チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#15(a)パ・ダクスィヨン(その1)」

2010年07月13日 00時03分28秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第15曲は、
a)Pas d'Action
b)Variation d'Aurore
c)Coda
という3つから成ってる。その
a)パ・ダクスィヨンは、
【前】
[Andante cantabile、6/8拍子、1♭]
→[Pochissimo piu animato]
→[Tempo Primo]
→[Piu mosso]
【後】
[Allegro、3/8拍子、1♭]
という構成になってる。

ところで、
この#15-aの主要主題は、
[Andante cantabile、6/8拍子、1♭]
***♪ドーー・>ミー<ラ│>レーー・ーー、<ソ│
  <ラー<シー・<ドー<レー│>ソーー・ーー、ソ│
  <ラー<シー・<ドー<レー│<ミーー・ーー、>シ│
  <レー>ドー・>シー>ラー│>レー<ラ・ー>ソー♪
である。この主題は、少し前に作曲された
「交響曲第5番」第2楽章の第2主題に似てる、
と言われてることがある。たしかに、
[Andante cantabile, con alcuna licenza、12/8拍子、2♯]
(conコン(前置詞)=~な状態で、
alcunaアルクーナ(修飾する名詞が女性形なので女性形形容詞)=いくぶんかの、
リチェンツァlicenza=英語のlicenseライセンス=そうできる免許、型破り、定形外、はめはずし)
***♪ドーー・>ミー<ラ・・>ソーー・ーー、<ソ│
  <ラー<シー・<ドー>ラー・・<ミーー・ー●●│
  >ラー<シー・<ドー>ラー・・<ミーー・>レー>ドー│
   ドーー・>シー>ラー・・>レ<ファ<ラ・ラー>ソ♪
であるから、仮に「交響曲第5番」が「眠れる森の美女」を提訴すれば、
アンダーンテで8分の3倍数系拍子で類似した節で類似した律動、
(原告)小林亜星(勝訴)対(被告)服部克久の判例に照らしても、
著作権侵害が認められる可能性は高い。が、
この主題(動機)にはさらにモトネタがある。
***♪ソーー・>レー<ラ│>ソーー・ーーー│
  >ド>シ>ラ・<レーレ│>ソーー・ーーー│
   ソ<ラ<ド・<レーレ│>ド<レ<ミ・<ファーファ│
  >ミ<ファ<ソ・<♭ラー♭ラ│>♭ラーー・ーー>ソ♪
[Andantino simplice、6/8拍子、5♭(変ニ長調)]
「ピアノ協奏曲第1番」第2楽章の主要主題である。が、
これだと、8分の3倍数系拍子で類似した節ではあるが、
アンダーンテより少し速いし律動がやや異なるので、
勝訴してもごく少額、訴訟及び弁護士の裁判費用は双方持ち、
くらいが関の山であろう。

さて、
冗談はともあれ、このように「同じ、または、似通った」創造物は、
「同じ、あるいは、共通した」感情に由来する衝動の発露である。
これら3つの旋律は、同じ感情の結果だということである。
「眠れる森の美女」の場合は状況がはっきりしてる。
デズィレ王子によるオロール姫への求愛である。ただし、
オロール姫は幻影である。つまり、
「(自分が無意識に求めてた)理想の女性」へのアピールなのである。
このことから他のふたつ、特に「交響曲第5番」に託された
チャイコフスキーの精神活動転写を紐解くことができるのである。
「交響曲第5番」第2楽章の主要主題は、
グノーの「アヴェ・マリア」を下敷きにしてるのであるから、
やはり「理想の女性像」への精神的アプロウチであると読める。

プリミティヴな「ピアノ協奏曲第1番」のほうは、しかし、
もう少し手がかりが必要である。なぜなら、
このあとの中間部 [プレスティッスィモ]に出てくるシャンソン、
"Il faut s'amuser, danser et rire" (イル・フォ・サミュゼ、ドンセレ・リール)
「楽しんで、踊って、ハメをはずさねば」
を加味すると、
「交響曲第5番」における「リチェンツァlicenza=ハメはずし」
が効いてくる。デズィレ王子も、
王家が規定する自国貴族の娘ではなく、
120歳ほども年上、というハメをはずした相手であるオロールに惹かれた、
ということなのである。
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