長い長い夢でした。夢の中でさえ、
「えーっと、どことどこへ行ったんだっけ?」
と記憶を整理していたぐらい、長くて複雑なものでした。「私」は小柄な「誰か」(思い出せませんが、女性のような気がします) と、迷子になってしまいました。
帰り道を探しているのに見つけられず、いろいろな国のいろいろな場所に行き、思いがかけない経験をし、ますます焦っています。それも、ただ帰れないのではなく、自分の身体から抜けてしまった意識か魂が、残してきた身体に戻れなくなってしまったように感じました。
そもそも夢というものは意識や魂が一時的に肉体を離れる幽体離脱の一種らしいですが、「私」は夢の中でもぼんやりとそれを自覚していました。それゆえに、
「早く帰らなきゃ!」
と荒唐無稽な経験の中で、どこか冷静に考えていました。
いくつかのハラハラドキドキの思い出せない冒険譚を終えた後、「私」と「誰か」は家の中に居ました。木造の洋館でヨーロッパのどこかのようでした。家には誰もおらず、ホッと一息つくやいなや外から人の声が聞こえ、ドアが開いて女性が3人が入ってきました。驚いた私たちは一瞬にして大きな食器戸棚の上に身を隠しました。
隠すといっても戸棚と天井の隙間に縮こまっているだけで、姿は丸見えです。
「どうしよう!?」
と思っていると、キャメル色の起毛コートを着た、女優のシガニー・ウィーバーに似た女性がつかつかとこちらにやって来ました。
「私」と「誰か」はこれ以上小さくなれないほど縮こまって、心臓が口から飛び出そうになるほどドキドキしていましたが、彼女は私たちに気付きません。リビングにいるらしい2人の女性と、何語かでおしゃべりを続けながら戸棚のドアを開け、うつむいてティーカップか何かを取り出しています。
「気がついてない!」
50cmと離れていない彼女の亜麻色の髪を見下ろしながら、そう思いました。彼女たちが話しているのはデンマーク語で(そう思っただけで、私はデンマーク語がどんなものかは知りません)、何を話しているのかは全く分からなかったものの、たわいもないおしゃべりのようでした。
その時、ふと彼女が頭を上げ、狭い隙間に固まっている私たちを見ました。
「気がついた!」
「私」は観念しました。しかし、彼女は無表情のまま、すぐに視線を落としました。
「私たちが見えないんだわ。」
「私」は背後で震えている「誰か」に心の中で囁きました。
「見えるわよ!」
その時、突然、彼女はしっかりとこちらを見上げ、「私」にも理解できる言葉ではっきりと答えました。
「ねぇ?」
と彼女が同意を求めると、いつの間にか部屋に入ってきていた2人の女性も、ちょっと離れたところでうなずいています。驚いて言葉も出ないでいると、
「あなたたちはエンジェルなんでしょ?」
と、言われました。
エンジェル?
戸棚と天井の隙間で小さくなって怯えている私たちが、エンジェル?!しかし、彼女は相変わらず無表情で、天使に遭遇したからといって特に嬉しそうでもありません。どうやら私たちの会話を可能ならしめている一種の自動翻訳機のようなものが「エンジェル」と訳しただけで、
「彼女にしてみれば、私たちは座敷童子なんだ!」
と気付きました。
部屋の隅にいる妖しげな存在。悪さをしなければそれでよしとされる存在。喜ばれも疎まれもせず、気がついても無視される存在。泥棒と間違われて大騒ぎになるよりはましでしたが、なんとも居心地が悪く、
「早く夫のところに帰らなきゃ!」
と、「私」は本来の目的を思い出し焦り始めました。
次のシーンでは、「私」と「誰か」はグングン空を飛んでいました。両膝をお腹にくっつけるように身体を丸めてから脚を思い切り後に蹴り出すと、面白いように前に進みました。
「なんだー。こんな方法があったんだー。早く言ってよねー!」
と誰にともなく言いながら、私たちは伸びたり縮んだりしながら真っ青ななんの目印もない空の中、家路を急ぎました。
夫が起きる気配で目を覚まし、
「戻ってたんだ!」
と思ったぐらいなので、その直前まで夢を見ていたのでしょう。
「あー、よく寝た。今日は洗濯しないよ。」
と、起きた瞬間から洗濯の心配をしている洗濯魔の夫の一言で、私のいつもの1日が始まりました。
=============
編集後記「マヨネーズ」
「正直な話、人の夢の話を聞くことほど、ある意味つまらないものはないと思います(中略)シリーズ化しないように気をつけます(笑)」
と言ってから1ヵ月半(前回の話はコチラで)。またまた不思議な、「あの世」と「この世」がつながる夢を見ました。
「枕元にメモを置いて夢日記をつけて・・・」などというマメな事は相変わらずしていないので、大半の記憶は失ってしまいましたが、
「見えるわよ!」
と言われた衝撃のシーンの前後だけは、ショックが大きかったのか覚えていました。女性の部屋の中の様子や清々と飛んだ青い空まで、はっきりと思い出すことができます。しかし、なぜか夢の中でも夫がよく出てきます(笑)
(こんな夏色の空でした)
後日談「ふたこと、みこと」(2022年7月):
小柄な「誰か」(思い出せませんが、女性のような気がします) と書いていますが、夢の中での設定は「妹」でした。しかし、実在の妹ではなく、ヒトでもなさそうな、うんの小さな精霊のような存在でした。夢の中でさえ「私」は彼女の姿を見た記憶がなかったので、「妹」と書き記す勇気がありませんでした。しかし、夢日記を残しておいたおかげで、10年後の今でも「妹」とされながらそれを書き記さなかった自分の迷いを思い出すことができます。
「えーっと、どことどこへ行ったんだっけ?」
と記憶を整理していたぐらい、長くて複雑なものでした。「私」は小柄な「誰か」(思い出せませんが、女性のような気がします) と、迷子になってしまいました。
帰り道を探しているのに見つけられず、いろいろな国のいろいろな場所に行き、思いがかけない経験をし、ますます焦っています。それも、ただ帰れないのではなく、自分の身体から抜けてしまった意識か魂が、残してきた身体に戻れなくなってしまったように感じました。
そもそも夢というものは意識や魂が一時的に肉体を離れる幽体離脱の一種らしいですが、「私」は夢の中でもぼんやりとそれを自覚していました。それゆえに、
「早く帰らなきゃ!」
と荒唐無稽な経験の中で、どこか冷静に考えていました。
いくつかのハラハラドキドキの思い出せない冒険譚を終えた後、「私」と「誰か」は家の中に居ました。木造の洋館でヨーロッパのどこかのようでした。家には誰もおらず、ホッと一息つくやいなや外から人の声が聞こえ、ドアが開いて女性が3人が入ってきました。驚いた私たちは一瞬にして大きな食器戸棚の上に身を隠しました。
隠すといっても戸棚と天井の隙間に縮こまっているだけで、姿は丸見えです。
「どうしよう!?」
と思っていると、キャメル色の起毛コートを着た、女優のシガニー・ウィーバーに似た女性がつかつかとこちらにやって来ました。
「私」と「誰か」はこれ以上小さくなれないほど縮こまって、心臓が口から飛び出そうになるほどドキドキしていましたが、彼女は私たちに気付きません。リビングにいるらしい2人の女性と、何語かでおしゃべりを続けながら戸棚のドアを開け、うつむいてティーカップか何かを取り出しています。
「気がついてない!」
50cmと離れていない彼女の亜麻色の髪を見下ろしながら、そう思いました。彼女たちが話しているのはデンマーク語で(そう思っただけで、私はデンマーク語がどんなものかは知りません)、何を話しているのかは全く分からなかったものの、たわいもないおしゃべりのようでした。
その時、ふと彼女が頭を上げ、狭い隙間に固まっている私たちを見ました。
「気がついた!」
「私」は観念しました。しかし、彼女は無表情のまま、すぐに視線を落としました。
「私たちが見えないんだわ。」
「私」は背後で震えている「誰か」に心の中で囁きました。
「見えるわよ!」
その時、突然、彼女はしっかりとこちらを見上げ、「私」にも理解できる言葉ではっきりと答えました。
「ねぇ?」
と彼女が同意を求めると、いつの間にか部屋に入ってきていた2人の女性も、ちょっと離れたところでうなずいています。驚いて言葉も出ないでいると、
「あなたたちはエンジェルなんでしょ?」
と、言われました。
エンジェル?
戸棚と天井の隙間で小さくなって怯えている私たちが、エンジェル?!しかし、彼女は相変わらず無表情で、天使に遭遇したからといって特に嬉しそうでもありません。どうやら私たちの会話を可能ならしめている一種の自動翻訳機のようなものが「エンジェル」と訳しただけで、
「彼女にしてみれば、私たちは座敷童子なんだ!」
と気付きました。
部屋の隅にいる妖しげな存在。悪さをしなければそれでよしとされる存在。喜ばれも疎まれもせず、気がついても無視される存在。泥棒と間違われて大騒ぎになるよりはましでしたが、なんとも居心地が悪く、
「早く夫のところに帰らなきゃ!」
と、「私」は本来の目的を思い出し焦り始めました。
次のシーンでは、「私」と「誰か」はグングン空を飛んでいました。両膝をお腹にくっつけるように身体を丸めてから脚を思い切り後に蹴り出すと、面白いように前に進みました。
「なんだー。こんな方法があったんだー。早く言ってよねー!」
と誰にともなく言いながら、私たちは伸びたり縮んだりしながら真っ青ななんの目印もない空の中、家路を急ぎました。
夫が起きる気配で目を覚まし、
「戻ってたんだ!」
と思ったぐらいなので、その直前まで夢を見ていたのでしょう。
「あー、よく寝た。今日は洗濯しないよ。」
と、起きた瞬間から洗濯の心配をしている洗濯魔の夫の一言で、私のいつもの1日が始まりました。
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編集後記「マヨネーズ」
「正直な話、人の夢の話を聞くことほど、ある意味つまらないものはないと思います(中略)シリーズ化しないように気をつけます(笑)」
と言ってから1ヵ月半(前回の話はコチラで)。またまた不思議な、「あの世」と「この世」がつながる夢を見ました。
「枕元にメモを置いて夢日記をつけて・・・」などというマメな事は相変わらずしていないので、大半の記憶は失ってしまいましたが、
「見えるわよ!」
と言われた衝撃のシーンの前後だけは、ショックが大きかったのか覚えていました。女性の部屋の中の様子や清々と飛んだ青い空まで、はっきりと思い出すことができます。しかし、なぜか夢の中でも夫がよく出てきます(笑)
(こんな夏色の空でした)
後日談「ふたこと、みこと」(2022年7月):
小柄な「誰か」(思い出せませんが、女性のような気がします) と書いていますが、夢の中での設定は「妹」でした。しかし、実在の妹ではなく、ヒトでもなさそうな、うんの小さな精霊のような存在でした。夢の中でさえ「私」は彼女の姿を見た記憶がなかったので、「妹」と書き記す勇気がありませんでした。しかし、夢日記を残しておいたおかげで、10年後の今でも「妹」とされながらそれを書き記さなかった自分の迷いを思い出すことができます。