スコットランドの首都エジンバラから
イングランドの湖水地方へと向かう途中に
バスの車窓から見える景色は
どこまでも続くのどかな田園風景。
その中に点々と見えるのは…
もこもこしたお尻のヒツジたち。(笑)
広い牧草地で草を食べたり、草むらで寝そべったりして
自由気ままに過ごしているように見える。
湖水地方に近づくにつれ空が明るくなってきた。
久し振りに見る日差しの当たる草原の中で
ここでは牛が…これまたのんびりと座り込んでいた。
やがてバスは湖水地方のグラスミアのホテルに到着した。
ホテルの名前は「ダッフォディル(水仙)」
英国を代表する詩人ワーズワースの有名な詩と同じだ。
実はこのホテルのすぐ近くにワーズワースが新婚時代を過ごした
ダヴ・コテージ(Dove Cottage)という家があるのだ。
「子どもはおとなの父である」という有名な一節をふくむ「虹」や
最も有名な詩「水仙」もここで暮らした時代の作だという。
そのダヴ・コテージの隣りには
ワーズワース博物館&アートギャラリーもあり
どちらも一般公開されていて
当時の部屋や家具調度類、遺品、創作活動に関する遺品
直筆の遺稿などを見ることができる。
でも私たちが訪れた夕方にはすでに閉館されており
残念ながら見ることはできなかったのだが…。
ワーズワースがこよなく愛した村グラスミアは
素朴で落ち着いた雰囲気がどこか古い日本の村に似ていて
ふと子どもの頃の懐かしい郷愁に誘われた。
石塀の手すりに取り付けられた「Public Footpath」の標識。
休日にはこの道を楽しんで歩く人々もいるのだろう。
グラスミアの村を散策していて道端で見かけた
紫色の西洋シャクナゲ。
こちらは青紫色の西洋オダマキ。
ごく普通の道端にごく普通に咲いている美しい花々。
ガーデニング大国イギリスの原点は
こんなところにあるのかも知れないなと思った。
ホテルのすぐ近くの丘にもヒツジたちがいた。
胴体には赤や青の印がつけられていて
親子だろうか…ひたすらに黙々と草を食べている。
それにしても、こんなに行く先々で
それもこんな近くでヒツジにお目にかかるとは…。
ロンドンしか知らなかった私にとって
このヒツジの光景はイギリスの新たな一面の発見だった。
それほどヒツジの印象が強烈だったのだ。
このヒツジの顔はどうだ…(笑)
これほど嬉しそうな表情で野を駆けるヒツジの姿を
私は今まで見たことがない。
いや、想像すらできなかった。
今にも人間の言葉を喋り出しそうな気がして
まるで絵本や児童文学の世界が
そっくりそのまま目の前に現れたような…
そんな不思議な感覚がした。
世界に先駆けて自然保護に取り組んできた
イギリスのナショナルトラスト運動。
その中心地であるこの湖水地方に足を踏み入れて
私がまず最初に感じたのが
このヒツジたちや道端に咲く花のように
動物も植物も生き生きとしているということだ。
この土壌があって
ピーターラビットやクマのプーさん
不思議の国のアリスなどの
個性的で愛すべき動物が登場する児童文学が
イギリスに生まれたのかも知れない。
このヒツジとの出会いからというもの
イギリスと言えばヒツジ…
ヒツジが妙に気になってしょうがないのだ。(笑)
今日はここまで…次回はフットパスだ。