チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「『白鳥の湖』#2(ワルツ)前篇」

2006年06月08日 17時42分31秒 | 瓢湖不充分白鳥の湖舞イアーリンク泡沫事件
「テンポ・ディ・ヴァルス、3/4、3♯」。導入は、
「dis>e>d|>cis>h>a|>gis>fis>e|>d>cis>h|
>a>gis>fis|>e<gis<h|<e<gis<h|<e●●」
弦楽5部の、3オクターブにわたるユニゾンによるピッツィカートである。
調号が「3♯」だからといって、しょっぱなの2小節は
♪ラ>ソ>ファ|>ミ>レ>ド♪、というわけではない。
前曲「ニ長」を受けて、「ニ長」の顔を立て、
♪ミ>レ>ド|>シ>ラ>ソ|*と降りて、
次小節の1拍めの(>♯ファ)で、この曲の調である「イ長」にくるっと回り、
*>ニ長の♯ファ=イ長のシ>ラ>ソ|>ファ>ミ>レ|
>ド>シ>ラ|>ソ<シ<レ|<ソ<シ<レ|<ソ●●♪
となるのである。が、これは「リディア旋法」ではない。
♪ミ>レ>ド|>シ>ラ>ソ|>♯ファ>ミ>レ|>ド>シ>ラ
>ソ>♯ファ>ミ|>レ<♯ファ<ラ<|レ<♯ファ<ラ<|<レ●●♪
ではないことはあきらかであるし、終止音も支配音もへったくれもない。
この箇所にそのような屁理屈を持ち出すむきがあったとしたら、その思考回路は
「盲度」100パーセントとの境界ぎりぎりにちがいない。
低弦の(便宜のため、ここから音価を倍にして表記)、
♪ファーーー●●|>レーーー●●|<ミーーー●●|>ドーーー●●|
<レーーー●●|(アルコにかわる)>ラーーー<シー|<ドー●●●●♪
という「つなぎ」を経て、ワルツに入る。
vnプリーモが、
♪●●【ミーー>レ|<ファーーー>ミー】♪
という主動機による第一ワルツ前半部を弾きだす。ときに、このモティフは、
(2幕)#11中の「アッレーグロ・ヴィヴァーチェ」部、すなわち、
オデットの身の上話箇所のテーマとしても使われてるのである。
(アッラ・ブレーヴェ)♪【ミーーー・ーー>♯レー|<ファーーー・>ミーーー】♪
他方、これはまた、
師ニコライ・ルービンシテインへの挽歌「ピアノ・トリオ」の主主題、
♪【ミ|>レ<ファ>ミーーー】>レ>ド|>シーーー・>ラー●♪
にも用い符られてるのである。真っ当な作曲家にとって、
別々の作品に「同じモティフ」が「降臨」した場合、それぞれには
同様の背景があるはずである。いっぽう、また、あの
哀切の極みである「vn協」主章対主題も、
♪【ドー>シー<レー(ドシレ)>ドー】♪と、
【→2度下がって→3度上がり→2度下る】という【同型】である。
さて、第1ワルツの後半部は、
♪ラーーーーー|ー●<シーー>ソ|ソ●<シーー>ソ|ソ●<シーー>ソ|
ソ●<シーー>ソ|ソ●<ラーー<シ|>ド●<レーー<ミ|>シーーー>ドー♪
とマズールカ風味である。トライアングル、大太鼓、シンバル、という
「鳴り物入り」である。
第2ワルツは、平行調の嬰へ短、
♪『●●ミーーー|ミーーーミー』|ーーミーーー|>ラー<ドーー>シ|
>ラー<ミーーー|ミーーーミー|>ラー<ドーー>シ|>ラー●●●●♪
チャイコフスキー特有の「妙な律動」である。そして、ここでも、
トライアングルとシンバルがシンコペに効いてるのである。
第1ワルツがほぼそっくり戻る。そして、
→1♭。
と調号が替わり、イ長からヘ長に、という3度転調である。
この第3ワルツ(の前半)は、
♪『●●ミーーー|>レーーー>ドー』|●●<ファーー>ミ|>レーーー>ドー♪
と、第2ワルツの『』律動をそのまま引きずってるのである。また、旋律としては、
「5番交響曲」主章の「ツレワキ主題」である、
♪●ミー・>レー>ド|●<ファー・>ミー>レ♪
に受け継がれるものである。いっぽう、この第3ワルツの後半は、
♪ソーーーー|<♭ラーーーーー|<(N)ラーーーーー|>♭ラーーー>ソー♪
これは、「6番交響曲」の行進曲の大詰めである「ffff」の強烈な箇所、
♪♪ソーーソ・<♯ソーー♯ソ|<ラーーラ・>♯ソーー♯ソ│(>ソ)♪
へと渡されるのである。
第4ワルツは、実質変ロ長。vnプリーモのオッブリガートを従えて、
コルネットが独奏する。
♪ソーーーーー|ーー、<ラー>♯ファー|
<ソー、>ミーー<ファ|<ソー、<シー<ドー|
<レー、>♯ファーー<ソ|<レー、>♯ファーー<ソ|
<レー、>ミーー<ソ|<ドー、<♯レー<ミー♪
この律動は、そっくり同じではないまでも、
第1ワルツ後半部を引いてるのである。
第3ワルツが戻り、ついで、
新たに第5ワルツが「ニ短」で打ちだされる。
♪ラーーー>ミー|<ラーーー>ミー|
<ド>シ>ラ<シ>ラ>♯ソ|<ラーーー>ミー|
>レーーー<ファー|>レーーー<ファー|
>【【♯ソ<ラ<シ<ド<レ<ファ】】|>ミーー>ド>ラー♪
このモティフが、モーツァルトの「レクィエム」の「ディエス・イレ(怒りの日)」、
♪ラーーー>・ミーーー|<シー>ミー・●●●●♪
を引用してると考えれば、「導入曲」において(実質ニ短)で強奏される
「白鳥の歌」が何を意味してるのか、容易に想像がつくのである。
第6ワルツは、再度実質変ロ長で、
高中弦(+フルート2管)の純粋ユニゾンに始まる。
♪ミーーーーー|<ソ●ソーー>ファ|>ミーーーーー|<ソ●<ラー<シー|
<ドーーーーー|>シ●シーー<ド|>ラ●<レーーー|>ラ●<レーー<ファ|
>ラ●<レーーー|>ラ●<レーー<ファ|>ミー<ファー<ソー|
<<ファーーー>ミー|<ファー>ミーー<ソ|>ファー>ミー>レー|>ドー……♪
じんわりと胸をえぐるような感動を催す音楽である。
第5ワルツが戻る。そして、その
【【♯ソ<ラ<シ<ド<レ<ファ】】の音型の変型によるゼクヴェンツで、
ニ短→ト短→イ短→ロ短→ニ短→ホ短
のように目まぐるしく転々としながら壮大なコーダへとなだれこむのである。
(コーダ部につづく)

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