思いで陽だまり

自分に甘く、他人にはもっと甘く、1960年生まれがゆるっと精神的気休めに書いてます。

去り際の余韻

2021-06-27 21:39:52 | 日記
わりと大雑把だった父が珍しく不快感を示した事があった。

あそこの家に用があって行くだろう?
用が終わって俺が玄関を出たとたんに鍵をガチャガチャかけるんだよ。
一呼吸おけないものかね。10秒15秒なんで待てないんだ。

確かに昭和のたしなみとして、父の言いたい事はわかる気がする。
見送れとは言わないまでも、背を向けてすぐに施錠音が聞こえてきたら
塩をまかれたような気がしないでもない。
その家の習慣として戸締りはしっかりというのがあったのだろう。
でも父には余韻を大切にしてほしい気持ちがあったのだ。

月日は流れ、父はこの世の人でなく
令和の今はどうだろう
鍵のかけ忘れによる犯罪を防ぐ為にも、
すぐ閉めても誰も文句は言わないのでは。

そもそも宅配の荷物ですら、閉めたままで
置き配などという手段も登場した。

父のようなのどかな人はもう存在しないだろう。
一呼吸二呼吸が待てない時代なのだ。
それでも何となく玄関の鍵を閉めるたびに父のボヤキを思い出し
私は一呼吸おいて、相手に聞こえないようにそっと鍵を閉める。

オリンピックでおもてなしが言われて久しいけれど
去りゆく人への思いやりもまたおもてなしと思い
気を付けてお帰りくださいね、と心をこめたいと思う。
ていうかその前に気持ちよく滞在していただきたい。

日本滞在が各国選手及びスタッフの良い思い出になりますように。