無心のやうな物心
だからお寺さんの階段を上へ上へ...
あがるの好きだな。
" ただ登れ登るべし登るべし "
し...しかし雑念わく。
しかしさこんなに寒いんだしさ、
吐息の水タバコかエクトプラズム
もくもく出せるでしょ...はあああっ...
(( あれ?案外と、))
口から水蒸気は煙らなかった。
もっとよっぽど冷えこまなきゃ?
まるごと冷凍庫みたいな空気なのにね
樹木の隙からお日さんがお顔を光らかせて、
寒さが少ぉしだけやわらいだ気がしたよ。
撞けば福を招くという招福の鐘よ。
段々ちゃきちゃき着々のぼる
無心の無言になったころ、
遠くとおくの遥かまで響きわたる...
√ ごぉおぉんんんーんーんーんー
鐘の音が鳴った。
こんなに朝早くから
他にも参拝してる人がいる...
不意打ちにほんと不意が突かれたわ
梵鐘の音色って...いいな。
重いのに垂れこめず、
厚みふかくて。
行事があるでもない普通の日に
ここは梵鐘を撞けるのです、
またとない機会...
撞かせていただきますとも。
偶像といへど迫りくるのよ...貫かれる。
看破している
偶像を介して偶像を越えたところにある
次元のナニガシかと相見えたような。
わたし面目を果たしたわ、
合わせられる眼を具えて参りました。
達磨さんと伴侶と一丸になり
綱を握りしめる。
ずっしり触れた重い手応えに
自分の瞼もいくぶん上へ引っぱられて、
...クワッ
力んだ勢いまま両の眼かっぴらいた。
手にした綱へウェイトをかけて
引きあげれば撞木は揺れ...
√ ごおおおんーんーんー
招福の鐘、盛んに撞き鳴らし候。
達磨大師さん400日間を...
有難う御座いました。
微か...低く...厚む...音の尾が消えいる間、
佇んでいた。
黙し耳を澄まして
心に聴いていたのは...
寂の響き
そのものだったのかもしれず。
さあさ第二階段を登ってまことゴールです、
参りましょう。