ニュージーランド移住記録「西蘭花通信」

人生の折り返しで選んだ地はニュージーランドでした

日本円切り下げ

2023-10-01 | 経済・家計・投資
インフルで苦しんだり弱ったりしているうちに9月が終わりました(笑)

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「円の切り下げが起きているのか!」
最近の日本や日本円の動向を遠くからぼんやりと眺めているうちに、ふとそんな考えが浮かんできました。通貨の切り下げは通常、通貨に固定相場を採用している国で自国通貨安に振れるよう為替レートを引き下げることなので、日本のように変動相場制を採用している国には無縁に思われる概念ですが、果たしてそうなのか。

1997年7月にタイのバーツを皮切りに始まったアジア通貨危機は、アジア通貨の暴落を引き起こし、各国は通貨切り下げを余儀なくされました。きっかけはヘッジファンドの空売り攻勢だったものの、立ち向かう術はなく売りが売りを呼ぶ展開になりました。

当時のアジアで厳格な米ドルとのペッグ制(自国通貨の相場を米ドルと連動させる固定相場制)を採用していたのは香港だけで、他のアジア諸国は緩いペッグ制を採用しつつ、90年代の高度成長が基軸通貨とのシンクロを下支えしてきました。しかし、成長に陰りが見え始め固定の水準が正当化されなくなるや、その隙を突かれたのです。

今の日本もそんな状況に似ている気がします。日本円は変動相場なので自国経済や他国との金利格差を反映して、上にも下にも時々刻々と動いていきます。なので不意を突かれ、ある日突然朝起きたら風景がか変わっていたという可能性は限られるとしても、経済状況を反映してこのままジリジリと円安が進んでも買い向かう勢力がなければ、実質的な切り下げと変わらないのではないでしょうか。

9月に国際決済銀行(BIS)が発表した8月の円の実質実効為替レート(2020年100とする)は73.19と過去最低になりました。実質実効レートとは、ある通貨の価値を他通貨との相対評価で示したもので、為替だけでなく物価変動や貿易量などを加重平均で算出する「通貨の実力」と言われるもの。NZのように経済規模が小さく貿易相手国が限られる国では、非常に重視されるレートです。

円の実力が過去最低を更新したその過去とは、1970年8月。1962年生まれの私がわずか8歳だったのかと思うとクラっとする53年ぶり。BISは実質実効レートを約60ヵ国/地域以上で使用されている通貨を基に算出しているので、日本円は米ドルだけでなく他通貨に対しても全面的に売られ、減価しているといえます。60数か国となれば経済先進国ばかりでなく、発展途上国/地域も多数含まれ、その比率は4割に迫ります。

途上国と言うと「貧しい国、遅れた国」という根強いイメージがあるかと思いますが、イメージとは裏腹にそうした国々の人も大挙して日本を訪れ、北海道から九州まで新幹線を乗り倒し、旅行三昧、「安い、安い」と食べ歩き三昧に買い物三昧、アクティビティー三昧を繰り広げているのが現実で、これは円の全面安に負うところでしょう。

今年5月にバンコクで会った若い女性は「毎年約2週間日本に遊びに行くのを楽しみにしている」そうです。仕事柄タイの平均よりは所得がありそうですが、富裕層という訳でもなく働く独身女性でした。この逆が毎年できる若い日本人が全体の何%いることか。円の実力が低下しているゆえに、海外のどこへ行っても割高感があることでしょう。それ以前に、2週間の休みをまとめてとることさえ難しそうです。

1970年以来の円安となれば、1985年のプラザ合意での米ドルの切り下げ、合意参加国通貨の切り上げも、日本円に限っては巻き戻されているということなのでしょうか。1984年に日本を出て日々強くなる円を肌身で感じ、目の色を変えて買い物をする日本人観光客の姿を見てきた身には、同じことが今、訪日する外国人のインバウンド消費で起きているというのは容易に想像できます。まさに為替のマジックです。

過去最低の実力となった円がここで反転する理由は見当たらず、海外との金利格差、賃金格差、インフレ格差?!が早々に是正される可能性も低そうです。過去には円安となれば製造業の輸出ドライブで恩恵を受けることもできましたが、せっせと海外に生産拠点を移したことでその恩恵もかなり剥落してしまいました。今手っ取り早く得られる恩恵となれば、サービス輸出であるインバウンド消費をおいてほかにないのでは。

大阪のカジノ主体のIR構想はその象徴に感じます。外国人がカネを落としていく大人のディズニーランドを造れば、有効な外貨獲得手段になります。さらに全国津々浦々に新幹線を通し、世界的な観光ブームに乗る外国人に全国をくまなく回ってもらえば、都市部だけでなく地方にもカネが落ち、雇用や消費が発生します。

これには課題もあります。観光関連などサービス業は製造業などに比べ、往々にして雇用形態が流動的で(季節性があるなど)賃金が安いのも特徴です。またコロナの反動も一因になっている世界的なオーバーツーリズム問題も深刻です。観光客の数にインフラが追いつかず、追いついた頃にはブームが一巡しているリスクもあります。そして何よりも、過去最弱になっても着地点が見えてこない円安が最大の問題でしょう。


『1%の金利が広告になる世界
しかも税引後は0.79%』
と、出張中の息子が送ってきた写真

世界的なインフレに各国があえぎ
つつも高金利を受け入れる中、日
本のねじれの継続は衝撃的で、い
つ、どこで、どう修正されるのか


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編集後記「マヨネーズ」 
自分で字数に限りをつけているのでかなり尻切れトンボですが、とりあえず雑感更新。



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ガブリエル後の風景

2023-02-17 | 経済・家計・投資
サイクロン被災者支援のクラウトファンディングが目標1.7億円目指して奮闘中。12時間で9,000万円到達。至る所での本気の支援が感動ものです。

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2月12日からNZを襲い始めた超大型サイクロン・ガブリエル。ノースランドからオークランド、さらに南下し東側沿海部を3日間にわたって進み、先々で甚大な被害をもたらしました。災害の全容は不明ながら、犠牲者185人を出した2011年のクライストチャーチ地震に匹敵するのではないかとみられています。今までは欧米やオーストラリア、日本での出来事だった気候変動の影響を、NZが経験した初の事態となりました。

17日現在、死者8人、1万人以上が家を失い、オークランドやホークスベイではそれぞれ4,000軒以上が停電したままです。ギズボーンは浄水場の故障で今朝から水道水が一切使えない状況に陥っています。さらに通信機能の喪失、道路や橋の寸断で孤立化した地域が多数発生し、空と海から水や食料の供給が始まっています。ホークスベイを中心に4,500人以上と連絡が取れない状況が続いているのは大きな不安です。

連日の報道に接し、家族、家、事業や仕事、家財や自動車、家畜やペットとありとあらゆるものを失った人たちが直面する現実に胸が塞がる想いです。しかし、NZが直面する現実から目を反らすこともできず、報道を追い続けています。1日も早く例え臨時のものであってもインフラが復旧し、被災者が安全な場所で寝起きでき、国の支援や民間の募金、保険金が届いて、国を挙げて復興に向けて立ち上がれるよう祈るばかりです。

災害規模や経済損失が明らかになるまで、まだまだ時間がかかるでしょうが、いずれクライストチャーチ地震との比較や1931年にネイピアに壊滅的な被害をもたらしたホークスベイ地震(死者256人)との比較分析などが出てくることでしょう。クライストチャーチ地震の2011年は国勢調査の年でしたが、地震により2年延期され2013年に実施されました。今年もまた3月7日に国勢調査が予定されていますが、延期になる可能性もあり、最新の人口動態や社会の把握なくしての分析は一段と難しくなりそうです。

すべてが不透明感に包まれる中で、ひとつだけかなりの確率で実現しそうなことがあると感じます。それは住宅市況の底打ちです。市場は2021年の金利反転以降、住宅ローン金利(2年物平均)が3.46%から現在は7%台へと急激に上昇する中、じりじりと調整を続けています。特にオークランドの調整幅は大きく、最新統計(REINZ調べ)によると、1月の平均物件価格(メジアン)は前年比でオークランドは22%の値下がりとなり、オークランドを除く全国平均の9%の値下がりと比べ大きく低下しました。

このタイミングで大災害が起き、オークランドのみならずホークスベイでも多くの人が家を失いました。政府主導で臨時宿泊施設を提供しているものの、数やエリアに限りがあることは明白で、資金があったり保険金受給のメドが立っている人たちが賃貸契約や住宅購入に動きだすことは想像に難くありません。また被災地から比較的被害が限定的だったオークランドに、家と職を求めて一部の人が移って来ることもまず間違いないでしょう。そうした需要が住宅の値下がりに歯止めをかける可能性をみています。

(※公園の大木もばったり)



クライストチャーチ地震後の人の移動の素早さには目を見張るものがありました。移民国のせいか老若男女の決断と実行の速さは想像以上で、家や職を失った人が伝手のあるなしにかかわらずクライストチャーチを離れ、隣国オーストラリアにまで飛んで新生活を築くケースも多々ありました(NZとオーストラリア間は国民同士の居住・就労が自由)。被災の規模は違えど直後に起きた東日本大震災との相違が印象に残りました。

その中で最大の受け皿となったのが、最大都市オークランドでした。すぐに市内の賃貸市場が干上がりました。かつての隣人もその時に転入してきた被災者でした。クライストチャーチの自宅は無傷だったものの、夫婦とも職場が立ち入り禁止地区に指定された市の中心部だったため、ご主人の勤務先がオークランドにポストを用意してくれました。すぐに家を売却し5月には引っ越してきたので、震災からわずか3ヵ月未満の早業です。収入がなければローンが払えず、家には問題がなかったのですぐに売れたそうです。

今回最も集中的被害を受けたとみられるホークスベイ地方は、人口(2022年)18万人と、クライストチャーチの38万人の半分以下で、容易にその地を離れられない農家が多いことも特徴です。しかし、オークランド市内でも家を失った世帯が多数ある上、地方の被災地の勤め人や若い人を中心に雇用機会が多いオークランドに転居する動きが進めば、2011年のような賃貸市場の逼迫が繰り返される可能性は十分にあるでしょう。

2011年は震災後に政策金利(OCR)が0.5%引き下げられ、オークランドは『空からキャンディー🍬が降って来た』 (NZやオーストラリア英語で言う「飴まき」(lolly scramble)。日本の餅まきや餅投げのようなもの) も同然でした。地震の被害がまったくないのに大幅利下げという飴が降って来て、需要増とともに世界金融危機以降低調が続いていた市況に一気に火が付いたのです。今回は高インフレ(直近7.2%)のただ中の上、政府の災害支援や復興需要等で利下げ余地はないでしょうが、賃貸市場の逼迫が契機となり売買市場がゆるやかに底入れしてくるのではないかとみています。さて、どうなるか?

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編集後記「マヨネーズ」 
2023年は景気後退必至とみられていましたが、災害復興需要でリセッションが回避される可能性がグッと上がったのでは?
がんばれ、ホークスベイ
がんばろう、NZ

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ティワイポイント

2021-01-19 | 経済・家計・投資
夏休みにNZ最南端のサウスランドに行ってきました。2019年に就航したオークランド=サウスランドの玄関口インバーカーギル間の直行便は、コロナの影響にもかかわらず定期便として定着しています。国内線では最も長い路線で、飛行時間は2時間。

インバーカーギルには2018年に1度行きました。市の南端、その先は南極というブラフは、有名なブラフオイスターの産地で毎年5月にはブラフオイスター・フェスティバルが開催されています。NZ航空がチャーター便を飛ばしてツアーを催行しているので、フェスティバル参加に日帰りで訪れました。それ以外は移住前に観光客として、クルマで2回訪れたことがあります。

最果ての地で風光明媚な分、観光業、特に外国人観光客への依存度が高い地域だけに、コロナの影響など再訪で思うことはいろいろありましたが、その中で非常に印象に残ったのが意外にも、ティワイポイントでした。ティワイポイントとは英豪資本の鉱業資源メジャー、リオティント(出資比率79.36%)と、住友化学(20.64%)の共同出資で1971年に開業したNZ唯一のアルミニウム精錬所のある場所です。

オーストラリアで産出した原料をわざわざここに運び込みんで精錬しているのには、訳があります。アルミの製造には大量の電力を必要とするため、水力発電で安く十分な電力が賄える、NZ最南端の地に半世紀前に白羽の矢が立ったのです。

精錬所建設はNZにとってまさに国家プロジェクトでした。政府は1971年にフィヨルドランド国立公園内のマナポウリ湖に地下水力発電所を建設し、精錬所への電力供給を保証し、同年にティワイポイントが開業しました。以来50年が経過し、生産の90%が輸出されているため、アルミはNZの主要輸出品目の一つでもあります。大半の仕向け先は日本です。現在、ティワイポイントだけで全国の電力消費の実に13%に達し、サウスランド経済の10%に相当しています。

しかし、精錬所は新型コロナのロックダウンが開けて間もない2020年7月、電力費用の値上がりとアルミ業界の見通し悪化を受け、2021年8月をもって操業を停止すると発表しました。2008年のリーマンショック後にも同じような計画が持ち上がりましたが実現には至りませんでした。しかし、今回はコロナもあり状況がさらに深刻です。

発表が政府への圧力であることは明白でした。電力供給を行うメリディアンは国有電力会社で、大量の電力を必要とする以上、電力価格が採算性を大きく左右するため、大手といえども一外資民間企業が政府に大幅な値下げか、撤退かの選択を迫ったのです。操業停止となれば、直接雇用や関連業種で2,600人が職を失い、サウスランド経済が大打撃を受けることは必至で、政府は操業延期への交渉に乗り出しました。

奇しくも今回の滞在中に、精錬所と政府は電力料金の見直し等で合意し、2024年12月までこれまで通りの操業を続けることが決定しました。50年前の国家プロジェクトは首の皮一枚でつながりました。関係する自治体も国に対し交渉を強く要求していたため、従業員や関連業者、自治体にとっても操業延期は遅れてきたクリスマスプレゼントになりました。

ブラフヒルという見晴台からティワイポイントがよく見え、「行ってみよう!」と急に思い立ちました。岬の先端全体が敷地となっており、一般道から入っていくや道の両脇に鉄塔がズラリと並ぶ異様な光景は圧巻で、まるで鉄の鳥居を時速100キロでかいくぐっていくようでした。全国の電力の13%がたった1ヵ所に向けて、2日前に見たばかりの地下水力発電所から日夜送られているのがにわかに実感できました。


すでにサウスランドをあちこち回ってきた後だったので、何本もの太い電線と並行して走りながら、これだけの経済がこの地で失われることの意味が急にリアルに感じられました。サウスランドの人口は2020年で10万人超。労働力人口比率が60%だとすれば労働力人口は6万人。2,600人はその4.3%。従業員の家族も含めればどれだけ多くの人たちの生活に影響が生じることか。

政府が一民間企業に屈することには賛否両論があるにせよ、今ここで4年の時間を“買った”ことは、従業員にも、自治体にも、政府にも大きな意義があるように感じました。しかし、交渉はこれを最後とすべきでしょう。業況の悪化と雇用の確保は別物で、ティワイポイントが栄光の歴史に幕を下ろすときは確実に迫っている、とも感じました。



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編集後記「マヨネーズ」
国有企業ですがメリディアン・エナジーは上場企業なので、株価は1月7日の史上最高値9.40ドルから急落して、19日は7.44ドル。20%超安。2020年前半はコロナ禍の中で4ドル台のもみ合いが続いていたと思うとまだまだ高いですが、
「電力株が高くて手が出ない💦」
と嘆いていた投資家たちが動き出すのか否か。電力料金だけでなく送電費用など、いくらで手を打ったかによって収益性に大きく反映されそうです。

NZの最南端でいろいろな事が起きており、今回行ってみて改めて興味が湧いてきました。

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中国のお買い物

2002-08-21 | 経済・家計・投資
ある朝、オフィスでいつものように香港の経済新聞を手にすると、銀髪に太い眉の西洋人が嬉しそうに写った写真が一面を飾っています。
「あれ、ハワードじゃん」

そう、このご機嫌そうなおじさんはオーストラリアのハワード首相。記事の見出しは英語紙では「中国海洋石油のアジア太平洋事業」となっていましたが、中国語紙では「中国海洋石油、オーストラリア企業に100億米ドル契約発注」とより詳しく、写真も首相ともう1人の大柄な西洋人が満足気に握手しているものでした。

他国の首相が紙面のトップを大きく飾るのは、本人が香港を訪問中ででもなければかなり珍しいことです。NZのクラーク首相が来港した時ですら、1面にはなりませんでした。それが中国国有企業のニュースでありながら当の中国人の写真はなく、受注した民間企業社長とその国の首相が嬉しそうに握手している写真が大きく載っているのですから、何だか妙な話です。ルノーが日産に出資したからといって、日産の社長と当時の首相が
「やったね♪」
と新聞の1面を飾ったでしょうか?

この妙な展開こそが今の中国と資源国の関係を如実に物語っています。中国は高度経済成長で12億人の生活水準が急速に向上しており、全部合わせればアメリカ並みの人口を抱える沿海部の各都市は、上海を筆頭に成長街道まっしぐらです。場所によっては二桁前後の驚異的な成長を遂げています。そのため自国も世界屈指の資源国とはいえ、より確実な資源確保が急務となってきました。常にエネルギー問題に力を注ぐアメリカと同じです。

中国海洋石油は中国第3位の国有オイルメジャーで、最近はインドネシアでも油田買収に出ており、今回のオーストラリアでの最終130億米ドル(1.5兆円ですよ!)の天然ガス購入で、南半球でのお買い物ぶりがことさら顕著になってきました。受注したオーストラリア企業はこれから25年間、上得意にガス供給を行うのです。ハワード首相まで借り出されたのは、これがオーストラリアにとって史上最大の輸出案件であり(そりゃそうでしょう!)、英国BPを破っての受注という、まさに国を挙げての一大事業だったからなのです。

自国で賄えないものは外から買ってくればいいわけですが、資源となると事は単なる輸入品として片付けられなくなってきます。その確保は国家間の利害と利権の絡み合った政治色の強いものとなり、現に今回BPが敗れたのも別の事業で中国政府の心証を悪くしていたからと見られています。中国は世界第2位の外貨準備を持ち、「発展途上国」という位置づけながらも、その途方もない市場規模と侮れない資金力で世界的なプレゼンスを高めています。

その食指はNZにも伸びています。中国国務院(中央政府)直轄の中国国際信託投資(CITIC)がNZでの森林資源獲得に乗り出しているのです。彼らの計画は2億米ドル(235億円)を投じて、NZ上場企業フレッチャー・チャレンジ・フォレスト社の35%権益を取得し、フレッチャーが国内第2位の植林地を保有するセントラルノースアイランド・フォレスト・パートナーシップ(CNIFP)を買収するのを支援し、買収成功のあかつきには、フレッチャーがCNIFPを運営し、実質的にはCITICがその経営権を掌握するというのが彼らの筋書きです。

この計画がまとまって今年5月に発表されるまで、両社は過去1年半をかけてこの問題を話し合ってきました。そもそも両社は過去に提携実績があり、その後の物別れでいったんは疎遠になっていたのですが、CNIFP買収に向け再び手を組んだのです。計画が成功すれば国内2番目の森林資源が中国資本というよりも、中国政府そのものの手中に落ちるのです。世論は多大な懸念を示しましたが、株式市場ではフレッチャーが値を飛ばすなど、さまざまな思惑が噴出しました。

しかし、今月13日、侃々諤々の論争にフレッチャーの株主が一つの答えを出しました。

(つづく)

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編集後記「マヨネーズ」
証券会社の朝は早く、私の出勤は7時です。前の職場は8時だったので、6時前に起きてそのままジョギングに行って6時半までに家に戻れば、シャワーを浴びて朝食をとっても十分間に合いました。しかし、今ではそれがかなわなくなり、朝ジョグを諦めてから3年半経ちました。夕方走るという手もありますが、慢性的な残業に加え、少しでも早く帰って子どもの顔が見たいので、どうも寄り道する気になれません。それに朝の爽快感は夕方の比ではないのです。

当時の夫は、
「起き抜けからよくそんなに走れるよな~。いってらっしゃ~い」
と温かいベッドの中からぬくぬくと見送る方でしたが、最近は彼も朝に走り始め、その快感からすっかり虜になってしまいました。やり出したらとことんやるのが夫のいいところ。私が週3回ぐらいだったのに比べ、
「雨が降っていない限り毎日」
という超ハードスケジュールを自らに課し、土曜日も走っています。今度はこっちが
「よくそんなに走れるよね~」
と感心しきり。

時々出勤途中、走り終わった夫が自宅への坂道を上って来るのに出くわします。こちらはタクシーの中で日経新聞を広げ、あちらは朝から一汗かいて・・・、どちらがいいかは一目瞭然。しかし、夫が朝から上半身裸で近所を歩き回っていても誰にも何も言われない香港って、やっぱりいいとこ


後日談「ふたこと、みこと」(2021年2月):
CITICなんて懐かしい社名が出てきました。香港上場だったCITICパシフィックは当時、中国そのものの代替銘柄として何度売買したことか。

10年ひと昔なら、20年前はふた昔ですが、中国の存在を恐れつつも、その購買力には何とかして取り入りたいのは当時も今も一緒。今のオーストラリアと中国は一時的に険悪な間柄になっていますが、これもまた政治的、経済的思惑を経て変わっていくのでしょう。

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株はインフレがお好き

2002-06-04 | 経済・家計・投資
面白い展開になってきました。前からお伝えしているように、世界的な米ドル安局面の中でNZドル高が急速に進んでいます。年初のもみ合いを経て、3月以降はまさに右肩上がり、一本調子の上昇で、あらゆる目先のテクニカルラインを突き抜ける、青天井状態に突入しています。今年に入ってからの上昇はたった5ヵ月でな~んと16%!

これは1月1日に100万円持っていた人が、銀行にも入れないでタンス預金していただけで「116万円になってしまった!」というのと理論的には同じこと。これを銀行に預けていれば、さらに利息がついて118万円ぐらいの価値になっていた計算になります。
「そんなことってあっていいのかっ?」
って感じですが、これが外貨の玉手箱…。しかし、開けた箱がパンドラの箱ならば、100万円が84万円に値下がりすることもあるし、金融不安が吹き荒れているアルゼンチンなら年初の100万円はたったの28万円にまで暴落しています。

同じく5ヵ月間で豪ドルは12%高、南アフリカのランドは18%高ですから、やはりラグビーの世界最強リーグ「スーパー12」開催国である、これら南半球3カ国の通貨高は突出しており、「通貨のスーパー12」の強さは圧倒的です。ちなみに今年に入って5月末までの日本円は6%高(それでも日本政府は円高阻止に必死の介入に出ています)、ユーロは5%高止まりです。

世界の主要通貨がこれだけ上がっているということは、米ドルの一人負けということになります。でも、アメリカは世界最大の消費国で米ドルが弱くなると、輸入品が割高に感じられるので、海外からあまり買ってくれなくなります。彼らの財布の紐が固くなることはアメリカを最大の「お得意さん」とする輸出国とっては非常に困ることで、米ドル安・自国通貨高は諸刃の剣なのです。

NZも酪農品など一次産品への輸出依存度が非常に高い国ですから、自国産品が割高になれば輸出が苦しくなってきます。カレン財務相も5月23日の予算案発表後のインタビューで、「NZドルが輸出業者に悪影響を及ぼす水準にまで上昇することは好ましいことではない」と発言し、直後にNZドルどころか豪ドルまでが反射的に売られる局面がありました(笑) 確かにこれだけ急激に上昇すれば怖くもなるし、「少し利食って利益を確定しておきたい」という気にもなるでしょう。

しかし、南半球通貨はこの手の要人発言程度ではよろめかないほど、強い上昇サイクルに乗っています。このメルマガで取り上げただけでも、4月13日の「8ヵ月ぶり高の1NZドル=0.4445米ドル」、5月21日の「22ヵ月ぶり高の1NZドル=0.46米ドル」、そして今回の「2年ぶり高の1NZドル=0.48米ドル」と、まさにあれよあれよという間の上昇です。

しかし、ほんの2年前の2000年には、年初の0.50米ドル台から年末にかけての0.40米ドル割れまで1年以内に最大25%も急落していたこともあるので、今年に入ってから5ヵ月間で16%上がったからと言って、腰を抜かすほどのことではないでしょう。NZドルは2001年には丸々1年かけて0.40米ドル近辺で値固めをし、9月の米国同時多発テロを経ていよいよ底値が固まり、今年3月に「本格的にテイクオフ!」と、なったわけです。

通貨がこんなに上がると輸出にマイナス影響が出てきますが、一方で株高になることが多いのです。株はインフレの匂いに非常に敏感で、新聞に「○○が値上げ」なんて記事が並び始めると金利動向を睨みながらもジワジワ上がってきます。今年に入ってからのNZ株は1月3日の大発会が742、4月30日が739と、全く動かない眠気を誘うような相場でしたが、5月に入ってからは顔つきが変わり、1ヵ月で5%高の775になりました。

「なあ~んだ、5%ぐらい。株だったら10%、20%といかなきゃ!」
と思われるかもしれませんが、この775という水準は2000年以来約2年半ぶりの高値となれば話は別でしょう。しかも外国人投資家は、株の値上がりと保有期間中のNZドル高の双方から値上がり益(含み益であっても)を手にしているはず。NZのような小さい市場に世界各地から資金が集まってくれば、簡単にフワッと持ち上がってしまう可能性もなきにしもあらず・・・。そう思いながら、「ニュージーランド・ヘラルド」のサイトを開いたら、
「6月からビール値上げ!」
とデカデカと出ており、
「おぉぉぉ。来た来た・・」
という感じ。やっぱり株はインフレがお好き♪


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編集後記「マヨネーズ」
昨今の証券会社の株式レポートの下にくっついてくる断り書きからのパクリ。
"このメルマガは投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄選択、投資判断の最終決定は、皆様ご自身のご判断でなさるようにお願いいたします。このメルマガは信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、その正確性に関して責任を負うものではありません。ここに記載された意見は、配信日における判断であり、予告なく変わる場合があります。提供されました情報はご登録者限りでご使用ください。云々くんぬん・・"

まだまだ本当はこの3倍ぐらい長い文章が続きます。要は"投資はご自身のご判断で"ってことです。これは証券会社の訴訟対策への厚いガード以前に、投資の基本でもあります。利益を取りにいくためにリスクも引き受ける覚悟があるかどうか。「ここまでのリスクは取ろう!」と決めたら、あとは情報収集してレッツゴー。相場の前にプロも素人もありません。勝てば官軍。


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後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
こんな細かい相場の話を今になって読み返してみても、何がなんだか(笑) でもチャートを紐解いてみると、確かにNZドルは2001年に丸々1年かけて0.40米ドル近辺で値固めをし、その後は本格テイクオフ!以来、NZドルはリーマンショックだろうがなんだろうが、2度と0.40米ドルをつけていません。

その後、多少の高下はあっても2008年第1四半期まで上昇サイクルが続き、倍の0.80米ドルまでいった出発点がまさにこの頃でした。
「来る、来る、来る、来る、絶対来る!」
とせっせとNZドルを買っていた頃です。


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逆行通貨

2002-05-21 | 経済・家計・投資
ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は今月15日、この2ヵ月来で3回目の利上げに出ました。上げ幅は前回2回と同様の0.25%。金利というものには明確なサイクルがあり、一度上がり出すとしばらくの期間は段階的に上がっていきます。いわゆる金利上昇局面というものです。しかし、いつまでも上がり続けることはなく、ある程度の水準まで行ったら打ち止め感が出てきて、ある日を境に下がり始めます。これも上がった時と同様で、段階的に下がっていきます。

猛スピードで走っている車が急には止まれないように、経済でも一度モメンタムという勢いに乗ると、一定のところまで行ってしまうことがよくあります。そして、その反動から今度は逆の方向を目指して一斉に動き出すため、結果的にサイクルが生み出されていくのです。金利だけでなく、景気サイクル、株価サイクルもあるし、今では半導体サイクルという言葉もすっかり定着しています。

NZの2ヵ月で3回の連続利上げというのは、一般的に言えばかなり急ピッチな金利上昇です。勢いがついているのは明白で、このまま行けば第4次利上げも近いでしょう。現にロイターの調べでは、エコノミスト13人のうち、12人が次回の中銀会議がある7月3日にも更に0.25%の利上げがあると予想しています。

1年以内に1%かそれ以上の利上げとなると、預金者にとっては嬉しい話。日本の定期預金金利がやっと1%あるかないかの時に、悠々4%台かそれ以上で預金できるわけです。香港もほぼゼロ金利で最近は口座残高が少な過ぎると口座管理料を徴収され、預金金利を受け取るどころか手数料を支払わないとお金を預かってもらえないというマイナス金利状態に突入しています。しかし、利上げは変動金利で借金をしている場合には、上昇分が金利負担としてのしかかってきますから辛い話です。そのため企業や個人が急速に借り入れを見合わせるので、それが好景気へのブレーキ役になるのです。

それ以外では金利が高くなるとどうなるのか?高い預金金利を求めて資金が移動してくるので、通常であれば通貨高になります。NZドルはまさにこの状態で、先週には2000年7月以来22ヵ月ぶりの高値である、1NZドル=0.46米ドル台にまでNZドル高が進みました。0.45~0.46米ドルは心理的上値抵抗線と見られていたので、この水準の突破は相場が新たな展開に入ってきた可能性を強く示しています。単純に言えば、ここ2年間で米ドルを売ってNZドルを買い今でも持っている人は、大なり小なりの利益が出ていることになります。

4月13日の「通貨のスーパー12」でも取り上げたように、NZドル、オーストラリアドル、南アフリカのランドは、今年に入って以来、世界で最も好調に推移している最強3通貨ですから、対米ドルだけでなく他通貨に対しても相対的に強含んでいます。ちなみに、日本円はと言うと、政府の「景気底入れ宣言」を受けて、20日に昨年12月13日以来、約5ヵ月ぶりとなる1ドル=125円台をつけてきました。しかし、NZドルは22ヵ月ぶり高です!

なぜ金利を上げるのでしょう?それはずばり、景気がいいからです。世界中が景気低迷やデフレに苦しみ続け、やっとほのかな改善の兆しが出てきたかどうかという時に、金利を上げてでも景気過熱感からくるインフレを抑えなくてはいけないとは、なんと贅沢な話。これこそがサイクルの妙です。全面的にダメなように見えても、どこかで必ず調子のいい国や金融商品、企業や投資家というものはいるものです。これだけアメリカ経済の影響力が世界的に甚大になり、アメリカがくしゃみをしただけで風邪どころか肺炎になってしまう国が多数ある中で、南半球諸国の逆行は見上げたものです。

「スーパー12」の3ヵ月の中でも3月から利上げに出たのはNZだけで、この急ピッチな利上げ局面はNZ中銀が認めているように、昨年9月の米同時多発テロ以降、景気の落ち込みへの予防的な利下げが行き過ぎたことへの反動で、掛け過ぎた保険を解約しているようなものです。そして、中銀総裁は「NZ は世界的な景気低迷の影響を受けていない」高らかに宣言しています。でも同時に「それは運が良かったことと、景気サイクルからのマイナス影響への対応が抜かりなかったため」と、非常に現実的かつ冷静でもあり、景気同様にのぼせ上がり過ぎてないクールさには◎。


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編集後記「マヨネーズ」  
昨年1月のNZ訪問で突然移住を決心したため、私は帰るやいなや、ささやかなへそくりはモチロン、家計のお金にまで手をつけてせっせと香港ドル売りのNZドル買いに出ました。しかし当時の相場は0.44~0.45米ドルと今とさほど変らない高水準で、その後は0.40米ドル割れにまで10%以上値下がりしたことも何度かありました。

通常であれば短期間で1割のやられを出せばビビってしまうところでしょうが、ナンピン買い(買値より下がった時に買い増し平均取得価格を下げておくこと)を続け、
「そんなに香港ドル売ってしまって、今月の支払いにまで事欠く!」
と、家計を預かる夫から悲鳴が出るほどでした。そして今日、やっと買値を上回るNZドル高に・・・。大勢に逆行しているNZの景気サイクルに加え、私にとっては世界的な景気不振の中で、サイクル以上に自給自足的な経済の底力に惚れこんだことが大きな決め手でした。

「どうせ2006年には自国通貨さ♪」
という、行ってまえ的要因もかなりあり、NZ中銀のクールさには程遠いザル投資。実際の移住までにはまだまだ何サイクルもありそうで、波乱含みの展開です。


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後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
「どうせ2006年には自国通貨さ♪」
と言っているところをみると、2002年の段階では4年後の移住を計画していたよう。どこからそんな数字が???一刻も早く行こうと思っていたはずなので、まったく記憶がありません(笑)

最終的に2004年7月に移住決行


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