事件が起きたのは一昨日のことだ。
夕方、いつものようにオジサンがノラにご飯をやろうと
網戸を開けて食器を室内に取り入れて
ご飯を移し替えていた時
突然ノラがご飯めがけて跳びかかってきたのだ。
幸い吐き出し窓のレールに置いてある板にぶつかっただけで
オジサンに害は及ばなかったのだが…。
私はその時、台所で夕飯を作っていて
異変を知って駆けつけた時には
ノラとオジサンの間にはピリピリと張り詰めた空気が漂っていた。
そして、驚いたオジサンは自分が攻撃されたと思い込み
思わず「こらぁ~!」と大きな声を出して
持っていたお箸をノラめがけて投げつけてしまった。
それに驚いたノラは恐れをなして慌てて走り去って行った。
「これだけ毎日ご飯をあげているのに…何だ、あの態度は!」
「攻撃をしてくるなんて…絶対に許さない!」と
オジサンの怒りは収まりそうもない。
逃げたノラは5~6m程離れた畑の柵の間から
顔を覗かせてこっちをじーっと見て様子を窺っていた。
「ノラ、おいで!ご飯があるよ!」と私が何度も声をかけるが
いつまでも警戒して動こうとしない。
しかし、その場から立ち去ろうとはしないので
ご飯が気にはなっているようだ。
私とノラがこうしたやり取りをしている間に
頭を冷やし冷静さを取り戻したオジサンもテラスに出て来て
「ノラ、ごめんな…。もう怒らんから、おいで!」と
姿を隠したノラに優しい声をかけ始めた。
しかし、やはり近づいてくる様子は見られない。
「もう、来ないかもしれないな…。」
「今まで築いてきた信頼関係が一気に崩れてしまったかも…」
オジサンもオバサンも事の成り行きに戸惑いながら
色々とノラの気持ちに思いを巡らせた。
お腹が空き過ぎて待ち切れなかったのかも…。
いつもはノラの目の前で食器にご飯を入れていたのに
今日に限って室内で食器にご飯を入れたので
もしかすると、自分の食器を取られた気になったのかも…。
それとも、やはりノラ猫だから攻撃的なのか…?
でも、いくら考えても納得のいく答えは見つからない。
そうこうしている内にふと気がつくと
いつの間にかノラがテラスにこっそりと姿を現わしていた。
そして私たちの様子を恐る恐る伺いながら
ご飯の入った食器に少しずつ近づいてきた。
やはり空腹には勝てなかったようだ。(笑)
もちろん、オジサンもオバサンも脅かさないように
室内からそ~っと見守ることにした。
やれやれ…最悪の結果だけは免れたようだが
また以前のようにチラチラとこっちを気にしながら食べていた。
そして食べ終わるとすぐに何処かに行ってしまった。
いつもならしばらくテラスで寛ぐのだが
やっぱり警戒しているのだろう…。
その様子を見て
「明日の朝は来るだろうか…」と心配するオジサン。
たかがノラ猫、されどノラ猫…。
ネコ一匹でこんなにも心をかき乱されるなんて…。
ノラ猫との付き合い方は本当に難しい。
そう思い知らされた一昨日の出来事だった。
さて、翌朝ノラは…。