鯖の養殖をしようと思ったきっかけは3つあります。
一つ目は、地域の経済にとって定置網がとても重要だと認識したことです。
あすの海士をつくる会(以下:「あすあま」)の活動を通じて地域の産業がどのように関わり合っているかを実際のデータを基に議論したことで、日常の食卓のみならず観光であったり福祉にも影響が大きいことがわかりました。
それまでは個人の漁師さんの数が減らないことを主眼に置いていたので、漁業の見方が少し変わりました。
二つ目は、未利用資源の活用が地域経済活性化のチャンスであるとわかったことです。その土地ならではの事情に向き合うことで独自のサービスや取り組みにつながります。これまでも定置網で獲れる魚で市場には評価されないお金にならなかった魚を原料に地域のイベントで料理にして販売するなどをしてきましたが、いよいよ本格的にこの課題に取り組めるという想いがありました。
そして三つ目は、かつてこの定置網が存続の危機にあったときに事業を受け継いだ田仲社長の想いに触れたことでした。
東京で「海士カフェ」という交流イベントに定置網の漁師さんたちと一緒に参加したとき、そもそも定置網の歴史について社長にインタビューをしたことがあります。その時に聞いた葛藤やこれまでの努力などのお話に胸を打たれました。
そうした経緯があり、「あすあま」のメンバーで定置網に乗せていただいたときに見た小さな鯖(通称:ローソク鯖)を何とかしなければと思ったのです。
そして、次のような記事を書きました。
とっても長いのですが、離島が抱える課題と背景がわかるのでぜひ読んで欲しいです。
定置網で獲れた小さな鯖をどうにかしたい
そしたらこの記事を読んだ鯖料理専門店「SABAR」さんとつながることができ、
プロジェクトが始まりました。
やろうとしていたことは、「今まで廃棄していた小さな鯖を、同じく廃棄されていた未利用魚を使ったエサで大きくなるまで育てる」というものでした。さらに、IT技術を活用して自動給餌や生育環境の管理などを行うクラウド漁業というやり方を目指していました。
プロジェクトが動き出してから関係者と協議と調整を重ね、2年後にようやく
海に生簀を浮かべてのテストに漕ぎつけました。
これでようやくスタートと安心したのもつかの間、養殖の技術面と管理を担当する
人が住み込みで来ることになっていたのですが、来ない。
更にはプロジェクトを主導していた「SABAR」さんの経営状況の変化により、
暗礁に乗り上げてしまいました。
結局、事業は中途半端な形で終了しました。
この経験を通じて自分が感じたことは、漁協と定置網とSABARのように異なる立場の事業者が
協働で一つのプロジェクトを動かすことの難しさでした。
全体としてはこうなるといいなーというゴールは共有できても、そこに至るプロセスで発生する困難を
乗り越えていけるだけの体制づくりができていなかったというのが失敗の原因だと思います。
そして、このプロジェクトをより良いものにしようと外部の知恵を借りるために参加した
「OCEANチャレンジ」という持続可能な漁業を目指すアクセラレータプログラムがきっかけとなって、
自分で責任をもってやれる事業としての「水産加工」を始めようと決意をすることになったのでした。
このあたりについては、また次回。
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