ノラにゃんこが天国に旅立って一週間以上経った。
心にポッカリと大きな穴が空いたまま
この2年間に撮りためたノラの写真を整理しながら
在りし日の姿や様々な出来事を思い出したり
皆さまからいただいた温かい励ましのコメントに
お礼のお返事を返したりしながら
その間、何ともやるせない思いで日々を過ごした。
ノラにゃんこ物語~最終章~前・中・後編で
この一か月の出来事を振り返り
できるだけ事実をありのままに書くことで
私はノラが最後まで野良猫として
立派に生きた証しを残しておきたかった。
それは最期を看取った者にしかできないことであり
私にできる何よりの供養だと思ったからだ。
ならば、その後のことも事実として
ありのままに書いておかなければならないだろう。
これはあくまでも私の個人的な思いで
そこまで書く必要はないのかも知れないが…。
でも、やはり私としては全ての出来事を
記憶が確かなうちに記録に残しておきたいので
最初にお断りしておきます。
このあと、ノラの死に顔と亡骸の写真が出てきます。
ご覧になりたくない方は見ないで下さい。
もしも見て、不快な思いをされたようでしたら
あしからずお許しください。
あの日、ようやく苦しみから解放されたノラは
安らかな表情で永遠の眠りについた。
そして初めて、私たちはノラの体に触らせてもらった。
最期まで警戒心が強くて
今まで一度も撫でさせてもらえなかったが
ようやく頭や体を愛おしく撫でてやることができた。
「ノラ、よく頑張ったね!」と言いながら…。
ノラの体はまだ温かかった。
手のひらにノラの体温がほんのりと伝わってきた。
ついさっきまで、この小さな体で
最期の最後まで必死に生きようとしていたのだ。
その健気さを思うと、涙が溢れた…。
翌朝、夫とNさんが東のガーデンに穴を掘り
ノラの亡骸を埋葬した。
山庭に咲いている色とりどりの花と
”花より団子”派の、食いしん坊のノラのために
大好きなチュールをお伴に…。
それにしても、こんな小さな体で
よくもまあ、たった一人で毎日毎日長い距離を歩いて
雨の日も風の日も、そして雪の日も
ご飯を食べに通って来てくれたものだ。
「ホンマに凄いやっちゃ…」
この2年間、良き相棒のような存在だったノラに
最後の別れの言葉をかける優しいオジサン。
そして悲しみの中、土を埋め戻し
墓石を置いて、花とロウソク、線香を手向け
3人でしばし手を合わせた。
こうしてノラの弔いの儀式は終わった。
やがてノラの体は山の土に帰って行くだろう。
この山の近くで生まれ、山の中で野良猫として生き
そしてこの山で最期を迎えたノラにとって
魂が天に召された後の亡骸を葬る場所としては
これ以上相応しい場所は他にあるまい。
思えばノラは、よくここを通って
遠くのねぐらまで帰って行ったものだ。
時にはここの草むらで寝そべったりもしていた。
いわばノラのテリトリーなのだ。
その馴染みのある安心な場所に眠らせてくれて
「オジサン、オバサン、ありがとう!」
「ボク、嬉しいです!」
おそらくノラもそう言って喜んでくれるはず…。
私はそう信じたい。
ノラにゃんこが天国に旅立った翌日から
私はこの「ノラにゃんこ物語~最終章~」を書き始めた。
ノラという名の一匹の野良猫が
この山で生き、そして見事に猫生を全うしたという
ノラが生きた証しを残すために…。
しかし今、思うに…もしかすると私は
自分自身のために書いていたのかも知れない。
余りにもあっけなく逝ってしまったノラ。
その事実を現実のこととして
なかなか受けとめられなかった私にとって
この一連の出来事を振り返り
事実をありのままに書き記すという作業が
辛い現実を受け容れるためには必要だったのかも…。
そんなふうに思うようになった。
ノラを失った喪失感が消えたわけでも
悲しい気持ちが癒えたわけでも、もちろん無いが
今はすぐ近くにノラが居て
とびっきりの笑顔で私を見ているような気がする。
「オバサン、元気を出して!」と言いながら…。
そうだね、元気を出さないとね!
ノラに負けないように、オバサンも頑張るよ!
そうなのだ。
ノラは私の心の中で今も生き続けているのだ。
それでいい…いや、それがいい。
私にとってノラにゃんこは、永遠に不滅なのだ。