ジャズ・ボーカルの魅力の1つに、メロディーをフェイクする…という事が挙げられます。
よく聴きなれたメロディーを、シンガーによって、大胆に別のメロディーに変えていくわけです。
古くはサッチモ、ビリー・ホリディーといった1930年代のシンガーから始まり、そしてエラ、サラ、カーメン等は、原曲のメロディーが分からないくらいにメロディーを変えて歌います。
サラに至っては、一切メロディーも歌詞も歌わない「枯葉」の名演が残っています。素晴らしい演奏である事も付け加えておきます。
さて、ここまで、メロディーを崩す音楽ジャンルって、他にはあまりないかもしれません。
僕の分析なんですが、今でこそ「ジャズのスタンダード」と言われている名曲の数々の多くは、元々はジャズ・シンガーが歌うために…では無く、ミュージカルのために作曲された当時の大ポピュラーソングだった訳です。
だから、ジャズ・シンガーが歌わなくても、メロディーそのものは多くのリスナーは「もう知っている」訳です。
一方で、多くのジャンルの場合、その曲というのは、アーティストが歌うために作曲した、あるいは提供してもらった曲…な訳で、歌う本人がきちんとしたメロディーを歌わないと、誰もオリジナルのメロディーを歌わなくなる…訳です。
もちろん、その曲がヒットして、その本人が何年にも渡って歌い続けていくと、本人の中でフェイクが生まれてきます。
変な例ですが、1986年に大ヒットした瀬川瑛子さんの「命くれない」という曲があるのですが、先日テレビで瀬川さんの歌っていらっしゃる番組を拝見させて頂いたのですが、すでにオリジナルのメロディーは歌いこまれて、だいぶ変わっていました。
ですが、原曲のイメージ自体がそう大きく変わる訳でもなく、むしろ、いい感じに熟成されたのだと思いました。
さて、ジャズを歌う方の中には、
「原曲のメロディーを知らないまま、だれかがフェイクしたヴァージョンを適当に自分なりに真似する」
感じの方がたまにいらっしゃいます。
100歩譲って、完コピしているのならいいのですが、元が高レベルなため、そこまでは行けず、自分の都合のいいようなメロディー・フェイクで歌う訳です。
そのために、原曲のイメージは微塵も無くなり…というか、原曲のメロディーは知らないのですから当たり前か…、なんだか変な絶叫が鳴り響く…そんな状態になってしまう事があります。
歌う曲がミュージカルの大名曲だったとしても、時代と共に、いまでは世間であまり知ってる人がいない曲になっています。
一度、原曲のメロディーを、出来るだけ忠実に歌う…という事もやってみてもいいのでは?と強く感じますね。
あ、宣伝になってしまいますが、Music Salon PIANITYに併設の『PIANITY MUSIC SHOOL』のジャズ・ボーカル基礎課では、徹底的に原曲のメロディーをあなたに叩き込みます。
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