門書等のレアものだったりすると、結局いまどきはアマゾンとか楽天ブックスとかになってしまう。
だいたい本屋に行くと、心理と哲学と宗教の専門書棚のところと(今回は絵本も)、PC雑誌と文芸と文庫・新書を眺めて帰るというのがボクのパターンである。
帰りにふと生活・健康の雑誌系の書棚を見ると、「双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本」(講談社)があった。
うつ病学会大物研究者、野村総一郎氏監修のこの長いタイトル「双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本」がなかなか良くできている本だと思い買って帰った。
イラストをふんだんに使い、項目も多すぎることもなく少なすぎることもなく、非常に初心者にわかりやすい内容にまとめられている。たぶん野村氏のお弟子さんや講談社編集者も協力して、こうしたわかりやすい本が制作されたのだろう。
双極性障害(Ⅰ型・Ⅱ型)の症状、スペクトラム(グラデーション)理論の説明、本人・家族・職場関係者への助言や対応も十分に書かれている。病人当事者がいうのもなんであるが家族や周囲に「自分の説明書」として使えるのではないかと思う。
また抗うつ剤での躁転の可能性、遺伝・ストレスなど病因仮説も正直にまた判らないことは「判らない」と書かれていることにも好印象を持つ。
ちょっと個人的なことでいえば「躁にも鬱にもその背後に”依存心”が隠されている」と書かれていた。それが間違いとは思わないのだが、自分自身の感覚でいうと「自分にOKをだせない(周囲も不十分と思っているのでは?)」という方がぴったりくる(それに病的かはともかく人間自体「相互依存的」だと思う)。これは臨床心理でよく取り上げられる「自尊感情」あるいは幼年期に根拠なく家族等に肯定・愛されることで発達する「根拠なき自信」の問題に近いと思っている。妻に対しては兎も角、ボクの場合は周囲に助けを求めることをせず、自分自身ですべて引き受けて病気を悪くしていった印象がある。認知療法でいう「100%」を求める生き方だ(その意味では内海健氏の「うつ病新時代」の中の患者感情分析の方がぴったりくる)。
ボクの場合にはトラウマ、特にそれは幼いボクをいちばん間近で可愛がってくれていた人が自殺するという経験がある。通夜に幼いボクは大人に「なんで死んじゃったの?」と来る人構わず訊ねるが誰一人として説明してくれなかった。川に身を投げたので、たぶんすでに荼毘に附されていて身体的お別れもなかった。二十歳近くになってからこの記憶を思い出すのだが、いまでもその風景を思い出すと何とも表現できない存在の不安感に駆られる(専門用語で「対象喪失」とか呼ぶ)。
何にしても、この「双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本」はタイトルの通り、現時点で判っていることを「わかりやすく」書かれている本だと思う。