チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「バレエ『火の鳥』の『白鳥の湖』性」

2006年06月25日 22時15分38秒 | 瓢湖不充分白鳥の湖舞イアーリンク泡沫事件
6月25日は、1910年にバレエ「火の鳥」がパリで初演された日だそうである。
ストラヴィーンスキィが1909年から翌年にかけて作曲した
バレエ「火の鳥」のお話は、ロシアの民話を題材にしてるらしい。
ロシアの民話ということは、そのネタは欧州全般に伝わってると考えてさしつかえない。
つまり、「白鳥の湖」伝説と同じだということである。筋はこんなものである。
……
魔王カシチェーィの庭に火の鳥が舞い降りる。
フクロウが見張ってる白鳥の湖とはいわないまでも、
ツヴィーカオの白鳥湖の如し、である。そこに、
イヴァーン王子(貴様はいったい誰なんや? である)がやってくる。
火の鳥を捕まえようとする。
白鳥の群れに鉄砲を放つジークフリート王子とベンノの如し、である。
やがて、王子は火の鳥を捕まえる。鳥は逃がしてと乞う。そして、
これはあなたの助けになりますからと言って羽を抜く。
単純な「王子」はその提案に「応じ」る。
火の鳥が飛び立ってしまうと、今度は、
魔法にかけられた13体の王女が現れる(あんたらはいったい誰なんや? である)。
王子は物陰で彼女らを見てるが、やがて出てって彼女らのお遊戯に加わる。
「白鳥の湖」の2幕第13曲の如し、である。が、
王女らの「自由時間」が切れる時間がやってくる。
シンデレラの如し、である。王女らは、
自分らの境遇を語る。ジークフリートに身の上話をするオデットの如し、である。
王子は彼女らを助ける約束をする。彼女らはカシチェーィの城に戻る。そして、
彼女らを追いかけるかのように王子もカシチェーィの城をめざす。
王子はカシチェーィの手下どもと戦うことになる。が、
すぐに捕らわれてしまう。そして、カシチェーィのもとに引っ立てられ、
尋問される。なぜかその場に居合わせる王女らが王子の助命嘆願をするが、
魔王が耳を貸シチェーィくれるはずもない。それどころか、
王子を石にしてしまおうとする。ペテロに石になれと言ったイエスの如し、である。
ところが、火の鳥が王子にくれてやった羽が邪魔して石にできないのである。
王子は「マグマ大使ぃ~~~!」ならぬ、「火の鳥ぃ~~~!」と助けを呼ぶ。
火の鳥が飛んでくる。鳥は魔法返しでカシチェーィの手下どもを
「踊り責め」にする。そして、カシチェーィまでもがその術にはまる。
死ぬまで踊り続けさせられる白雪姫の継母の如し、である。
ここで繰り広げられるのが「カシチェーィの踊り」である。
このバレエ曲の中で唯一聴けるレヴェルのナンバーである。
アッレーグロ・フェローチェ(荒々しく……フェニーチェ、ではない)、
四分音符=168、3/4拍子、無調号(イ短)。
♪●シー<ドー>ラ│ー<シード>ラー│
●シー<ドー>ラ│ー<ドー<ミ>♭ミー♪)(八分音符単位表記)
シューベルトの「未完成交響曲」の「主章」の終いをヒントに、
シンコペを効かせて粗野にした音楽である。が、暴投のようではなく、
乱暴さに節度があるので、聴いてられる曲である。それはともかく、踊り疲れて、
仮死チェーィ状態になった魔王主従に、火の鳥はなにを考えてるのか、歌自慢なのか、
「子守歌」を歌って聴かせるのである。仮死状態の悪漢どもに贈る歌詞は、たぶん、
「高原の小枝を大切に」である。あんのじょう、そんなはた迷惑な歌を聴かせたから、
魔王の下肢チェーィはむくむくと頭をもたげ、目覚めてしまったのである。
暴れることこのうえなしである。が、火の鳥のサジェスチョンで、王子は
瑕疵チェーィある魔王の卵をすでに見つけ出してたのである。
すでに発生が終わって不死身の魔王カシチェーィとなってるのに、
別の個体である卵を割られると、なんと死んでしまうのだそうである。
「話せばわかるよぅ。その卵をこっちにちょっとかしちぇ~ぃ」
と犬なで声で哀願しても、酌量の余地なし。
魔王、万事休す。王子は手にした卵を非情にも叩き割る。
不死身だったはずの魔王も、こけおどし。
富士見ならぬ月見うどんの卵のようにされては、
ひとたまりも摩周湖のまりもも、なかったのである。
ここで場換わり。
不死のはずの魔王の死によって、その魔法が解け、
それまでに石にされてきた騎士たちや、囚われの身となってた13人の王女も、
晴れて自由の身となる。眠りの森の如し、である。そして、
13人の中のひとりと王子は相思相愛になっており、
招待状も出さずにやってきた小林幸子と美樹克彦が、
♪もしかしてっ、もしカシチェーィ、
 私のほかにもぉ、だぁ~れぇ~かぁ~~~♪
と歌う中、その場ですぐに結婚式が執り行われるのである。
めでたし、めでたし。
……
「白鳥の湖」をちゃちにして単純にし、そして、楽観的にしただけのお話である。
この最後のナンバーは「5♯」、ロ長である。ストラヴィーンスキーは、
チャイコーフスキーの「白調湖」の終焉「ロ長」を引いたのだと私は見る。が、
「ロシア民謡」から採られた、というその節(不死)は、
ボロヂーンが「2番交響曲」の緩徐章で用いた民謡と同じである。
♪ソ>ファ│(4/4)>ミ<ソ>ファ>ミ>レ>ド<レ<ファ│
(3/4)>ミ>レ<ミ<ソ<レー♪(八分音符単位表記)

レント・マエストーゾ、二分音符=54、3/2拍子、5♯(ロ長)。
♪ソーーー>ファー│>ミ<ソ>レー>ドー│
<ファーー>ミ>レ<ファ│>ミ>ド<レーレー♪(四分音符単位表記)
これが、「結婚」というめでたい大団円では、
キリスト教のラッキーナンバー「7」拍子に換えられるのである。
→アッレーグロ・ノン・トロッポ、7/4拍子、(5♯)。
その速度標語には「似つかわしくない」四分音符=208、である。
♪●ソ>ファ・>ミ<ソ・>レ>ド│
<ファ>ミ・>レ<ファ・>ミ>ド<レ♪(四分音符単位表記)
これが→ドッピオ・ヴァローレ(四分音符=104)、と半分の速度になり、
→ポーコ・ア・ポーコ・アッラルガンド、で減速し、
→モルト・ペザーンテ(二分音符=60)、2/2、で、
な、なんと、1910年という年にもなって、(ロ音持続の上に)
ロ長主和音→ハ長主和音→嬰ハ長主和音、
と「ナーポリ6」を重ね、→ヘ長主和音
→嬰ハ長主和音→ハ長主和音
と昇った階段を再び降り、
→ロ長主和音をクレッシェンド&スフォルツァンドで終わらせる、
というベタベタの古典音楽を供してるのである。
ところで、「魔法にかけられた13人の王女」という設定で、
ストラヴィーンスキーは、チャイコーフスキーの「白鳥の湖」の
「第13曲」を意識してたのだと私は感じる。
統計も闘鶏も行ってはいないが。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ストラヴィン式ー馬券術(... | トップ | 「リニアモーターカーに乗れ... »

コメントを投稿

瓢湖不充分白鳥の湖舞イアーリンク泡沫事件」カテゴリの最新記事