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置き去りにされた馬を回収してフィラ・ク監獄に再びとばされた私は、南の海岸線の探索を諦め、ひとまず砂粒バザールまで戻ってきた。
馬を休め、装備を修理し、頭から水をかぶってさっぱりしたあと、長椅子にだらしなく座り、バザールの住人たちと他愛ない世間話をしながら、だらだらと過ごしていた。砂漠のからっとした日差しを避けつつ、一仕事終えたあとのような、けだるい時間がたまらなく心地いい。
家具職人のゼルゼスが、アトイから頼まれていた水晶飾り製作を受けてくれると言った。最初、何の話かわからなかったが、だいぶ前にゼルゼスに頼みたいとアトイが言っていたのを思い出した。
「あなたと私の仲ですから」
ふふ、と微笑むゼルゼスに、私は素直にありがとうと言った。
できあがった飾りをアトイに持って行くと、頬を上気させ、食いつき気味に言った。
「バルハン王子に持って行ってくれないか…?」
私がニヤリとしてみせると、慌てて、他言は無用だ、と付け足してきた。普段は怜悧な女性が焦っているのを見るのは新鮮でもあり、どこかかわいらしいものだ。
バルハン王子に渡し戻ってくると、アトイは伝言はないのかと小声で聞いてきた。それらしい言葉はなかったので、ありがとうと言っていたことを伝えると、彼女は少しだけ肩を落とした。
伝言は、彼女にではなく私にあった。アクマンの動きが普通ではないと言う報告が上がってきているのだという。その調査を頼まれた。
殉教者の避難所から、聖所-節制-、イベルブオアシスへと辿っていくと、聖所やオアシスの周辺で不可解な襲撃事件が起きているという。アクマンが無差別に商団を襲っていたというのだが、私が遭遇したのは、ハスラやヒストリアの遺跡に出てくるような、古代モンスターだった。
アクマンのアトサが何か知っているのかもしれない。そう思って砂漠を縦断したが、私の話を聞いたアトサは、そんな馬鹿な、となかなか信じられないようだった。
ただ、彼はこうも言った。すべてを顧みず、古代の力だけを欲している者がいる。古代のアトルの力が間違って使われていないか確認が必要だ、と。
古代のアトル。かつてこの地で対峙した巨人生命体。探すのに少し苦労したが、砂と風の音だけが静かに鳴る砂漠の夕闇に、その姿はやはり異様だった。
アトサに状況を伝え、そのまま砂粒バザールに戻って、バルハン王子に事の次第を説明した。彼は、これ以上の判断は自分だけではできない、と国の上層部に話を持って行くことを決めた。その判断と決断は見事なものだ。できる男はこういうところが違うのだろう。
ふと、アトイの想いが報われるといいな、と思った。
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はい、黒い砂漠日記です。
バレンシア行路後編です。いや、後編というよりはたまたま話が続いた感じです。
アトイの水晶の話は、ゼルゼスさんの親密度が1000以上にならないと進まないものなので途方に暮れていたのですが、3件くらいお遣いごとの依頼をこなしたら700ぐらいまで一気に上がったので、あとは会話でゴリ押ししました。
あと、古代のアトルがもう一度出てくるとは思いませんでした。そして、前回見た場所とは違うところにいて、探すのにちょっと苦労しました。何にもないところだったので。
バレンシア東岸の探索はひとまずここまでにしようと思います。むしろ、北の天文台とかルード周辺なんかもまったく探索していないので、チャンスがあれば回ってみたいと思います。
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