妻は正月用の料理を朝からはじめている。娘は年賀状に葛飾北斎の龍図を刷りこもうと色出しのテストを繰り返している。原画の赤色がきついというのだ。原画通りがいいで、と言うが気に入らないらしい。
愚老は正月用の不足の品を買いにでる。帰りに千里南公園へ寄る。オヤッ!年より連中が10人ほど牛首ヶ池の四阿に屯している。近づくと望遠レンズカメラを据えておしゃべりしているのだ。大晦日のヒマ人か。
近頃見かけなくなったホームレスの男性のことを思い出す。50代か60代か、丸顔で小柄だった。ボストンバッグに蝙蝠傘を括り、この四阿か公園のベンチでいつも本を読んでいた。人に目を合わすことはぜったいしなかった。薄汚れた身なりだったが髪は後ろにきりりと束ねていた。ものを口にしている姿は一度も見たことがない。この公園は静かだが食料を得られるところではない。もっといいところへ“移住”したのだろうか。それとも…。この人も家族があったはず。99%の一人。なにか言いたいことは胸の内にあるはず。なのにぼくは見て見ぬふりをしてきた。きょう会ったとしても「よいお年を」なんて白々しくて。
豊かになった日本の大晦日。今夜は華々しくNHKの紅白歌合戦が繰り広げられる。マスメディアは、社会から脱落した「敗北者の群れ」には目を向けない。なぜだろう。(写真上=千里南公園のメタセコイア、下=同上ジュリアン)
歳晩のまち美しく整いぬ 愚老
夜回りのサーチライトに無宿の眼 同
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ノーやん
fm
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