父の実家をあとにして、次に向かったのは
高梁市の北にある母のふるさと、川面町。
途中で92歳と82歳の母の姉妹を乗せて
まずは賑やかに、ご先祖の墓参り。
墓所から望む山の斜面に実家が見える。
母の実家は神道なので、墓碑銘には奥津城(おくつき)と
記されているということを、今回初めて知った。
日あたりの良いなだらかな山の斜面に、階段のように
家々が立ち並ぶ、いかにも日本的な山村風景の中に
母たち姉妹の生まれ育った家はあった。
私が子ども時代に、度々夏休みに訪れていた頃は、
この家はまだわらぶき屋根のいわゆる古民家だった。
屋敷内には牛小屋や蚕部屋もあり、太い梁や囲炉裏
黒光りする長い廊下や縁側など、今でも思い出す。
でも、この家の思い出で一番印象に残っているのは
何と言っても、ここから眺める景色の良さだろう。
半世紀前と同じ風景が今も変わらず広がっていた。
あの頃、私は何を思い、この景色を眺めていたのだろう。
夕昏に 夜汽車の汽笛 山越えて
届けと祈る 懐かし我が家