limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

ミスター DB ㊶

2018年09月03日 14時03分31秒 | 日記
けたたましい笑い声が“耳”から聴き取れた。それが、KとDBのご帰還の合図だった。部屋へ雪崩れ込んだ2人は、ソファーに向かい合って座り、ネクタイをむしり取った。「DBの名演技のお陰で、万事順調だ。この調子なら、あの憎たらしい小僧は間違いなく自滅する。Yも失脚に追い込めるし、我らの復権は半ば果たされたも同然だ!」Kはご機嫌だった。「まずは、シャワーを浴びてサッパリしよう!冷や汗でベトベトして気持ちが悪い。DB、さあ、行くぞ!」「そうしよう。リフレッシュしないと酒がマズくなりそうだ」DBも同意した。バスルームからは、ギャーギャーと声が聞こえて来た。「気付かれている気配は無いな」ミスターJ達は肩をすくめて互いの顔を見合わせた。「あの脳天気がいつまでも続くとは限らんよ!」ミスターJはボリュームを絞り、コーヒーを淹れに立ち上がった。

KとDBがシャワーを浴びている隙に、N坊達とF坊達は相次いで、Pホテル5階の「司令部」に帰還した。彼らがもたらした詳細な情報によって、KとDBがZ病院で取った行動とミセスAとの話の内容、院内の詳しい図面から、Z病院内部の様子と堅固な警備体制が、明らかになった。N坊達とF坊達は、見聞き・調査した全てを子細に、ミスターJ達に伝えた。これにより、「司令部」に居ながらにして、Z病院での行動予測・推察が可能になった。「ご苦労だったな、4人共。ともかく、これでわざわざZ病院へ行かなくても予測が立てられる。N、F、部下の皆さん、一息つきなさい」DB彼らを労い、コーヒーを淹れてやり、休息を取らせた。だが、N坊とF坊の表情は冴えなかった。“ZZZ”と青竜会についての話を聞いたからである。暫しの休憩の後、秘書課長の部下2人は、早速「報告書」の作成の為、秘書課長と協議に入った。彼らにも切迫した表情が浮かんでいた。彼らを突き動かしているは「巨悪を倒す」と言う一念と、一刻も早くY副社長へ「情報を届けける」と言う執念であった。KとDBは、呑気にバスルームで「ひと風呂」浴びていて、中々出てこない。リーダーは「KとDBは何処で“祝杯”とやらを挙げるんでしょう?このままでは、次の配備に影響が生じます!」とミスターJに言った。「うむ、それはそうだが・・・、おい!誰か聞いていないか?KとDBは何処で“祝杯”とやらを挙げる?」とミスターJが誰何した。するとN坊が「中華街の△珍楼だと言ってました。裏は取ってませんが・・・」と答えた。「ジミー・フォンの店か、それは何処で聞いた話だ?」リーダーが聞き返した。「KとDBがホテルのラウンジでコーヒーを飲みながら、周囲を警戒してた時です。部屋へ戻る前ですよ」N坊が答えた。「それなら、間違いないな。△珍楼なら、ロケーションとしては最高だ。リーダー、ジミー・フォンにコンタクトを取ってくれ。今夜、伺うとな」ミスターJが言う。「ジミー・フォンに、カモられるのを覚悟でですか?」リーダーは気が進まない様だ。「ジミー・フォンだって青竜会の名前を出せば、素直に協力するだろう。カモにされてるのは、フォン達だって同じだ。青竜会の力を削ぐことが出来るなら、向こうも歓迎するだろうさ!」ミスターJは意に介する様子はない。「誰を送り込みますか?」「大隊長に一任する。収音マイクが使える者なら誰でもいい。ついでに大隊長にも伝えておいてくれ。具体的な指示は、私が出すと言っておけ」「では、早速手配にかかります」リーダーは携帯を取り、連絡を取り始めた。

シャワーを浴びたKとDBは、バスタオルを腰に巻き付けただけの状態で、ソファーに踏ん反り返った。その様は巨大な「食用蛙」と大差なかった。DBはずっと気になっいた事をKに尋ねた。「そろそろ聞きたいんだが、あの憎たらしい小僧を自滅に追い込む手とはどんな手か聞かせて貰えないかね?」Kは指を口に当ててから「それは、俺だけが知っていればいい事だよDB!アンタが知っていると万が一の場合に、マズイ事になる。俺は会社を辞めた人間だ。だが、アンタはまだ会社に籍があるし、生き延びてもらう必要がある。俺が万が一にもしくじった場合に、鉄槌を下せる人間を残しておかなくてはならない。半年前の教訓からするとだな、Yの背後には常に陰の実働部隊が居る。それが誰なのかは分からんが、その陰の部隊は実に巧妙に我々の動きを察知し、常に先回りをしていた。今回も、その陰の部隊が動いている可能性は否定できない。今の所、そう言った気配は感じられないが、予防線を張って置くのは必要だ。それらを総合的に考えると、DB!アンタは計画の裏は覗いてはならん!万事全てを知っていると、Yの手で消されてしまうだろう。そうなれば、次の手が打てなくなるだけでなく、憎たらしい小僧が生き延びてしまう恐れもある。多分、今回の計画は成功し小僧は自滅するだろう。だが、証拠を残すのは危険だ!もし、Yが嗅ぎつけたら、DB!アンタの身もタダでは済まない。俺は、出発するにあたって、パソコンのデーターを消去しただけでなく、その他の証拠になりそうなモノは、全て処分するか、DB!アンタの菜園の小屋の下に埋めて来た。陰の部隊に悟られないためだ。俺がどんな手で物品を集め、仕掛けを用意したかは俺自身しか知って居なければ、計画が露見する心配は格段に下がるし、後腐れも考えなくていい。DB!アンタは、俺様Kに“計画実行に当たり、協力を強要された”と言う立場に居て貰わねばならないんだ!だから、悪いが“これ以上、知ろうとしないでくれ”。俺は明後日、計画を実行した後、一時的に海外へ高飛びする。ほとぼりが冷めるのを待つためだ。その間に、憎らしい小僧がどうなったか?を調べるのはDB、アンタが頼りだ。それには、Yから何の咎めも受けないで居てくれる事が絶対条件だ。俺が何をし、どんな手を用いて準備をしたか?さえ知らなければ、官憲だって証拠不十分で釈放せざるを得ない。Yだって証拠が得られなければ、処分の下しようがない。いいか!今回の実行犯はこの俺Kなのだ。DB!アンタはやむを得ず協力させられた“被害者”に成りすますんだ!そうすれば、万事が上手く行く。どうだ?納得してもらえるかな?」DBは暫く腕組みをして考えていた。ヤツもY副社長のしつこさや狡猾さはイヤと言う程、思い知っている。にくらしい小僧を葬るとすれば、ここはKの言う通りにするのが最善だった。「分かった。俺は裏を覗かない。詳細も一切知らない。それを押し通せばいいんだな?K!」「その通りだDB!俺の灰色の脳細胞に全てが格納されていば、万事が安心だ。さあ、△珍楼へ出かける時間だ。支度をしよう。今晩は“偉大なる勝利”を祝して、ぱーっと騒ぐぞ!」Kの口元が緩んだ。「では、いざ!祝いの席へ」DBも尻馬に乗った。2人は、着替えを済ませると「遂に勝った!Yも失脚だ!」などと口々に言いながら、部屋を出て行った。目指すは横浜中華街、△珍楼だ。

KとDBの会話は“耳”を通して5階の「司令部」の全員が聴いていた。ヤツらが横浜中華街、△珍楼へ向かうため、部屋を出たのを確認すると、リーダーは「司令部」から出て行った。2人の出発と移動手段を確認する為だ。間もなく戻ったリーダーは「ヤツらの出発を確認しました。タクシーに乗り込んで移動中です。ナンバーはこれです」と言ってメモをミスターJに渡した。「直ちに、機動部隊へ通報しろ。追尾開始だ」リーダーは携帯で指示を送った。「Kにしては、念の入った計画だな。DBを生かすか。だが、そうはさせん!2人揃ってお縄を頂戴して貰わなくてはならん!」ミスターJは決然と言い放った。そして秘書課長の方へ向くと「皆さんの任務は、これで終わりです。このテープと共に報告書をY副社長へ提出して下さい。なるべく正確に見聞きした全てを、ありのままに伝えるのです」そう言って秘書課長にテープを差し出した。「しかし、KとDBの計画の全貌については、何も掴めていないのと同じです。証拠も隠滅されているじゃありませんか・・・」秘書課長は肩を落としていた。手掛かりは現時点では何もないのだ。「心配は無用です。証拠は必ず掴んでご覧に入れましょう。証拠さえ揃えば、計画の全貌も見えてきます。そう私が言っていたとY副社長へお伝えください。そう言えばお分かりになりますよ」ミスターJは自信を込めて言った。「分かりました。とにかく至急戻ってY副社長へお伝えしましょう。では、失礼します。吉報を待っております」秘書課長と2名の部下達は、疲れ切ってはいたが、会社へと戻って行った。彼らは想像を絶する任務をやり遂げて、帰社するのだ。Y副社長も彼らの帰社を待っているに違いない。そんな彼らの後ろ姿を窓から見送ったミスターJは「さて、こちらも次の手を打たねばならん。NよFよ、ホテルの地下駐車場への侵入は可能か?」と聞いた。「勿論、手は考えてあります」N坊とF坊は即答した。「ただ、今すぐと言う訳には行きません。まだ、ホテルへチェックインして来る宿泊客は居るはずです。駐車場係が居なくなる時間帯になるまでは手は出せません」N坊とF坊は時計を見ながら「後、1時間後なら、頃合いを見計らって侵入出来ます」と答えた。「Kの車のこじ開けも含めてか?」ミスターJは目を細めて聞く。「はい、そっちの方が楽なくらいです。それで、何を探すんですか?」「この4本のペットボトルをKが用意したモノとすり替えるんだ。恐らくトランクだろうが・・・、その他に車内も不審なモノが無いか捜索するんだ!それだけでいい」ミスターJの指示にN坊とF坊は少々面食らった。「ZZZは探さなくていいんですか?」「ああ、Kも今回は学習をして来ている。ZZZは車内からは発見されないはずだ。ZZZは、恐らくDBの菜園の小屋の周囲に埋まっているだろう。残りがあればの話だが・・・」ミスターJはそう当りを付けた。「リーダー、“基地”に残っているメンバーは誰だ?」「はい、ドクターとシリウスと車屋の新人の3名です」「よし!3名に緊急指令を出せ。DBの菜園の小屋の周囲を徹底的に洗え!とな。丁度夜だ。誰にも見咎められずに捜索が出来る。ブツは少量の粉だ。多分、油紙にでも包まれているだろう。それにまだ、掘り返してそれ程時間が経過していない。見つけるのは難しくはないはずだ。直ちにかかれ!」ミスターJはピシリと言い放った。リーダーは直ぐに“基地”へ指示を伝えた。「彼らは、5分以内に出発します」「そうか、私の勘が当たっていれば、必ずZZZは見つかるはずだ。NよFよ、詳しく話して欲しい。Kはパソコンを初期化したと言っていた。初期化したパソコンのデーターを元に戻す手はあるか?」ミスターJは真顔で2人に尋ねた。「Kの話からすると、初期化しただけの様ですから、データー復活ソフトを使えば、覗ける可能性は高いですね。初期化しただけでは、パソコンのデーターそのものが消える訳ではありません。例えて言うなら“表面を均した”だけに過ぎません。ソフトを使って掘り返せば、中身は大抵丸見えです。ですから、データーを完全に消すとしたら、ハードディスクを物理的に破壊するか、Windowsを消してから別の暗号ソフトでハードディスクを上書きするしかありません。それをやられたとしたら、お手上げですが、Kの話ではそこまで頭は回っていませんね」N坊とF坊はなるべく分かりやすい言葉を選んで答えた。「では、Kのパソコンさえ手に入れば、ヤツが何をしたか?を見る事は可能なんだな?」「ええ、時間は必要ですが、それ程難しい話ではありません」「“基地”にシリウスが居るのなら、時間も短縮出来るでしょう。シリウスならKの足跡を辿るのも容易でしょうし」F坊は言った。「ドクターも居るのなら、Kの清涼飲料水の分析も出来る。そこに俺達が加われば、作業効率は格段に上がりますから、Kの悪行の証拠を掴むまでの時間は半日ぐらいあれば暴けるでしょう」N坊がおおよその時間を示した。ミスターJは決断した。「よろしい、2人共ご苦労だが、地下へ侵入した後、出来る限り速やかにKの自宅へ向かってくれ。そして“基地”でパソコンをこじ開けるんだ!ZZZと言う物理的証拠と、青竜会との関係を示す証拠を何としても手に入れるんだ!そして、その証拠を持って再びここへ戻ってくれ!時間との闘いになるは分かっているが、今それをやらねばKもDBも潰せない。ヤツらに正義の鉄槌を下すには、お前達2人の力が必要なのだ。済まんが宜しく頼む。遅くとも明後日の朝までに必ず戻って来るのだ!」「はい!何とかやってみましょう。まずは・・・、地下へ侵入しなきゃなりませんね。早速、準備に掛かりますよ」N坊とF坊は“侵入”の用意にかかった。ミスターJは、リーダーに「遊撃部隊に連絡して、車を1台回送させろ。2人をKの自宅へ送り込むんだ。時間が惜しい。最速で戻れる車両を手配しろ!」と命じた。「それと、リーダー。例のNPO法人について、内偵を進めてくれ!青竜会の関与について、詳しく知りたい。Kが青竜会の関与を事前に察知していたかどうか?をだ。もし、知り得ていたなら更なる罰条が付け加わる!NとFが集めてくる情報の裏を取って置かねばならん」ミスターJは決然と言った。「直ちに手配に掛かります!」リーダーは携帯を手にして、次々と指示を発し始めた。「証拠だ。確たる証拠を得ねばならん!折角ここまで計画が明らかになったのだ。県警を動かすには、確たる証拠が無くてはならん。時間は限られとるが、何としてもヤツらの尻尾を掴んで見せよう!これは、我らの意地でもあり、誇りを賭けた闘いだ!負けるわけにはいかん!」ミスターJは明後日の朝までに全てを賭けて挑もうとしていた。文字通り「意地と誇り」を賭けた時間との格闘だった。