~ 軍艦マーチ 鳴りやむべし ~
【動画】(3分6秒)
【URL】https://youtu.be/cfeSAHifpng
読売新聞 編集手帳より ~令和2年(2020年)4月25日~
(本文)
◆自宅から駅に向かう途中の歩道に、カラスが時々えさをあさりに来るゴミ置き場がある。人や自転車は散らばった生ゴミをよけるため、危うくも、道路側にはみ出して行く。
◆だが、今年初め頃、近所の高齢の女性が、ほうきで片付けているところに行き合った。安心して歩道を進むことができた。収集車が来るまでの数時間のこととはいえ、女性のおかげで、事故に遭わずに済んだ通行者が、いたのではないかと思った。
◆見知らぬ人にそれとは気づかないまま、助けられている―― そんなことが今、じつは、至る所で起こっていそうである。
◆感染を広げないため我慢して家を出ない人、苦渋の決断で店を休んだ人…息を吸い込んで苦しさを感じないでいられるのは、100%自分の心がけによると言える人はいまい。
何とか、医療崩壊の寸前で踏みとどまれているのは、医療従事者の、命がけの戦いはもちろん、市井の人が誠意を束ね続けているからでもあろう。
◆ところが、である。パチンコ店の開店に合わせ、朝から密な行列を作る人たちもいる。誰かに助けられていることに、気づいているのか、いないのか。
軍艦マーチ、鳴りやむべし。