■ ヨガとクライミング
私はヨガの先生なので、ヨガの記事も書かないとね~とは常日頃思っているのですが、なかなかままなりません。
ヨガって動きを示すと簡単ですが、文字や言葉にすると、大変長くなり、めんどくさいのです。
クライマーが説明を省きたがるのもホントはそんな、”言葉にすることのめんどくささ”もあるのかもしれません。
で、ヨガですが、クライマーでは平山ユージさんがヨギーであることで有名です。
ヨガをすると柔軟性が上がる、というのが、クライマーの狙いのようです。
・・・が、言っておきますが、ヨガは柔軟体操ではありません。その目的には、むしろストレッチで十分。
ヨガは、食生活を含め、ヤマ・ニヤマ(やるべきこと・良くないこと、たとえば性的節制)の戒律があり、最終的にはサマディ(悟り)を目指しますので、悟りたくない人はヨガをしなくていいってことです。ヨガをするってことは、身体を使って悟ろうとすることです。
クライマーには悟りとは程遠い人もいて、そういう人はヨガ教えても仕方ないなーって思ったりします。ヨガをすると競争心はとにかくなくなります。煩悩が減るからです。
一方、柔軟性ですが、ちょっとしたコツで、インスタントにあげることができます。
正確に言えば、カラダの使い方のちょっとしたコツで柔軟性はそのままだが、柔軟性があたかも上がったように見える、ということですが…。
■ その1)脚を高く上げるコツ
脚を高く上げるには、骨盤を後傾しないといけません。腰は丸め込みます。腰のS字カーブを保ったままだと一生足は90°より上には上がりません。つまり腰の筋肉を伸ばす。
脚の付け根には大転子があります。これはグーのような丸い骨です。そのまま足を上げても、ソケットになっている骨盤の中で大転子が当たるだけなので、足を上げたい人は脚全体を外旋してください。外側に回す。
言われてみれば当然のことですが。
これで上がらない場合は、あげ方ではなく、
・上げる脚のハムストリングスが固い
・上げる脚のお尻の筋肉が固い
・伸ばしている脚の前ももの筋肉が固い
です。
アサナ: アパナサナ → チャイルド → ローランジ → ハイランジ(または英雄Ⅰ) → パダングシュターサナ(ヨガ版Y字バランス) → 前屈 → シャバーサナ
■ その2)股関節を開く
股関節を開くポーズ全体をヒップオープナーといいます。横の開脚ですね。足を高く上げるのは、縦の開脚ともいえますよね。
このインスタントなコツは同じで、骨盤を後傾させることですが、やりすぎが問題になります。股関節と骨盤後傾は相対関係にありますので、最初は股関節を開くため骨盤を後傾させても、開いてきたら徐々にニュートラルに押し戻さないと腰が悪くなります。
縦の開脚と同じで、大転子が当たるので、脚全体を外旋させるのもコツです。かかとのラインのほうを意識します。ヒールフックみたいな感じですね。
良くクライミングで腰を入れて、と言われますが腰を入れるには、お尻が出ると腰は入れれませんので、やはり骨盤は後傾しますが、骨盤自体の位置が、お尻が出る人は悪いのですが、それは脚を内転させるからです。ガニマタのときは、脚は外転です。
ちなみに膝を深く曲げれば曲げるほど、股関節を開くのは容易になります。これはハムストリングスの制限がなくなるからです。
アサナ: パダコナーナサナ(がっせき)→ 卍 → 仰向けの開脚 →英雄Ⅱ → 座位の開脚前屈 → カメのポーズ → シャバーサナ
これは2番のプリエがホントは一番いいので、バレエを入れたいくらいです。おすもうのしこです。つま先と膝の向きがことなると、膝の筋を痛めます。
■ その3)肩関節
肩も同じで、腕全体を外旋すると、後ろ手に回しやすくなります。だって関節の付き方ほとんど足の根っこと同じですよね。
上方のリーチを長くするコツがあるとすれば、手を上げるとき、ただ手を上に挙げるのではなく、肩甲骨からあげます。すると肩が耳につくくらい上がるはずです。肩をすくめる、と言うことですね。
大抵の人は両手を上げさせると、自然に肩をすくめてしまいますが、片手を上げるときは肩を使わず、腕だけで上げてしまいます。不思議ですがそうなっています。
横方向のリーチを伸ばすのも同じで、胸から手だと思うと良いわけです。たいていの人は胸の筋肉が委縮してみじかくなっているので。
肩が固いと言ってくる人が多いですが、実際は肩が固いのではなく、胸の筋肉が固いことが多いです。肩が固いのは男性には多いですが女性で固い人にあってことはほとんどありません。胸の筋肉です、硬いのは。
現代人の日常生活には、腕を強く引く、という動作がほとんどないので、肩甲骨を引く、ということがないため、その表の胸の筋肉は伸ばされることがない、という成り立ちになっています。大抵の人は肩を丸めています。背中側と胸側だと背中側が伸びて胸側が縮んでいます。まぁ腕を前に置いて使うばかりなので仕方ありません。
ので、腕を後ろに使うアサナをするとよいことになりますが、腕だけのポーズはない。腕を使って、胸を開くポーズとなり、腕だけをターゲットとしたものはあんまりというか全然ありません。
アサナ: タオルストレッチ、セツバンガーサナ、バッタ、フッシュ、ラクダ、弓、東のポーズ
■ その他 上体との連動
上体と連動させるか、させないか、それが問題で、結局、簡単に言うと、連動させたくないときに連動させ、連動させるべき時に連動させないのが問題です…大体あべこべになっています。
脚を上げると背中が丸まりますが、これは連動させたくない。ウエストから上は何事もなかったかのようにリラックスしているのが美しく見えます。
一方、ランジで足を前に出す時は、上体ごと行かないと、足だけ出しても足がつっかえます。脚を入れるスペースがないからですね。
あとはバランスのポーズでは、バランスと言うものは、押し合うか、引っ張り合うかしないと取れません。立つときは押し合い、それ以外では引っ張り合います。普通の人は大抵逆の動きをしてしまいます。
…というような感じですが、ヨガで四つん這いのポーズが岩登りのスタイルと同じです。岩だって四つん這いと言えなくないですから。
なので、クライマーに必要なのは前屈です。
が、クライミングしている間は常にマイルドな前屈をしていると言ってもいい状態なので、カラダをニュートラルに戻すのに必要なのは後屈です。
さらにスキルアップには、バランスのポーズが必要なのは言うまでもありません。
そして、おススメは、メンタルを鍛える瞑想です。最初は呼吸の練習プラナヤーマで代用します。要するに、慌てないってことですね。
常に自分のカラダをコントロールしようという意思がある、と言う点が、もしかしてヨガがおすすめな点かもしれません。
一方ヨガが好きな人は、ああすればこうなると考えつつ、胸を開くことを心を開くこと、とメタファー的に考えられるひとかもしれません。 ヨガの成功は、身体の存在(不快感)を感じないこと、と言われています。絶えずどこかが痛い、悪いというのは失敗であり、成功したヨガは体の快適性が増すものです。
≪まとめ≫
・前屈しよう
・後屈しよう
・バランスのポーズをしよう
・瞑想しよう