「あれでよかったの?」
小頭は気になってた事を自転車をこぎながらきいた。
「何が?」
「えっと……あの角」
小頭はぴょんぴょんと跳ねてる鬼男を気にしつつ、背後で二人乗りしてる育代にきいた。空を飛ぶ自転車で次に目指すべき妖怪の元へと進んでる状況だ。どうやってそれを察してるのかというと、なぜか色々と鬼アイテムをもってた鬼女のおかげである。それも今はこの自転車についてる。
それは自転車のフレームに取り付けられてる。まるで生々しいセミの形をしてるそれは自転車のフレームにまるで木に張り付いてるような……そのままの姿で取り付けられてる。
どうやら大きな『妖気』? を感知して「ミンミン」となくのだ。なので今もミンミンと鳴いてる。はっきり言って、うるさいなこれ……と小頭はおもってた。
「角?」
育代は小頭の言葉に頭をコテンと傾ける。今のおばあちゃんは育代となって若返ってる。だからそんな仕草もただただかわいらしい。
「いや、ほら砂浜にさして放置してきたじゃん?」
そうなのだ。あの角、あのまま浜に放置してきた。別になにか育代は詠唱とかもしてなかった。つまりは角を受け取って、それを砂浜に不法投棄してきたみたいな……そんな感じである。なので小頭はきになってた。
「ああ、あれ。あれはあれでいいのよ。彼もいってたでしょ? 魔除けだって」
「それは言ってたけど……」
なんか納得できない小頭である。もっとなんかすごいものを小頭は期待してたのかもしれない。でもただ砂浜に刺しただけ。
「確かに海坊主は上手くやれたわ。けどこの町には今妖怪が溢れてる……そうでしょ?」
「うん……」
周囲……というか下をみると、屋根で寝てる妖怪とか、道路を走ってる妖怪とかみえる。走ってる車の荷台に乗ってる妖怪とかもだ。人よりも妖怪が多い。だから育代の言葉に小頭は頷く。
「そんな妖怪たちが海坊主を助けようとするかもしれない。それかその力を狙って襲うかもしれない。だからそれを防ぐために――」
「あっ、だから魔除け?」
「そう」
なるほど――と思った。小頭はあんな角の扱いでいいのか? とか思ったけど、どうやらよかったらしい。寧ろ正しかったみたいだ。ああやって砂浜に刺すことでそこへの侵入をあの角が阻んでくれるのだという。それだけの力というか鬼の強力な気配……って奴があの角には籠ってるという事だった。