天神橋筋商店街のある居酒屋での会話から―。
「初鰹?あんなん江戸の趣味や。食えまっかいな。不味うて。いちばんうまいのは戻り鰹!10月のカツオや。あれは(脂がのって)うまいでえ」。
「昆布のうまいところ知ってるか?四角に切った残りの切れ端。四角に切った部分はなア、『小倉(昆布)』なんぞ一箱4千円5千円もする。けど、あの端は安うてうまいんや」。
「鰹のいちばんうまいところ知ってるか?」「トサ~ノォコオーチイノー、、、」「いやちがう。鰹のうまいトコや。メンタマ(目玉)!これはうまいでえ」「そんなもん趣味趣向やないか!」「いやちがう。それがうまいんや。メンタマ。最高のごちそうやでえ」。アルコールが入って、ちょっと舌もつれさせながら漫才調の会話は続く。
「河豚(ふぐ)の肝。これも痺れるなァ。肝に、真水をザアザアかけながら針を束ねて突っつく。そうやってちょっとだけ血を残しておく。それを食う。坂東三津五郎はその河豚で死んだが最高の死に方やでェ」。
こんな調子で、浪速っ子はいじましい食の美学を自慢する。エエかっこしいを嫌い、恥知らずに食の極道を好む。それが大阪人のバイタリティの源にもなる。
来阪した義妹夫婦は「うまい、うまい」といってフグ料理を喜んだが、ぼくは、すぐに「こりゃ冷凍もんや」と舌(見)ぬいた。ちかごろのてっさは、冷凍もんで安いが舌が痺れるようなのはあまりない。うまいもん食って死ぬのは本望というのが大阪人気質なのだ。
鰒好きと窓向きあふて借家哉 一茶
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