河野裕子の歌は、最晩年、挽歌といっていいものになった。
長い間の闘病生活の間に鍛えられた。
切々と、家族に感謝し、生き続けることを祈る。
思い病状を隠さず歌にしている。
歌の中、「君」は、夫の永田和宏である。
……
一日に食いたるものは桃一個スイカひときれ牛乳一杯慎ましきかな
夫につかまり草庭の草庭眺めゐる一分も立てばよろよろとして
肩でする呼吸の辛さ失ひし乳房をよすがに呼吸するものを
すざいゆく蝉声の中にへまなやつも二つ三つゐる落ちながら鳴く
残さるるこの世どうせうと君が呟くに汗にぬれたる首をなでやる
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