On The Road

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第6話-16

2010-12-12 20:16:00 | OnTheRoadSSS
 寒くはない。でも、歯がガチガチと当たる感覚で、藍原は自分が震えだしたことに気付いた。私が怯えていることをこの男に悟られてはいけない。
 藍原はグッと歯を食いしばった。

 「警察はお前を見捨てたみたいだな。いい感じの明るさになってきた。お前は今日の夕日は見られない。分かるか?
 どうだ?恐いよな?助けてって言ってみろよ」

 彩菜もこんなふうに恐怖に震えながら死を迎えたんだろうか。最後に笑った瞬間も、本当は孤独だったの?

 「違うよ」
 声が聞こえたような気がした。「あやちゃんはひとりぼっちじゃなかったよ。お姉ちゃんがいたもん」

 自分が精神的に恐慌状態になっているとは思いたくないが、彩菜の声ははっきり聞こえる。「お姉ちゃんもひとりぼっちじゃないよ。お兄さん達が助けにくるよ」

 「あやちゃん」
 藍原は空っぽの手のひらを握り締めた。
 これは私自身の希望の声だ。幻聴や錯乱ではない。
 「あやちゃんはもっと遊びたかったよ。大きくなりたかったよ」
 もうお終いだなんて思っちゃだめだね。あやちゃんにもお兄さん達にも怒られちゃうね。

 藍原はほほ笑んで田村の顔を見返した。
 「ふざけるな!」
 田村が怒鳴った。


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