ノラにゃんこ物語~最終章~前編の続きです。
5月29日、梅の実を収穫。
4kgの大豊作、今年も美味しい梅ジュースが作れそうだ。
フラウジュリーポールセン。
この日、ノラは朝も昼も顔を見せず
夕方遅くになってようやく姿を現わしたが
変な鳴き声をあげていつもと何だか様子が違う。
目の方は前よりも良くなっていたが
オジサンがご飯をあげてもなかなか食べようとしない。
何度も声をかけるとようやく近づいて来て
2~3口食べただけで、大好きな牛乳も飲もうとしない。
「ノラ、どうしたん?昨日は元気に食べとったのに…」
心配そうに尋ねるオジサン。
「おまえが食欲が無いなんて珍しいなぁ~、調子が悪いんか?」
なおも声をかけるが、ノラは答えない。
ただ、何か言いたげな表情でじーっと見つめるだけで
すぐにどこかへ行ってしまった。
せっかく来たのに、食べないなんて…初めてだ。
お腹が空いてないのに、わざわざ何しに来たのだろう?
ノラにゃんこの不可解な行動に首をかしげる私たち。
アレコレ考えてみるが、答えが見つからない。
それどころか、どうしても悪い方ばかりに考えてしまう。
「もしかして、もう来んかも知れんな…」
ポツリと、漠然とした不安を口にするオジサン。
「まさか、最期の挨拶に来た?」
私もノラの身に起きた何かの異変を感じていた。
そんな重苦しい気持ちで迎えた夜9時頃のこと。
私がミニログの寝室に行こうと母屋の勝手口を開けた時
足もとを茶色の物体がサササッと動いた。
暗がりだったので、一瞬、野性の獣かと思ったが
おそらくノラだったのだろう。
案の定、その翌朝の5月30日。
夫が朝早く、私を起こしに来たので行ってみると
テラスのベンチに置いた猫ベッドにノラが居た。
昨夜の茶色い物体はやはりノラだったようで
猫ベッドで小さく丸まって寝ていた。
何だかとても調子が悪そうで
朝ご飯のカリカリや牛乳を出しても見向きもしない。
やはり、これは何かおかしい。
山庭のシンボルツリーのスモークツリー。
赤茶色の煙のような花穂がモクモクと咲き出した。
この日ノラは、お向かいさんの草むらで
目を閉じて、まるで修行僧のような佇まいで
一日中じーっと動かずに居た。
そして夕方にはまた猫ベッドに入って
虚ろな目つきで一点を見つめたまま
相変わらず何も飲まず食わずでその日は終わった。
5月31日、朝見るとまだノラは眠っていた。
「ノ~ラ!」と優しく声をかけるオジサンに
薄目を開けて、声にならない声で鳴いて応えるノラ。
落ち着ける姿勢を探して時々体位を変えているが
相変わらず、何も口にしようとしない。
まさに修行僧の断食のようだ。
この日私は、コロナワクチン接種の予約をしていたので
「ノラくん、またね!」と声をかけ
後ろ髪を引かれる思いで山荘をあとにした。
これが見納めになるかも知れない、と思いながら…。
その日、昼頃、夫から写真が送られてきた。
何と!自分で山庭に下りて行き
スモークツリーの樹の下で寛ぐノラの姿だった。
もうダメかも…と思っていたのに、これにはビックリ!
真夏日のような強い日差しを避けて
涼しい木陰に寝そべったり
レンガ敷きのテラスの上や
ガーデン椅子の下で体を休めたりして
スモークツリーの樹の下にず~っと居たそうだ。
でも、ノラが来始めてから2年間
今まで一度もこんな場所で寛ぐ姿は見たことがない。
ノラにゃんこは何を思って
この山庭のシンボルツリーの樹の下で
しんどい体を休めていたのか…未だに謎だ。
しかし、そのお陰でこの日
山庭でたっぷりとノラと一緒に過ごすことができ
オジサンはとても嬉しかったらしい。
ひょっとすると、ノラの大サービスだったかも…。(笑)
6月1日朝、送られてきた写真は
相変わらず猫ベッドの中で体を休めるノラの姿。
そして、「ノ~ラ!」と何度も呼びかけるオジサンの声と
微かに返事するノラの鳴き声が入った動画。
夫が私にノラの様子を伝えようとしてくれたのは
とてもありがたいし、嬉しいのだが
しんどいノラにとってはハタ迷惑だったかも…(笑)
しかしその1時間後、夫から電話がかかってきた。
「ノラが居なくなった!」という。
別荘仲間のNさん宅にノラの様子を伝えに行っていた
ほんの15分ほど留守をした間のことらしい。
Nさんも常にノラを気をかけ心配してくれていたのだ。
急いで付近を探したが、どこにも居ない。
ほぼ丸3日、水も食べ物も飲まず食わずの弱った体で
一体ノラはどこへ行ってしまったのか…。
続きは次回の後編で…。
※申し訳ありません。また予想外に長くなり
「本文は、30000文字以下にしてください」という
メッセージが出てしまいましたので
あしからずお許しください。