あの人に会いに行った。
前日に一晩かけて手紙を書き、
お礼の品と共に渡すつもりだった。
けれど、彼の職場へ行ってみて、
私と彼とが初めて会った、彼の職場とは
随分雰囲気が違ったし、どう手渡したらいいのかと迷いながら、彼の部屋の前を通った時、ガチャリと扉が開く音がした。
振り返ると彼がいた。
何かを探しているようで、
キョロキョロしていた。
私は慌てて角を曲がった。
そうして廊下にあった椅子に座ると、
これからどうしようと考えた。
彼の職場でこんな事をしてもいいのか、とも思ったし、第一、今見た彼がなんだかしょぼくれて見えたのだ。
マスクやゴーグルをしていたので、表情が見えなかったけれど、相変わらずヒョロリとしていて、けれど、背中は丸まり、膝は曲がって、首はストレートネックで、なんだかおじいさんに見えた。
もちろん、私よりは全然若いのだけれど…。着ていた制服も不潔っぽく見えて、
こんな事を言ってはなんだけれど、
一瞬で嫌だな…と思った。
この人とセ◯クス出来ないなぁ…と。
彼とそんな関係だった訳ではないけれど、なんだか拒否反応の方が強かった。
千年の恋も一度に醒めたという気がした。
そこで、散々迷って、迷って、迷って…、結局、渡さずに来た。
不意打ちのように、突然彼の職場に現れるのも、彼にとって不本意だろうし、第一、この関係を進めていってもいいのか?と思ったのだ。
こんな気持ちで、彼に近づくなんて無理だと…。
だったら、何もしない方がいいのではないかとも思った。
なので、そのまま取って返して来た。
バスに乗って駅に向かうまでの間も、何の感情も湧かなかった。それは自分でもびっくりするくらいだった。
好きも嫌いもなく、ただ淡々としていた。
これまでの私の気持ちは一体何だったんだろうか?と。
今回、彼に手紙を渡して、やはり何の反応もなかったら、もう、関東に帰ろうと思っていた。
このまま、こちらへ居ても仕方がないし、第一、仕事が捗らないし…、だったら、もう関東へ戻ろうと。
けれど、そういう判断もつかないまま、私は脱力していた。
ひたすら、困惑していた。
一体、彼とのことは何だったんだろう…。
彼との事があったので、私は離婚までしたのに…。
それなのに、いざ、彼と会うと、拒否反応が出ちゃうなんて…、どういう事だと。
私はただ、ただ、混乱して、疲れてしまっていた。
…という顛末でした。
これが、私の恋だっただなんて、とんだお笑い草ですが…。
今まだ、頭の中が整理できていません。
けれど、今回彼を見て思ったのは、随分疲れているなあという事と、思ったよりも若くはないんだなぁという事。
だったら、そこまで歳の差を気にする事でもなかったかな?と。
そんな事も考えました。
まあね。
一晩経って、冷静になると、そんな風にも思えますが、私はこれからどうすればいいのかと、未だ混乱の極みにいます。
☆それでは今日も良い一日を。